思い出は多く彼女達と距離は変わっていく

第233話―おうちでのネガティブ冬雅―

別の時間、異なる世界、そして別世界の住人であるもう一人の峰島冬雅みねしまふゆかがお兄ちゃんと出会えていなかったら

今頃はどうなっていたのか、目覚める前に見た夢。


「・・・・・・・」


呆然と何かに惹きつけられるようにパラレルワールドにいた別の行動をしたら例えば

わたしが・・・もし人生で初めての告白をせず好きな人から懐かれている、かわいいJKが具合で挨拶し相談を真剣に考えるだけの関係のまま続いていたら、わたしとお兄ちゃんの辿たどる未来は、

ねずみが引くように年月だけが経って、お兄ちゃんの隣には知らない年下かわいい女の子がいる。


「・・・・・それは、イヤだなぁ」


屋上にぼんやりと景色が薄れていく・・・まさか考えただけで涙を流すなんて。

そんな可能性の一つは今のわたしには空想だから。


(わたしが告白しないなんてあるわけがない。どんな妨害があっても掻い潜って懸想けそうした、わたしの想いは伝える。

お兄ちゃんが、恋人や結婚していても・・・ドロドロになりそうだからそれは、やめておこう)


わたしが見た悪辣な夢はもう一つの世界だと入って、どう知ったか経緯や細かい事なく情報として頭の中にあった。そんな悪い夢を見て鬱々となっていたけど、

わたしが、お兄ちゃんに挨拶や相談だけの関係で満足しない。

わたし自身だから、よく知っているし断言ができる。

さて、自分の気分を害する夢を否定したところで起きるとしよう。

お兄ちゃんに、最高の状態でかわいい姿を見せるため洗面台に向かう。


(どうせならイチャイチャする夢が見たかった。・・・やっぱり見るなら、お兄ちゃんに頭をなでなでとか壁ドンとかも)


お兄ちゃんの事で妄想をして洗面台に立つ、わたしの顔はとんでもなく緩んでいたのでした。

お兄ちゃんか好きな犬の寝間着でわたしは化粧など済まベランダに

足を踏み入れる。この季節なのか

朝日が昇るのが早いです、お兄ちゃんはまだ来ていない様子。

待っている間に勉強で無聊ぶりょうかこつ。

お兄ちゃんの部屋から窓を開ける音がして顔を上げたら案の定、お兄ちゃんが優しそうな顔でベランダに入る。

手が触れる距離とジャンプすればお兄ちゃんのベランダに飛び移る事は出来る。そんな誘惑を我慢。


「大好きだよ、おはようございます。お兄ちゃん!」


「おはよう冬雅。・・・いや、そんな不満な顔をしても流石さすがにその単語を返すわけにはいかないから」


「ふぇ?何の事ですか、どんな単語か教えてください。出来たら

カッコよく熱い気持ちで!」


「はは、いつかは」


「いつかは・・・期待しておきます」


わたしとお兄ちゃんの逢瀬おうせは早朝のベランダで挨拶して短い談笑をすることです。

ベランダで逢瀬を重ねるにつれ新しいパターンが必要と感じて、外国語やアニメのキャラで挨拶しました。お兄ちゃんは、わたしの挨拶を合わせて返すのです。

例えばやっはろー挨拶すればやっはろと返す。ですので「大好きです、おはようございます」挨拶を

したのだけど大事な所を端折ったのです。ですけど、最後のいつかはセリフ威力は絶大でした。


「冬雅、寂しいと思ってリゼロの続きを持ってきたよ」


「あっ!ありがとう、お兄ちゃん。えっへへ続きが見たかったのによく分かりましたねぇ」


「ほとんど一緒に暮らしているからそれぐらいは分かる。まだ家に来られないか?」


お兄ちゃんの本棚にある本をわたしは大事に受け取ると、気のせいか寂しそうな表情で訊いてきたのでした。えっ?家に来られないか・・・・・。


「冬雅?石化したように止まっているけど」


「あっ!その・・・なんでもないです」


お兄ちゃんが、まさかわたしに来てほしいと思ってくれたことに舞い上がるほど嬉しさで固まってしまいました。


「そうか。特に比翼ひよが寂しそうだったから会ってくれたら、きっと喜んでくれるよ」


「そ、そうですよねぇ。あはは、少し考えてみますねぇ」


うわあぁーー!?お兄ちゃんから求められていたなんて勘違いして恥ずかしいよ。すっかり、お兄ちゃんの中では比翼は妹に固定化

したように思えるのです。


「それじゃあ、また」


「うん・・・最後に、お兄ちゃん頭をなでなでしてほしいです」


「えっ!?」


放置したままの黒髪が風に揺れて

黒い瞳も同じく泳いでいました。

驚いた大好きな人は頬を赤くなっていて、それが向けられているのが、わたしなのが幸せで、かわいいです。


「・・・お兄ちゃんダメ?」


「・・・・・分かった。少しだけなら」


「うん!」(ドキドキするよ)


去年のクリスマスに告白されてから、お兄ちゃんがわたしを好き

な感情を抱いていると知ってから

ドキマギさせられる事が増えた。

お兄ちゃんが、頭をなでる行為をこんなに恥ずかしくするなんて前にはなかったから。

わたしの頭の上を優しく大事にされているのを身に沁みていきます、お兄ちゃんの想いが。


「お兄ちゃん、その・・・わたし、どんな事があっても愛しているって宣言するよ!」


「そうか、ありがとう冬雅」


羞恥心になんとか頑張って勝った、わたしの告白をお兄ちゃんは

苦笑してお礼をしました。

羞恥心が爆発したように、わたしは頬を両手で覆いたくなる気持ちでうつむくのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る