第185話―桃の節句イブニング2―

平野家ひらのけ暇乞ひまごいして外に出ることには夜のとばりが降りていた。

隣の比翼ひよアニメや真奈の話で楽しく話をしてたらすぐに家に到着した。ドアノブが開かず鍵を使おうとポケットを探ろうとしてインターホンを押せばいいと気づく。冬雅ならすぐに駆けつけてくれるだろうと。


「・・・反応がない。まるで誰もいないみたいだ」


「もしかして本当にいないんじゃないかな、おにいちゃん?」


比翼の右の人差し指に窓を向ける。明かりはなく真っ暗だ。


「いや、普通に寝ているのだろう。冬雅、夜には弱いからなぁ」


「うーん、そうかな?違うと思うけどなぁ?わたしは」


腕を組み納得していない様子の比翼。まぁ、開けてみれば解ることだろう。鍵を差し込みドアノブを引いて開けるとかまちにピンクの手紙が置かれていた。


「手紙?一体なにが・・・って冬雅しかいないけど何かあったのか」


「あの上がり口にある、さかさまの部分に置く理由からして・・・うん。分からない」


推理を諦めた比翼に俺はつい声に出して笑ってやや不機嫌になって睨まれた。誤魔化しの意味も込めて咳払いして手紙の内容を見る。


お兄ちゃんへ、少しご実家に帰らせてもらいます。一人になって勉強したいのです。

PSお兄ちゃん愛しています


丁寧な字でそう書かれていた。読み終えて感想は、なんだろうこれ?であった。唐突にもほどがある。実家に帰るって、それじゃあ結婚しているみたいじゃないか・・・色々と突っ込ませる内容に俺は呆れながらも少し寂しくなる。


「おにいちゃん!疑問です・・・

PSの最後に愛していますってあるけど大好きじゃなかったよ」


「そこは俺も思ったけど告白セリフを変革をしていく冬雅なら当然かな?」


「疑問系なのに、そんな自信満々で言われても困るけど・・・

にも角にも冬雅おねえちゃんに訊いてみましょう」


比翼は俺の腕を引いて反転、玄関ドアをくぐりアクティブな比翼ひ俺は静止の声を出す。


「ちょっと待った比翼。両親がいるかもしれないから・・・俺がいたら大変だよ」


「ぬっ、それもそうですね」


比翼は足を止めて俺に見上げて、

うーんと唸って考え始める。夜風が吹いて冷めたさ、春の息吹いぶきは遠く感じる。


「とりあえず上がってから考えよう比翼」


「うん、分かった」


素直に首肯すると年相応な女の子になったなぁと親みたいな感動を覚えて・・・・・いや、いやそんな年でも・・・幼い子いても不思議じゃないが中学生の女の子を持つ年齢ではない。複雑になってきたので妹で継続!リビングの入り手紙をテーブルに置き向かいに座る

比翼はその手紙をめつすがめつ眺める。


「このラブレターみたいなのやっぱり大事に保存するんですか?」


「えっ?ほ、保存??」


神妙な顔をして何か気づいたのか思って沈思していた俺は転げそうになる。その前にラブレターだったのか?


「ハートも使ったり字をしていますけど、そこまで綺麗じゃないし。

相当、頑張っていますよ」


「そ、そうなのか・・・」


そう言われるまで気づかなかった。愛しているとあったし・・・。


「おにいちゃんニヤニヤしないで。見ていて気分が悪くなる」


「そ、そうだな・・・」


まさか比翼に辛辣な言葉を言われるとは思わず精神的ダメージを8割を減少してレッドケージに突入してピンチに陥る。まだバカな

事を考えて精神を和らぐ事に成功したところで、冬雅に訊いた方がよさそうだ。比翼が、気になっているようだし。


「両親と楽しく団欒だんらんしているかもしれないから後で私がラインで訊いてみるよ。

早くお風呂にでも入って寝ないと」


「はーい」


うんざりとした声で比翼は返事をした。午後11時になって比翼を寝かせて俺は部屋を出て一階に降りリビングに戻る。


この時間帯なら冬雅にラインメッセージをしても迷惑にも返信の

があると考えた俺はやや適当な文章のメッセージで送信する。

待っている間は小説を読んでおくとしよう。


夏目漱石なつめそうせきの最も人気が高い作品『こころ』を読みたくなった急に。

同性愛を抱くが片想いで報われず考えさせる内容だと思っている。

もちろわ人によって抱く感想は

違うだろうが・・・恋愛小説を書くものとして何か学ぼうと思って

もいる。2ページ目で着信音。


「来た!」


メッセージ内容にはこう書かれていた。


―心配させてごめんなさい。

成績は芳しくなく、勝手ながら当分は一人になりたいのです。

お兄ちゃんの告白は毎日しますので、そこは安心してください。

あと比翼には寂しくさせないように気をつけてくださいね。

真奈にもラインはしてくださいね。

お兄ちゃん愛しているよずっと


「ラインで長文なんてレアだな。

・・・・・いや、その前に毎日と告白を心配とか違うから冬雅!?」


ついツッコミを独白でした。

必然の結果、返事はなかった。

俺は何をやっているのだろうと嘆息する。まぁ、冬雅がいつも通りで安心した一方で、またドキドキ

させると張り切っていると

考えると一難また来るのかと考えるとブルー。


「あっそうだ!」


明日はひな祭りだ。男の俺には無縁なので冬雅に比翼のためにひな祭りをするのだが力添えをと

メッセージを送ると引き出しに

ありますと返事が来た。


(買うにしても失敗しそうだし。

冬雅の貰っていや、貸してもらってやるのがいいかもしれない)


後はひな祭りが、どんな物かは明日に冬雅の家に訪ねていいかメッセージを送ると、少しだけならと

珍しく積極的ではなかったのを怪訝に俺は思った。


そして翌日、両親が帰ってきたわけではなく勉強に集中したいと

言った冬雅の家を一人で目指す。

まぁ、すぐ近くだけど。


(比翼を納得させるの大変だった)


何かするんですか?など先に起きた比翼に詰問され、ただの挨拶に行くだけ?本当に?顔を見に行くだけ。と長い攻防が続いて、ようやく比翼は留守番してくれた。

隣家の冬雅ふゆかにインターホンを押す。数十秒ぐらい来るかなと考えたが三秒だった。


「おはようさん、お兄ちゃん」


「おはようさん・・・京都弁なんだね」


「は、はい!色気があるって本で知ったのですけど。それよりも

ひな祭りするんですね。お兄ちゃん」


最初から頬が赤いがそんな言動はまだしていないのだけど。

とりあえずひな祭り準備だ。


「ああ、比翼のためにね。それで冬雅に相談とか一緒にいた方が

比翼も喜ぶと思うけど今日だけ・・・いや今夜だけでもどうなな?」


頼まなくても冬雅が訪れるのに、

こうしてお願いするのは斬新だと思いながら。冬雅は目を星々がきらめくように輝かせる。


「えっ!?お、お兄ちゃんにお願いされるなんて・・・えっへへへ、どうしようかな?やぶさかじゃないのが正直な気持ちですので、行きます!!」


っと、冬雅の中では理想のシチュエーションにあたるようで舞い上がって快諾した。そんな反応

されると恥ずかしくなるなぁ。


「確認だけど家はいつぐらいに行く予定か訊いても。出来れば近くにいてくれたら助かるのだけど」


何か必然で、どうすればいいかなどネットしか調べていないので

自信がない。特に雰囲気とか、順序を間違う懸念けねん材料は尽きない。経験者の知恵を頼りたい気持ちだった。


「今すぐに行きます!お兄ちゃんのずっと近くにいますので安心してください!」


「えっ?ありがとう。けど、勉強を集中したいのじゃあ?」


「いえ、別に平気です。成績は優秀だと自他共じたともに認めるわたしですから。

お兄ちゃんの時間を少しでもいるためだって過言じゃありません!」


駄目だ。これは、久方ぶりの暴走状態だ。これを告白後暴走と命名しよう。すぐに忘れると思うけど。なお、そんな事を考えないと

恥ずかしくて目を逸しそうになる

ほど可憐だから。とりあえずいつものようにツッコミ入れる。


「そこは過言じゃないかな?

にも角にも嬉しいよ冬雅」


冬雅の笑顔に釣られ俺も笑顔になっているであろう。感謝を込めて言うと冬雅はパチリとした大きな瞳を何度もまばたきする。


「はぅ。お、お兄ちゃん・・・嬉しいけど不意打ちは卑怯です」


視線を落として、ゆっくりと身体を左右に振って悶えていた。そう言うと上目遣いになる冬雅に

それこそ卑怯じゃないかなと内心そう思った。

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