第282話―短い夏休み期間―

8月8日は遅めの夏休みの到来。

俺が知る夏休みとは違い戸惑っているだろうし、それにこれが最後の夏休みになる。

もちろんこれが生涯、最後という意味ではなく高校生として意味。

起床して部屋を出て洗面所を向かうと冬雅がスクール水着で歯磨きという

シュールな光景を目の当たりにする。


「えーと、おはよう冬雅」


「んんっ!?」


「先ずはくちすすいでから喋った方がいいよ」


そう指摘してコクコクっと頷いて実行をした。どうしてスクール水着なのか?など分かりきっている。

ドキッと骨抜きしようと立てた冬雅の作戦。


「お兄ちゃん、おはよう。

いつもなら起きないって安心していたんですけど・・・その、どうですか」


その場で一回転して披露をする冬雅に、変な目で見ていないと断言していいのに何故か背徳感を覚える。

たぶんこれはスクール水着だからだろう、未成年と付き合っている強く視認させられる。

それに豊満じゃないのが清楚感を醸し出していて女神にしか見えない。

いや、これだとただの生粋の貧乳

派みたいなコメントじゃないか。

そう言えば、ここ最近のアニメや本だと巨乳派と討論が減った気がする。


「・・・だ、黙ったまま見られると恥ずかしいのだけど」


顔を赤らめて上目遣いに鼓動が高鳴る。


「えっ、ああ!すまない。いつもよりも眩しいくて女神のようで

可愛いかったよ」


「・・・・・そ、そこまで!?あ、ありがとうお兄ちゃん。えへへ、最後に一つだけ、ドキッとしました?」


これ応えないといけないのか。

前のめりになり気になって仕方ないと表情が現れている。


「そりゃあ冬雅のような容姿端麗な女の子からであって、ドキッとしたよ」


「はい・・・その、わたしもドキッとしました。お兄ちゃん」


恥らいにより強く赤さが増していき幸せそうな満面な笑みを向ける。


「今日から夏休みですねぇ!

最後になるのは名残惜しさが始まって哀愁ようなものがありますけど、お兄ちゃんと終わるまで毎日といられるのは幸福の極みです」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど俺だとつまんなく――」


「ないです!お兄ちゃんがわたしを大事にするのは分かりますけど、本当に長くいたいんです。

嘘偽りなくまことな気持ちです」


まくし立てるレベルで発する言葉に俺は刹那的に絶句していた。琴線に触れてしまい時を忘却していたようだ。

冬雅、真奈、三好さん、茜の4人は高校生として最後の夏休み。そして比翼は俺とかくまうか保護している最後にもなる。


「冬雅、せっかくの夏休みだからどこかに行かないか?」


冬雅達の夏休みになった最初の日。雲が消失したような快晴日と夏休みらしい猛暑。

時刻は14時の昼過ぎ俺達は動くミニチュアを見ていた。


「ちょっと何を冬雅ばかり見てんのよ変態!気持ち悪いわよ」


テーブルに座ってドリンクを飲みながら鑑賞をしていた俺は理不尽な扱いだなと思いながらも謝る。

俺の右隣に冬雅達の学友である羽柴香音はしばかのん艶々つやつやのロングストレートの色は栗色、やや大きな目は鋭さと愛らしさがない混ぜな印象、容姿端麗なのだが毒舌の攻撃力が高すぎる。


「わ、わるい・・・それにしても壮大なミニチュアなのに不思議と落ち着ける空間なのが」


「そうね。何時間でもいられるし」


「お兄ちゃんわたしの事を…」


ここはスモールワールズTOKYOトウキョウ。世界最大級の屋内型ミニチュアテーマパーク。

東京都江東区の有明ありあけにあって知っている人は知っている名所である。

今テーブルに座るのは俺と冬雅、香音の三人だ。真奈、三好さん、比翼、弟の移山4人は別の場所でミニチュアを見て回っている。

どうして別行動かといえばコロナ対策のため全員で行動するわけにはいかない。もし俺が守るべき相手や比翼のような妹ような存在がいなかったら考えなかったと思う。感染しないよう完全的に徹底するのは難しい。ストレスや疲れを癒やす必要もある。何よりも冬雅達の思い出を作ってあげたい。


「本当は真奈様と同行したかったのに、どうしてアンタみたいな年下を落とすのだけ得意な変態と」


香音の鋭利なカミソリ近い言葉を発する。喋りすぎて喉を乾いたのか頬杖したままコーラーを飲む。

真奈を様つけるほど尊敬の念を抱いているため同行を出来ないストレスは大きいようだ。


「お兄ちゃんは別に落とすとか、そんなナンパみたいなことしていないよ」


「冬雅はそうだろうけど。きっと、どこかでナンパしているに違いないから」


「していないよ」


「だから知っているはずだから。ここまで女の子がいるのって何もしていないわけがない。

どうなのよ第0令和ハーレム!」


「すごい斬新な呼び方なんだけど!?見境なく恋人に近い相手を作っていくことなら答えは違うだよ。

無作為に行動しているというよりも気づいたらそうなっていたのが大きいかな」


曖昧模糊な内容だなぁと我ながら応えた拙さに苦笑する。

香音は猜疑心さいぎしんを遠慮なく向けてくる。どうやら疑っていることなのだろう。


「はぁ!?どうしてそうなるわけなのよ。詳しく、虚言しない事。

…も、もしかして隠したがるヤバイ事をしている?最低なんだけど」


想像力は高く、何もしていないのに侮蔑的な目。


「ひどすぎる。落ち着いて香音」


「ふん。ロリコンおっさんが真面目に応えてくれたら考えるわよ」


「ホテル」


ボソッと呟いた冬雅の言葉に肩を揺らす香音。ヒートアップした香音は顔を急に赤く染まっていき逸らしたと思ったらキッと冬雅を睨む。


「ホテルって。な、何がよ」


「お兄ちゃんをたぶらかそうとしてホテル街に誘導した人がいるのに」


「はぁ!?ま、まだこれを。根に持っているの」


しどろもどろ香音。冬雅は珍しく怒っていた。笑顔のまま、どうやら温厚で穏やかな冬雅が怒ると非常に怖い。

その後はくしくも三人でミニチュアを見てな回る。香音の反応でなんとなくだが、もしかして機嫌を悪くなったのは俺が冬雅と話をしてばかりで嫉妬を?いや自意識過剰だったか。ミニチュアの車が動いていてすごかった。


「お兄ちゃん、香音、見て!すごいよ、首里城しゅりじょうも再現されているよ」


「知っていたけど、この目で見ると琴線に触れるものがあるなぁ」


「私これ見るの初めてなんだけど。ミニチュアなのになんて精巧なの!」


十二分を楽しんだ俺達。

1時間半が経過して次は真奈達と交代する。真奈は右に寄って手袋を着用して手を繋ぐ。繋ぐ際に屈託のない笑顔で見上げるのは

ドキッとした。


「うわぁー!スゴイ。おにいちゃんエヴァがあるよ。初号機と弐号機も発進している!!」


比翼が騒ぎ始めるのも仕方ない。

まさかエヴァのミニチュアがあるとは思わなかったのだ。


「冬雅のお兄さん知っていました。屋上にはレイがいますよ」


「えっ?あっ、本当に立っている眼下に広がる光景を眺めているけど、どこか哀愁を漂っているなぁ」


三好さんはエヴァに出てくる美少女レイを知っていたのか。かなり昔の作品なのに、さすがエヴァって言ったところでしょうか。


「突然ですけどお兄さんってツンデレキャラのアスカ派ですか、それとも物静かなレイ派?」


「そうだな…10代の頃はアスカ派で今はレイ派かな」


「そうなんだ…頑張って物静かな雰囲気になります!」


「その決意はどこから来たの!?

いえ、やっぱり言わなくていい。理由はツッコミして思い出した」


真奈はエヴァを知らないはずかないと思うが比翼と同じく反応をすると思ったが思ったより冷静だった。

次はセーラームーンのミニチュアに。


「おにいちゃん家に居ましたよ」


「見つけた!ここにもいました」


比翼と三好さんはセーラームーンのキャラを発見すると一段と元気になる。まるで夏休みに虫を捕まえようとする少年がカブトムシを

見つけたようなリアクションだ。


「お兄さんってセーラームーン詳しかったりしたり?」


「わるいけど実は見ていないよ。でも小さい頃なら何度か見たことはあるよ」


「へぇーもし良かったらお兄さんセーラームーン今度、一緒に見ませんか?ワタシの家にブルーレイボックスありますので」


「まぁ気が向いたら」


たぶん最後まで見るのは難しいと思う。人生を歩もうとする比翼がいられる時間を大事にしたい。

真奈の大事な想いには応えれないと思う。けど振られても悔いはない楽しかったと笑えるようにさせたい。


「見ない内に冬雅お兄さんと真奈さん距離感が近いけど。どこまで進んだのかな?」


楽しそうに笑みを浮かべて問う三好さん。俺は変化はないと口に出そうとするのを適切じゃない。俺は「大きく変わっていないかな」っと見事にあやふや言葉で返す。

ミニチュアのビルから風が吹いたように感じた。

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