第191話―挑むホワイトデー4―
冬雅と比翼は2階に上がり勉強すると俺に伝えた。チーズケーキを作るから気を遣ってくれたのは言わずもがな理解している。
「さて、やるか」
袖を巻いてレシピ本を開いて手順に従い作り始める。完成は一時間ほどだった。予定よりも少し早く完成した。
匂いは香ばしく漂って味見はしていないが美味しくなっているのは自信はあるのだが・・・
「見た目は良し、問題は味の方だが」
俺は試食用として共に焼いたチーズケーキを口に放り込む。肝心の味は甘さが少し足りていない気がするが一応は美味しく出来上がっている。お店レベルに出来るとは思っていないが、これでいいのか、作り直してもっと味を拘るか。
(いや、出来るのに一時間ほど掛かるうえに
やむを得ず俺は、手作り感があるチーズケーキ箱に入れてラッピングしようとするが・・・上手く出来ずにいた。改めて冬雅達はよくラッピング出来るなぁと思いスマホでやり方や動画を見るが思ったよりも難しく悪戦苦闘しながらも、なんとか出来た
「これで本当に終わりと・・・よし!」
あとは渡すのみ。
有言実行と無限実行、俺は2階に上がり勉強中である冬雅と比翼がいる移山の部屋に入る。ラブコメパターンになるような事態にならないようノックを忘れずに。
最近はそんな流れが続いているよう感じているので万が一。
「どうぞ」と冬雅は中に入って大丈夫とあったので中に入る。
「おにいちゃん!」
ドアノブを開けてすぐ抱きついて来た比翼のタックルに後ろから倒れそうになるが、なんとか堪えてみせた。
「待たせた。バレンタインデーの返しホワイトデーのプレゼント出来たよ」
渡す相手が暫定的な同居している二人など世界で探しても俺ぐらいだろう。二人のプレゼントを左の掌に載せている。サイズは一緒
で上の箱を取り比翼に渡そうと思ったけど抱きついていて、どう渡せばいいのか俺は手を止める。
すると比翼が離れたらと思ったらプレゼントを掴む。
「えっ?」
「おにいちゃん・・・この箱わたしのために作ってくれたんだよね」
箱を大事そうに抱いて比翼は微笑を浮かんだ上目遣いで問う。
「えーと、そうなるなぁ。バレンタインデー貰ったから恩返しに」
そんなストレートに言えない俺は誤魔化しが通用しないだろうと思って咄嗟に浮かんだ言葉をする。
「真奈おねえちゃんみたいだよ。
・・・開けていいかな?」
「ああ」
比翼はおそるおそると箱を開けた。
「た、食べてもいいかな?」
「ああ、どうぞ」
比翼は手作り感があるチーズケーキを口に運ぶ。比翼が食べたいといっていたチーズケーキだ。たぶん好物であるイメージの味とは程遠いのは解っているからこそ、緊張感が走る。見たところ表情には大きな変化はなく味を堪能してから飲み込んだ。
「おにいちゃん美味しかったよ」
「美味しかったのか。よかった、手作り感があって不安だったけど、美味しくなっていたなら、よかった」
「卑下しすぎだよ。だって、おにいちゃんが作った手作り感の独特な味が未完成だからこそ美味しいんです。あとはねぇ、あ、愛が込めていたから・・・えっへへへ。
これ相思相愛だよね。おにいちゃん」
比翼は、どうやら自分の言葉を妄想していた事も口にして悶えていた。破顔した比翼はデレデレしていて、なんだか色濃く冬雅みたいな反応だった。
(いや、比翼これには慣れていないからキャラ崩壊みたいな反応をしたかも)
比翼には妹のように接していたので比翼も理解した上で大好きを
使っていたのだろう。今は女の子として扱いに戸惑いや高揚感なのだと推測して勝手に納得した。
「ひ、比翼。スゴイ事になったねぇ、お兄ちゃん」
比翼に邪魔しないよう配慮した冬雅は困惑の表情で比翼の頭を撫でる。いや、冬雅が日頃から悶絶しているんだよと喉から出しそうになるツッコミを押し留める。出したところで心外とか信じてくれないだろう。
「冬雅、渡したいものがあるんだ」
びくっ!と肩を揺らして緊張感を高めているのが顕著の現れ。
「は、はひゃい!?お・・おお、お兄ちゃん」
祈るように手を組んで、頬を赤く染まり上がって見上げるその瞳に潤っていて強い期待と好意を向けている。その、瞳に向けられる
とチーズケーキを渡すに値するのかと俺は自問自答した。
全力でやったのか!最高の出来なのか!そう問い掛けて俺は――
「も、もう少し待ってほしい。
冬雅の分はもう少しで出来上がるから」
27歳、JK相手にヘタレになる。我ながら情けない。
「そ、そうなんですか・・・待っていますね」
どよーん。と漫画なら現れそうなほど酷く落ち込む冬雅。目には生気がなく先程の乙女のようなリアクションはなかった。ヘタれずに渡していればよかったと思った。
たとえ
「おにいちゃん!バカですか!!冬雅おねえちゃん相手に顔を赤くなって・・・女子高生クセに冷笑していたおにいちゃんはどこに行ったんですか」
比翼が、物凄く不愉快そうな表情で蹴り、蹴って、蹴る。
あのー、多いすぎではなきでしょうか。確かに27歳なのに女子高校生にドキマギしている事が危ない。いや、けど多くの人はもっと危険な目で見ているわけで、それと比較すると俺は平和的だと主張しよう。その前にこれだけは訂正を。
「女子高生クセになんて冷笑なんて一度だってしていないよ比翼」
「あっ、わたし!少しそんな闇落ちしたお兄ちゃんも見てみたいなぁ」
「冬雅なんていう願望あるんだよ・・・ハァー」
「あ、あれ?お兄ちゃんに呆れてしまった?」
「冬雅おねえちゃんクレイジーすぎる件」
「ひ、比翼までも!?」
冬雅の発言に
「さっきのは言葉のミスというのか・・・手作りチーズケーキを俺なりに作ったんだ。受け取ってくれないか?」
「はい!お兄ちゃん」
冬雅はホワイトデーのプレゼントを受け取った。嬉しそうに頬を緩めていて頬は真っ赤に染まっていた。
「わたしの時とは
「そ、それは・・・えーと」
隣で比翼がそう囁かれて俺はせいだいに困惑する。27歳ここでもJCの一言で、しどろもどろになる。
「まぁ、いいですけど。わたしが勝つか最終的にハーレムにすれば決着です!」
「・・・比翼それは声が大きく出すものじゃないのでは」
俺はそう指摘に比翼は、我関せず。もしかしたら、
「お、お兄ちゃん!チーズケーキを食べますね」
「どうぞ冬雅」
冬雅は、箱をスムーズに丁寧に解き開ける。中央に鎮座するチーズケーキを掴み口に運び、リスを彷彿するような食べ方をする。
味を堪能しているのか、何度も噛んで、飲み込む。
「ド、ドキドキするんですね。
スイーツでスイーツですね」
「・・・・・・・・・はい?」
冬雅の語彙レベルは高いはずだけど、なんだかおかしくなっている。悶絶しているわけではないのに?
「えーと、伝わりにくて、すみません。好きな人からホワイトデーを貰うあたりから、食べるまでが全部が甘いです」
「そ、そうか・・・」
甘酸っぱい空間が漂いはじめていく。俺は気の利いた他にも言いた言葉をしたかったが言い淀む。
油断すると、すぐにこの空間になるなぁ。
「はい、渡したから終わりだね。おにいちゃん!あーん」
食べかけのチーズケーキを渡され口に入れろと行動に移した。なんだか疲れてきた。比翼に散々と振り回され精神的な疲労は蓄積していく。
「それじゃあ俺は真奈達に渡しに行ってくるよ」
部屋を出ようとドアを閉める直前。
「お兄ちゃんチーズケーキ美味しかったよ!」
食べ終えていた冬雅は、満面な笑みを浮かべて手を振った。
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