第183話―冬雅は聞いてしまった―

お兄ちゃんの部屋から出て、わたしは年上の弟さん部屋を入り鍵をかける。そして、わたしは先程のお兄ちゃんの寝言を思い出してしまいドアに背を預けてズルズルとしゃがみ、床に膝をつける。


「ううっぅぅぅぅーー、お、お兄ちゃんがわたしを・・・・・ぬうぅぅぅぅーーー!」


嬉しいけど恥ずかしさが上回り、わたしは唸り声を抑えれずに出して霧散しようとする。目覚めたお兄ちゃんは知らないだろう。恥ずかしいことを・・・・・。わたしは甘くて溶けてしまうほど幸せなことを。


「これから・・・どうやって、お兄ちゃんを見ればいいのだろう。

恋人繋ぎはもう少しする予定だったのに、わたし・・・で、でも、もうわたしとお兄ちゃんはそんな仲ですからおかしくなんてない。

いえ、遅すぎるほどだって思う。うん、そのはず・・・・・だといいけど――」


握っていた手を開閉を繰り返し温もりを覚えている。記憶には深く刻んでいるそれは、きっと忘れることないだろう。わたしは視線を宙に向けて数分前の事にあった記憶を回想する――


「お兄ちゃんは〜わたしの事が

大好き♪その深い愛は海よりも広く―、わたしも

お兄ちゃん大好き!大好きで、大好きで赤い糸は決して―

妖刀でも名刀でも断つことは出来ないほど強いんだよ」


わたしは大好きなお兄ちゃんを想っている内に自然と誕生した作曲を歌いながら朝食を作る。臨時休校となってお兄ちゃんの家に毎日と向かうのも感染すると、理由で泊まる流れとなった。


かなり強引だったけど押しに弱いお兄ちゃんは否定しながらも最終的に折れてくれた。当分は、わたしの家は戻らないでしょう。さすがにベランダでの挨拶は惜しいですが、リビングで挨拶するのも・・・・・あれ?

それって、同棲した恋人じゃないかな?


「冬雅おねえちゃん歌いながら料理を作るのはいいと思うけど、その歌をお兄ちゃんの家でやるのですか?」


「なななっ!?ひ、比翼えーと起きるの早かったねぇ」


「うん。お兄ちゃんが激しくって」


「は、は、ははぁ激しい!?」


眠たそうに目を擦り、ほとんど睡眠が取れていないよう様子。

比翼もしかしてお兄ちゃんと・・・


「寝返りを受けて起きたの。

お兄ちゃんと寝ていると時々してくるんだよね…あれ?冬雅おねえちゃん?もしかして――」


「う、うん!そうだよね。寝返り激しいよね。お兄ちゃんは・・・わたしもされてみたい違った。羨ましくじゃなく・・・災難だったよね比翼」


「・・・そういうことにしておく。冬雅おねえちゃん願望とか隠せていない」


比翼は、わたしの変な想像したことを見透しなのだろう。悪戯イタズラ的な笑みを頬を浮かべているからして察してこの返しに、わたしは恥ずかしさで灰になりそう。それと、お兄ちゃん大好き歌詞を聞かれてしまったし

言及しないように心でわたしは祈る。


「それで、冬雅おねえちゃん」


「な、何かな比翼様」


「何バカな呼び方をしているんですか冬雅おねえちゃんは。・・・・・ほら、真奈おねえちゃんらとは当分は遊びにこないのかなって?」


「・・・・・それは」


比翼は真奈や羽柴さんをよく懐いていて寂しいはず。気休めでも言えばいいなんてそんな楽観的に決められない。比翼は危う気な部分があるから。


「なーんて冗談だよ。驚かせた?」


気に留めていないように振る舞う比翼にわたしは、年下の女の子に気を使われた事に心に痛みを覚えた。お姉さんらしく振る舞わないと!


「うん。少し驚いたかな?」


「ドッキリは大成功しましたので、そろそろ手伝うよ冬雅おねえちゃん」


比翼は料理の手伝いにとエプロンをつけようと収納している箪笥たんすに向かう。わたしはさり気なく呼び止めてみる。


「ありがとう比翼。でもドッキリは違うかな?」


「えっ、それってどういうことなの?」


振り向きざまに首を傾け疑問。


「真奈とはスカイプなどでいつでも話せてゲームだって・・・えぇーと、オンラインで出来るよ。それに距離が物理的に離れているだけにすぎないんだから会えるよ・・・いつだって」


励まそうとして言ってみたけど。これは・・・・・なかなか恥ずかしい。穴があれば迷わず入りたい衝動に駆られる。比翼は姉として敬うわたしの台詞に呆気らかんとしている。


「・・・まさか冬雅おねえちゃんが真面目に答えるなんて」


「もしかして驚いたのってそこだったの!?」


「だって、冬雅おねえちゃんだし」


そんな変人の代名詞をわたしの名前で言われると遺憾の極みなのだけど、心当たりがあり過ぎて否定しようがないのが悲しい。

励ますつもりが、わたしがダメージを多く受ける羽目となった。


「でも、ありがとう」


比翼は笑顔でありがとう言った。

勉強や運動を教えるのは自信はあるのだけど悩みなどに関するものは、すこぶる苦手意識がありうまくアドバイス出来ず拙い。

その笑顔は偽りではないのは直感で分かった。


サンドイッチはすでに出来ていて後は、お兄ちゃんが目覚めるまで待つのみ。わたしは比翼の勉強を見て、具体的には分からないところや難しいのを教えたりして、集中している間は自分の勉強をする。午前7時、テレビから美青年で人気が高いニュースアナウンサーアリメカ大統領選挙代表を選ぶ選挙を有名な人が撤退したと述べていた。スマホは集中の妨げになるのでお兄ちゃんの弟さんの部屋に置いている。


「冬雅おねえちゃん。そろそろゲームがしたいよ!」


「もう少し頑張ろう。ねぇ、比翼ならすぐに終わるから」


「むぅ、おにいちゃんみたいな事を・・・寝顔の写真がありますけど」


視線を落とし勉強をしていたわたしは欲しいと思い顔を上げてみると比翼は不敵に笑っていた。まるで、いえ反応が解っていたようです。


「・・・つ、釣ろうとしても無駄だよ。い、いつも見ているから」


「・・・おねえちゃん、そんな必死な表情で言われても。

フッフフ、足りないと言うならおにいちゃんとデートしたわたしの秘蔵写真を譲渡しますよ。

わたしが何を望んでいるか言わずとも知っていよう冬雅おねえちゃん?」


「うっ・・・・・」


その秘蔵写真には、何が写っているのかものすごく興味はあるけど比翼の勉強を見ないといけない。

どちらかにするか、わたしは悩んだ末に選ぶのは―――


「だ、駄目・・・だよ」


苦渋くじゅうの決断をいられ、わたしは誘惑に負けずに正道を選択した。後悔は・・・・・ない。


「んー、冬雅おねえちゃんのサンドイッチ最高!おかわりないのが残念で仕方ないよ」


「ああ。レタスやベーコンのシンプルながらも瑞々みずみずしくて朝には相応しい控えながらも美味しい」


「わぁー、嬉しい。料理で二人が喜んでくれていると、わたしも幸せな気持ちになるよ」


朝食は比翼も手伝ってもらい二人が喜んでもらえると舞い上がるほど嬉しい。その後いつもの寛いでいると夕刻にお兄ちゃんが熱に浮かされる。おかゆを作り部屋を出て茶碗を回収して皿洗いと掃除などする。


「冬雅おねえちゃんなんだか、おにいちゃんの・・・・・」


「?」


ゲームしていた比翼は手を止めて何か言おうとしていた。雑巾で窓を拭いていたわたしは振り返り

比翼の言葉を待つ。


「やっぱり、何でもない。邪魔してごめんね」


「ううん。構わないよ」


比翼が何を言いかけた言葉が気になったがこれ以上は考えても答えが出ないと諦めた。

午後11時になり、わたしはお兄ちゃんの部屋の前でドアを3回ノックしてから入る。


「・・・気持ち良さそうに寝ている」


マスクして寝ていると、なんだか変だなと思い起こさないように極力、音を立てずに近づいてベッドの横に置いた椅子に腰を落とす。

こうしていると不思議と次の日には元気になるのではと思ってしまう。今まで感染したと不安で潰れそうだったのに・・・寝顔で不安が消える自分の単純さに呆れてしまう。


「えへへ、かわいいなぁ。どんな夢を見ているのかな?」


思いのほか、熱はすぐに冷めそうと思い勝手な結論して安心感を覚える。今日は告白はまだしていないなぁと今になって気づく。


「冬雅」


お兄ちゃんが、わたしの名前を呼ぶ。切なそうなトーンで。


「ふぇ?お兄ちゃん」


「冬雅・・・冬・・・雅」


何度も名前を呼ばれてドキマギさせられるけど、寝言のようです。

ほ、本当にいったいどんな夢を見ているのだろう?


「冬雅。冬雅・・・冬雅、冬雅、冬雅・・・・・」


「・・・・・」


お兄ちゃんそう名前を連呼させられると悶えて天に昇りそうになるのだけど。いえ、現にそうなる手前ですね!


「冬雅・・・・・行かないでくれ」


お兄ちゃんは手を天井に向けて伸ばす。まるで、わたしが遠く離れていくのを追いかけているように。


「わたしは、ずっとお兄ちゃんの隣にいますよ・・・ずっと」


苦しそうにする、お兄ちゃんの手をわたしは握る。その大きな手は震えていてまだ安心はしていないのが、伝わってくる。冬雅と何度もわたしの名前を呼び続ける。歓喜する気持ちよりも、安心させてやりたいと考える。きっと、翌日にはお兄ちゃんもわたしも忘れる大したことない事だろう。

けどそんな理由で放置するほど、わたしの愛は小さくない。


「お兄ちゃんは、わたしはここにいるよ」


強く握り、離さないように指と指の隙間を握る。いわゆる恋人繋ぎ。


「・・・・・ぐぅ、すぅー」


「ハァー、良かった」


伝わったのか、お兄ちゃんは落ち着いて上げた手を落とす。手は繋いだままで。正直、寝ているとはいえ恋人繋ぎに、わたしの心はドキマギして落ち着かない。


「冬雅・・・愛しているよ」


「お、お兄ちゃん・・・・・」


寝言でそんな言葉を・・・・・ううん、寝言だからこそ、その言葉は本音ほんねから出た言葉。

けど、わたしを愛しているよって・・・・・幸せすぎる!!


「お兄ちゃん・・・・・」


「・・・・・冬雅?」


え、ええっぇぇぇーーー!?お兄ちゃん起きてしまったよ。わぁ、わぁ。どうしよう!?


「えっ?あの、こんばんはお兄ちゃん」


「こんばんは?それよりも、今は何時でずっといてくれ?」


お兄ちゃんはわたしを愛していると言った。眠っているからこそ真実の意味ってことになる。クリスマスの時に好きだって言ってくれたけど、心の隅っこでは気遣ってくれたのではと僅かな不安があったけど・・・気遣う要素など無い寝言だからこそ本当にそう想ってくれていた。もちろん、わたしは大好き。ううん前よりも大好き!!


「お、お兄ちゃん・・・その、わたしも愛している・・・・・じゃなくて午後11時だと思います」


お兄ちゃんの反応は目を見開いて戸惑いながらも優しく笑ってくれた。・・・もう少し素直になってほしいかな。


「冬雅ありがとう。でも、そろそろ遅いのだから寝たほうがいいよ」


「は、はい。お兄ちゃん」


ここで寝たいのだけど感染や比翼が許してくれない。いえ、愛しているなど言われてドキドキし過ぎてクールダウンしたい。そんな数多の理由で部屋を後にした。

――回想は以上、うぅっ思い出しただけで気絶しそうになる。

弟さんの部屋で鍵をしているのでお兄ちゃんにも入ってこれない。


(嬉しすぎって愛しているなんて言ったけど・・・お兄ちゃんも言ったから返しただと全然ちがうよ。いつもはわたしから言っていたのに・・・お互いだって意識すると、うわぁぁぁーーー!?は、恥ずかしいよぉぉーー!!)


次から、お兄ちゃんの顔を見て変わらず日常的に振る舞えるか自信が無いよ!

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