第198話―柘榴坂公立高校―

臨時休校だったわたしの学校は再開することになりました。

久しぶりのあいふ弁当をカバンに入れて玄関で靴を履きます。


「お兄ちゃん行ってきます」


「ああ、行ってらっしゃい」


「冬雅おねえちゃん遅く帰って来てねぇ」


比翼が、嬉しそうに小さな手を振っています。お兄ちゃんと二人きりで舞い上がる気持ちは理解できるけど、遅くをオブラートにして

ほしいなぁ。外に出る前に、わたしは玉砕されること無いと

思い深呼吸。


「お兄ちゃん。少し離れることになるけど・・・離れても想っています。愛しています!」


迸る気持ちのまま口に出して、勢いよく開けて外に出ます。

空は群青色ぐんじょういろ、雲は少ない快晴。


「ハァー」


毎日と告白するのは楽じゃない。

決めたからにはやり遂げるのが、

わたしですけど実行するのは

恐ろしく勇気がいること。


「けど、成果はある。あった!

お兄ちゃんが愛しているって寝言ありました!」


色々と妄想と鼓舞してきた相思相愛。それが、実際に妄想ではなくなりつつある・・・い、いえ早計ですね。起きているお兄ちゃんの口から言ってもらえないと

勘違いですから!そう。だから、

わたしを見て少年みたいに慌てぶりとか赤くなることも、気のせい。見惚れているのも勘違い!


(だ、ダメ。気をつけないと、お兄ちゃんにデレデレして気絶してしまう)


そこまでは、なることないけど羞恥心でおかしくなりそう。別のことを考えよう。春休みは近いから、学校は時々だけ再開しようと

していると推測している。

学校に再開したほうが外に出て遊ぶよりも安全性がある見方もある。まぁ、数多い意見を尊重し吟味した上で学校も迷った末の判断。


(休みの間なかなか外に出られなかったなぁ。お兄ちゃんの家に泊まる口実になったけど)


不謹慎この上ない考えを出来るのも、お兄ちゃんのように危険視して危機感がある人のお陰で、

日本はさほど感染は広まっていない。ヨーロッパなど危機感を覚える人が少なく感染が広がっている。やっぱり思うのは、早く終わってお兄ちゃんと花見したい!


「おはよう冬雅」


「うん。おはよう真奈・・・あれ?茜と一緒じゃないの」


考え事していると、親友で同士という関係でしょうか。真奈が挨拶して来ました。いつも登校している茜の姿は無かった。


「うん。遅れるから先に行ってくれって言われた。

それよりも、冬雅ワタシ気になるんだけど、お兄さんのお弁当を持っているの?」


「うん・・・そういうことだね。

次に真奈の分も頼むねぇ」


「・・・・・う、うん。お願い」


いつものツンデレ属性を発揮すると思ったら素直に頷いた。

この表情すごく寂しかっただろう。いつも手を繋いでいるから特に・・・・・わたし今月まだ、していないんだけどなぁ。

柘榴坂ザクロさか高校の同じ制服に包む人達が近づくにつれ

目立つようになっていく。


「真奈様おはようございます!」


はい、真奈を崇拝している羽柴さんが来ました。やはりマスク装備。頭を下げて挨拶を終えると、

わたしには猛禽類のような鋭い眼光。怖いので目を逸らすのを行使します。


「おはよう香音、元気にしていた!懐かしい、勉強どう?」


「はい!元気にしていました。

真奈様には及ばないですが勉強を頑張っています」


香音すごい笑顔。大好きな真奈に

心配や質問が嬉しかったのだろう。


(けど、いつものような鋭さを感じないようなぁ・・・それに久しぶりの真奈に喜びも?)


気のせい。わたしもそう結論して

二人と教室に談笑しながら入る。


「おはよう姫君。前よりも可憐になっていて驚いたよ。

ぜひデートしたいなぁ」


わたし達3人を同時にナンパする、残念イケメンな熊谷一弥世くまがいいちやせい

ミディアムヘアーで爽やかな笑みでだった。どうしよう、もう呆れを通り越して苦笑いになる。


「何やっているのよ、アンタァァーー!!」


「ギィッアアァァーー!!?」


蒼き流星のVーMAXブイマックス攻撃にナンパを生き甲斐のようなイケメンは壁にドン!と

衝突する。だ、大丈夫かな?


「まったく・・・ごめんねぇ。

ウザかったよねコイツの代わりに謝るわ」


「い、いえ・・・」


確か熊谷くんを監視をする小さな美少女、柿崎影姫かきざきかげひめさん。わたしより背が低く145ほど背丈、胸は・・・わたしより大きい。敗北感で悲しさを表情には出さないよう、なんとか返事をわたしはします。


「いえ、許すわけにはいかない」


「「えっ?」」


わたしと柿崎さんの声がハモり、俯きかげんの羽柴さんに振り向く。顔を上げると鬼の形相でした。


「「ひゃあ!?」」


2度、連続の悲鳴をハモりました。幽鬼にフラフラと動作で熊谷くんに近づく。


「ひいぃ!?ごめんなさい。

ただの挨拶のつもりだったんだ!

僕を許してくれないか」


「ダメですね。あなたには何度も見逃してきましたが、軽い気持ちで真奈様に声を掛けることは

万死に値する」


え、えぇーとリアルで万死に値する言う人わたし初めてです。

ひぃーと情けない声を出すイケメンさん。これは、仕方ない誰でも恐ろしい顔を向けられたら、そうなります。わたしは、止めようと

一歩を前に出そうと――


「ま、待って!監督不届きのわたしが悪いの。だから・・・わたしが悪いから罰なら、わたしにして!」


熊谷くんの前に立ち腕を広げて

身代わりになると。涙目で目をつぶる彼女の肩を手を置き横に移動させる熊谷くん。


「だ、駄目だ!軽はずみにやった僕が悪いのだから影姫には何もしないでほしい」


「何を言っているの!わたしのは悪い」


「違う!僕だ」


「はーい、そこまで」


掌を叩き仲裁するのは真奈。

三人の視線は仲裁者に注目を向ける。


「香音は、ただ注意しようとしただけだから二人の想像するような事はないよ。だから、安心して」


「えっ、うん。分かりました・・・えーとコイツはわたしがきつく叱るので許してくれますか?」


「真奈様の仰る通り酷いことなんて元々するつもりなんてなかった。・・・次はしっかり監督してよ彼女さん」


「うん・・・えっ?ち、ちち、違うから!?わたしとコイツはそんな関係じゃないから」


平和的に解決した真奈。流石は真奈、お兄ちゃんの前ではツンデレになってしまうのがたまに瑕だけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る