第214話―静謐なき春季2―

昨日は泊まっていた香音は夕方まで冬雅と真剣に勉強を励む姿と比翼が理解しにくい箇所を訪ねても

懇親丁寧に教えていた。

ギャルのように見えても進学校にいるだけはあって勉強には強いようだ。


けど、ゲームでは比翼にはボロ負けして躍起になっていた。比翼、思ったよりも香音に懐いていた。

夕刻になると俺は危なくなる前に帰るべきと促し渋々と帰っていた。

比翼が珍しく泊まっていけばいいよ!と我儘わがままは珍しくて、そうするべきかと一度は思ったが香音と家族に迷惑になるので俺は毅然とした態度で反論するしかなかった。

そして翌日になり朝のリビングで。


「ひ、比翼!?何をして・・・」


「あっ、おにいちゃん起きたんだ!

おはよう、そして待っていて。

すぐに朝食を出来るから」


台所に冬雅ではなく比翼が立っていた。俺が驚いたのは遅く起きる比翼が目覚めたではなく、格好の方であった。

まぁ正直、それも少しあるが。


「そうなのか・・・違くって、

何か着たほうがいいと思うけど!?」


「おにいちゃん何を言っているのですか?エプロンをしていますよ。

他に着る所なんてないのに」


「エプロンだけは、だけどね!」


そう今の比翼はエプロンのみ状態で・・・俗に言う裸エプロンである。


「えへへ、どう?おにいちゃん

似合っている」


台所から出てカウンターキッチンの椅子まで雛鳥ひなどりごとく走り泊まると裾を軽く上げて、ただでさえ短い裾がめくり上げてなまめかしい太腿ふとももがよく見えて――


「駄目えぇぇーー!!それ以上はコンプライアンス的にアウトだから。

自分から見せにいくスタイルは背徳感や萎えるというのか・・・

とにかく見せるのは絶対に駄目だ!」


いきなりの事態に俺は混乱の極みに至り自分でもよく分からない発言し自粛を促した。

しかし彼女は、別種のニコッと笑みを浮かべると反論するかのように危うい所まで上げる。

このまま行けばパンツが見えてしまう。


「さ、さすがに、はしたない思うけど・・・」


「・・・こんな恥ずかしい事をしなければいなけなくなったのは、おにいちゃんなんだけど」


「えっ?すまない、よく聞こえな方がもう一度いいか」


「何も言っていませーん。

おにいちゃん感想どう?」


「今すぐに止めてもらいたいけど!?」


視線を逸らして何も映っていないテレビの画面を向く。何も映っていない画面を見ていると、不思議と蕭条しょうじょうたる景色になってしまうものだ。

俺は朝から何をしているのだろうと自問自答。


「えっへへ、おにいちゃん大丈夫ですよ。実はねぇ、中にはスクール水着を着ているので見ても

大丈夫な仕様ですよ」


沈黙に耐えなくなったのか比翼は

水着していると言う。個人的には

大丈夫とは思えないが、見て大丈夫だろうと判断して俺は視線を戻す。


「朝からすごい悪戯いたずらをするよね比翼・・・出来れば、もうしないでほしいよ」


こういう悪戯は、同級生とか年齢が近い相手にしてほしい。大人の俺には常識的な悪戯にしてもらいたい。


「・・・違うよ。イタズラじゃないよ」


「比翼?」


笑顔を弾いていたのが今や肩をすぼめるとうつむく。

小さく深呼吸して落ち着いたのか見上げる比翼の顔色が変わっていた。

悲壮感が溢れた表情で、手を胸の前に組んで悲壮感が溢れていた。


「おにいちゃんは、冬雅おねえちゃんに大きく反応とか大事そうにすると心が痛くて・・・このままじゃいけないかな思って」


比翼は、苦しそうに藻掻もがくように胸を抑える。苦しみに抗うように、言の葉にして伝える。

そんな比翼を見て俺は手を伸ばして比翼の頭の上に優しくでる。


「比翼、なんとなく言いたいことは分かるよ。

隣にいたから分かってしまったんだな・・・恐らく間違っていないと思う」


冬雅を特別視しているのが比翼は心のどこかで気付いていたのだろう。

ずっと好意や想いが強すぎる冬雅に・・・いや、好きになった要素を述べようとすれば枚挙まいきょにいとまがない。


「やっぱりなんだ・・・よし!

おにいちゃん」


比翼は決意をする。俺は優しげな笑みを慣れないながらも作り

発するまで待つ。


「冬雅が大好きなんだから、おにいちゃんは立派なロリコンで

美少女である、わたしが有利!」


どやっ!と勝利宣言に近い勝利者のある力強い笑み。胸を張る比翼の決意を聞いた俺は、怪訝な顔をしたのだろう。

次に驚愕したのだろう。

考察できるまで回復した俺は――


「立派なロリコンじゃないんだけど」


弱々しい声で俺は呟いた。

比翼は希望に満ちた表情で敗北はないんだと輝いていた。

・・・うーん、暗くなるのは一瞬だったなぁ。


「えへへ、だっておにいちゃん。ロリコンじゃない言っておきながらラノベやアニメの好きな

キャラクターは、わたしと遠くない年齢ばかりじゃないですか」


屈託のない笑顔で比翼は言う。

うーん、そろそろ裸エプロンなんとかしてくれないかな。


「それは・・・」


た、確かに。リゼロなら、エミリアやゲームならネプテューヌのネプギア。ソシャゲのプリコネ(プリンセスコネクト)では、コッコロやアカリやニノンなど。

しかし、これは証拠にならない。


「い、いや違うね。二次元と三次元とは懸絶けんぜつという悲しい差異がある。

キラキラした瞳でお願いとか、

大好きなんて平気でするなんているわけがないのと、そこまで

ずば抜けた容姿がいるわけがないからなぁ」


現実だと好きになってくれても

すぐに冷めるだろうし。恋愛期限というのも研究で発表されているし。

あと、長い言葉になってしまった。


「おにいちゃんの価値観が変なのは置いといて。そんなのできるよ。

おにいちゃん!だ、だだ、大好きーーーー!!・・・え、えーと・・・・・

わ、わたしを抱いてほ、・・・・・・・・・・ハグしてほしい!」


白い頬を真っ赤になってお願いをしてきた。いつもなら大好きセリフなんて平気で言っていたのが、

今日だけは羞恥心で、あたふた。

その反応が、気軽そうに返事しようとするのが失敗して強い感情が羞恥心なのが雄弁ゆうべんだ。

頑張ったのは伝わるが唐突である。


「えーと、好意は嬉しいかったよ。けど、どうして急にそんなことを?」


すると好意的な瞳が不満そうに変わってしまった。えっ?


「むぅ、おにいちゃんが言ったんだよ!

キラキラした瞳で、大好きなんて・・・恥ずかしいセリフを!!」


「ああ!なるほど、だから言ったわけなのか。

けど、いつも言っていると思うのは俺の気のせい?」


「おにいちゃんの鬼畜!」


どこで、そんな言葉を覚えたのか・・・好意的で羞恥心な比翼。

すると、バタッとドアノブが開く音がして俺と比翼はそちらに反射的に向いた。きらびやかな神秘的な黒きロングヘアーと顔立ち。

冬雅が左手に持っていたタブレットを落とす。壊れないといいなあ。


「冬雅おねえちゃん、おはよう」


「・・・えっ、あ!うん。おはよう・・・その裸エプロンしているのは、どうして比翼さん?」


さん付けになっている。呆気に取られていた冬雅は比翼の言葉に

フリーズが溶き混乱したまま常識で比翼に言うか躊躇したが結局は戦々恐々せんせんきょうきょうと尋ねる。


「もちろん。おにいちゃんドキドキさせるためだよ」


比翼はそんな恥ずかしい言葉を眩しい笑みで返事する。

冬雅は、理解するまで再びの呆気に取られていた。そんな反応を

するけど、冬雅の常套じょうとう手段ですが。

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