第270話―VチューバーでしたⅡ―
不死川さんと別れてから3日。
Vチューバーを活動している不死川さんの弾んだ美声には別格さには忘れない力を持つため探すことにした。
どんな人物であるか迷惑をかけないか少しの不安が行動させる。
しかし見つからない。
(似たような喋りする人もいるけど声が違う。どう調べる・・・そうか!登録者数が少ないと確か言っていたはず)
ヘッドホン越しからの声は淑女な占い師の声。違う、他の人も探すが見つからずお手上げ状態。
「お兄ちゃん少しいいですか?」
顔を上げると冬雅がペンタべ(ペンタブレットの略称。絵を描くため特化したタブレット)を身体を隠れるような抱えていた。
「ああ。今は退屈だから何時間でも聞いてあげるよ」
「いえ、そんな時間はないですよ。ただ読んでほしいんです」
「読んでほしい?・・・ああ、漫画を」
抱えていたのが冬雅が愛用だと思われるペンタブが無かったら浮かばなかった。スマホをテーブルに置く前に左上の時刻表示には17時19分、もう夕陽なのか。
「はい。イラストを書き続いてみたのですけどマンガにも挑戦してみようかなって。それで読んで感想をお願いしたいんです!」
「小説ばっかり読んでいるから参考になれるか自信はないけど。
そういう分野に明るい移山とか比翼に頼ったほうがいいけど。
それでも俺に?」
基本的に読むものといえば小説で
マンガをまったく読まず弟から
購入した気になったマンガを気分転換に読む程度だけ。頼むなら比翼や移山の二人が適任だろう。
「はい!お兄ちゃんしかいませんので。それにこのマンガは・・・とりあえず読んでみてください」
「そこまで言うなら。分かった」
ペンタブを受け取ると最初の1ページと思われるタイトルと主役キャラの二人が画面で渡される。
読みやすいように親切な
そして冬雅は後ろに回ると俺の肩を揉み始めた。肩と心の二重で癒やされながら無読を始める。
タイトル[となりに10歳も離れた恋]
・・・・・か、考え過ぎだと思うがこれはモデルが実在するような気がしてならない。主人公は黒髪ロングの天真爛漫な美少女と
髪が手入れされていない自由な獣ごとく髪型その一方では穏やかな表情をしていてギャップがある青年。
とりあえずページを開くとしよう。
(私はちょっと可愛くてモテモテの高校2年生。すごく気持ちのいい朝で目覚めた私の名前は
な、なかなか唯我独尊タイプの主人公だけど最初だから自分の自己紹介的な始まりはよくやる手法だ。テンプレと言われるのもあるが定番なそれは定番だからこそ
多くのクリエイターが使用するだろう。もちろん上手く扱えるかは技術的なことも必要。
セリフはテンプレではないだろう、分からないけど。
(そんな私は通学路を歩けば2度見は必ずや振り返らせ放課後には
告白されたり古風なラブレターまであるけど答えは決まって断る。
モテモテ美少女四天王に数えられるが一考に値しない肩書きだ。
そんな私は恋が何がいいのだろうと不思議で仕方なかった。そんな塾の帰り道)
「きゃあ!?」
「っと」
後ろから転倒しそうになるヒロインは目を閉じ背中からの痛みを到来するのを待つ。
(あれ?痛くない。それになんだか浮いているような)
ゆっくりと目を開くと目の前には
タイトルの表紙に出たイケメンの姿が。ここのシーンはすごく力を入れていてキラキラと装飾されていてイケメンの方だけ表情や髪型
がかなり力を入れている。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
「それはよかった。それじゃあ」
曲がり角をぶつかたのを謝罪し立ち去ろうとするイケメン。
「ま、待ってあなたの名前は」
「ふっ、俺の名か。忘れたなぁ。そんな昔のことは」
いやここ現代!現代社会でそんなセリフを言う人が世界でいるのですかってツッコミそうになるが堪える。
どうしたら自分の名前を忘れるのだろうかこの人は疑念を拭えずまま読み続ける。それから夜の住宅街で度々と会うようになり公園の
シーンではベンチに肩が触れる距離に座る二人。
「まったく俺は小説で忙しいんだが。なんだ
「す、すみません。あのわたしと明日デートしたいなぁーって」
「この
だが少しだけ夏雅の気持ちは揺れ動くだけはあった」
「あ、ありがとう。お兄ちゃん!」
お兄ちゃんと呼ばれているが、そのあたりのシーンは掘り起こさなくていいのかな。それに山脇西洋ってこれは疑いなき俺の名前を東から西に変えただけじゃないかな。そして山脇西洋の家の玄関前。
「大好きです!わたしと付き合ってくれませんか」
「断る!」
迷うことなく断った主人公。ちなみに断る山脇西洋はどこに力を入れているのかとツッコミたくなるほど文字が透けて見える工夫や
きらびやかにしている。それはそうと冷たく断るイケメンに俺は
言わざるえない。
「冬雅このシーンだけど、俺の中では冬雅の告白には嬉しくて
後悔させるだけだから断ったのだけど」
雪のような美少女から告白されて嬉しくないわけがない。少なくとも当たり前のように断るマンガのイケメンのような振る舞えないのは断言する。
「ち、違いますよお兄ちゃん。
これは悪魔でキャラクターでして登場人物はフィクションですよ!なので、わたしが体験したのを
少し変えたぐらいで実質フィクションだよ」
「そ、そうか」
なるほど少し事実を捻じ曲げた内容にしているのか。肩を揉んでくれているため顔を見れないが、あの慌てふためく声と肩を揉む力の激しい変化から推測して真っ赤になっているかもしれない。
続きが気になったので再開。
「付き合ってくれないんですか?」
「ああ。そうだ」
「ううっ、あぁ」
(これが失恋・・・苦しい。報われない恋には、もがくほど苦しんでいき痛みが広がっていく)
「・・・ハァー。上がっていけ。傷心の女の子を見ていられないからなぁ」
「えっ?」
「上がるのか、上がらないのか」
「あ、上がります。お兄ちゃん」
うわぁー改めて見ると危ない人に見えてくるなぁイケメンさんは。
こんな乱暴に言っていないけど告白を受け入れなかった俺は泣き叫ぶ彼女を落ち着かせようと思考を巡らして出たのが家に上がって
もらうこと。若干の真実を変えてはいるが読み続けていきラストのシーン。クリスマスでテーブルを挟んで座る二人。
「どうやら、ここまで告白を続けられたら仕方ない。俺の彼女に
なってくれないか?」
「ふえぇ。それって私がお兄ちゃんの彼女になれることですか」
「半分はな。その答えを見つけるまで俺に協力しろ夏雅」
「はい、お兄ちゃん」
そして二人は熱いキスをして物語は終わるのだった。めでたし、めでたしと拍手喝采したいところだが既視感があふれる話で反論がしたくて仕方ない内容だった。
「冬雅、読み終わったよ」
「えへへ、どうでしたかお兄ちゃん」
「これ俺と冬雅だよね」
「・・・・・考えすぎです。わたし勉強をしないとだから、それじゃあお兄ちゃん」
マッサージを中断し読み終えたペンタブをテーブルに置いたのを
回収すると脱兎のごとく速度で居室を出ていった。そして俺はしっかりと見た。冬雅が真っ赤に染まる顔を。
「おにいちゃんまた冬雅おねえちゃんにいやらしい事をしていたの?」
隣に座ってきた比翼が批判的な眼差しを向けられ僅かにたじろぐ。
いや、その反応だと肯定的な反応じゃないかと引き締めた顔で詳細に説明をする。
「ふーん。いつもの冬雅おねえちゃん告白自爆ですか」
「告白自爆か、言い得て妙だねそれは。さて、そろそろ夕食を作るか」
「手伝う!」
屈託ない笑みでそう言った比翼は俺の腕に抱きついてきた。調理するときは気遣いで離れて集中出来るようにしてくれる。慣れた動きで手伝ってくれたおかげで予想よりも早く出来ると冬雅を呼びにいく比翼。
冬雅の頬は薄く赤い色で染まってチラッと
「おいおい、兄者。冬雅お嬢が恥ずかしそうにしているがキスとかしたのか?」
「「っー!?」」
移山の発言に食べ物が気道に進み気管に入り咳き込む俺と冬雅。
「いつかすると思ったけど、
冬雅おねえちゃん初めてはどうしでした?」
「ま、待ってよ。まだしていないよ」
「ふーんまだ?」
「比翼ちょっとお姉ちゃんをからかわないでよ」
腕を胸の前で上下させて不平不満を口にする。が怒っていないのと
比翼がそれ言うんだと日頃の行いを考えて嘆息している。
「兄者なら冬雅や真奈と比翼の中から誰を選んでも似合うはずだって思うけど。この勢いだと合法的な一夫多妻をとりかねない勢いがあるからなぁ」
「いや、一夫多妻なんかあるかぁぁ!」
そう悲鳴に近い叫びに突っ込んだが、冬雅と比翼は小さく何度も頷いている。いやいや、それは
嫌じゃないかな女の子としては。
向けられる愛情が平等に向けられないわけで、いやそこまで考える必要はないだろ俺。
「んなわけ無いよな」
「けど、そうなれば誰も傷つかない恋愛成就するわけで真剣に検討する価値はありますよお兄ちゃん!」
「問題はどうやってそれが出来るかだな」
冗談を言った移山は笑って言うが冬雅と比翼はそうでもなく真面目に考慮している。俺は一致も参加もしていないのだけど話が進展していきそうな気がしてならない。
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