第115話勇者マナ

ワタシ平野真奈ひらのまなは異世界召喚された。

どうして、そう思ったかは目の前の人がいるのは魔法ローブに年季のある杖。殺風景な部屋に家具はなく足元に魔法陣。


「おぉー!世界を救いし勇者を

召喚に成功した。ようやく長い月費が報われたのじゃ。

混乱すると思われるが、おぬしは異世界にいるのじゃあ」


「うん、わかった。

それで、ワタシはいつになったら帰れるんですか?」


「ちと、受け入れるの早くないかの?ほら、なんていうのヤバいとかヤバみとか激しく戸惑う場面じゃないかの?」


しゃがれた声や口調からして、年配の男性だね、これは。

とりあえず、おきなはワタシを召喚したらしい。

正直に言えば東洋お兄さんかイケメンなどがよかった。


「まずは状況整理させてもらうけど、今は何時?それとここはどこか?はい!答えて」


まずは、簡単な質問。どうやら、召喚した翁が戸惑っているのでやや催促を迫る発言になる。


「うぬ、早朝4時に聖域ガーデン・ファニチャーという西国の

大国である。次期国王の命からして」


「なるほどね。次に質問だけど

もう一人も呼ぶことはできるの」


「出来るが、呼び出せるのは

資格があると判断した神の選定により召喚されるのじゃ」


その話によると、呼ばれるのは

異世界召喚に相応しいと判断した

神というわけ。


「そ、そのワタシの知己ちきを招くことはできないんですか?」


「無理じゃなぁ」


魔法ローブの翁はワタシの問いに首を横へ振る。


「そうですか。でしたら、ワタシもう旅籠はたごで引き篭もりをします」


ドアがある方へ歩き進もうと足を前へ踏む。


「ま、待つのじゃ!

本当はできるのじゃ」


「そうですか」


ワタシは振り返り、淡々とした返事をする。内心は心が踊っている。


(やったー!それじゃあ誰を呼ぼうかな?冬雅かあかねにしようかな。それとも香音かのんにするべきか・・・・・)


「しかし、神の選定以外となると恋い焦がれる人しか出来ぬのじゃ」


翁は、召喚可能条件をの発言にワタシは理解出来るまで数分の時間を要した。


「・・・・・え?あ、あの。つまり

好きな人しか呼べないと?」


「そうじゃあ、お主が強く懸想けそうをかけている者のみじゃ」


「え、ええぇぇぇぇーー!!」


それで、ワタシが真っ先に頭を浮かべるはお兄さんで・・・うわぁぁぁ!!ど、どうするワタシ。

強く想っているなんて。


「どうする?するか、しないか」


な、なんなの。この究極の選択は。いえ、選択じゃないようなぁ・・・・・ええい、まぁまぁよ!


「お、お願いします。

ぜひ召喚したい人がいるんです」


ワタシは、翁に年季のある杖を受け取り魔法陣の前へ立つ。

杖は物質として肌で感じる。

重たさ、巨木を彷彿させる丈夫さなどを。


「よいか!何度も言うようだが通常の恋慕では召喚はできない。

神さえも認められるほど、熱い想いを込めて名前を言うのじゃ!」


「それ、初耳なんだけど!

うぅー、やるわよ!!」


冬雅のように強い想いはない。

けど、もしワタシがお兄さんに

強い恋心があるかもしれない。

これは、かけだ。

成功率が一厘いちりんさえもないだろうけど、それでも――


「お、お兄さん来てぇぇぇ!!」


魔法陣は、空色に発光する。

そして、最も強く輝きワタシは、

その眩さに目を閉じる。しばらくして目を開けると――――


「え、えぇーー!?

もしかして異世界召喚なのか?」


お兄さんが見事に召喚したのだった。


「おぉー、奇跡じゃ!

長年その成功例は無かった眉唾と言うのに成功するとは・・・・・

強い懸想が叶えた奇跡じゃ」


え?成功例が無いのに言ったの?

話を振り返ってみて成功例があれば勧めたのだろう。

それよりも、成功例がないとなるとワタシのお兄さんに対する想いはとても、計り知れないことに。


「はわはわぁぁ・・・・・」


「ま、真奈。大丈夫か?

顔が今にも沸騰しているように――」


「お、お兄さん今は何も言わないで!見ないでぇぇ!!」


成功と想いの証明の興奮と叶えてしまった羞恥にワタシ絶叫する。

お兄さんは、首を傾げる。


「だから、お兄さん見るなぁぁぁぁぁーーーーーー!!」


ワタシが、落ち着くまで

お兄さんと翁は何か話をしている。お、大人だ。いや違うかな?

もういいや。

ワタシが、落ち着いたと伝える。

ワタシは知らない土地――ではなく世界に心細くなりお兄さんの

右手を握り繋がる。


翁は、それを見て微笑ましそうにする。アンタもやめろぉぉーー!

それからついて行き次期国王と

呼ばれる高貴な人に謁見する。


「では、あの者が伝説に聞く

選ばれし異世界勇者か!」


現国王ではなく、次期なので

豪華な椅子ではくソファーで対面した。もちろん、ただのソファーではなく黄金の装飾されたソファーだ。


次期国王の容姿は整った金髪に

凛々しい碧眼へきがん

格好は青と黄色の基調とした軍服したイケメンだった。

年齢はワタシと同じぐらい。


「は、はい!ワタシがその伝説の異世界勇者でいいと思います。

たぶん、おそらくですけど」


「うむ。まだ、召喚されて右往左往しているのだろう。

して、隣の者は?」


「実はあの者は、勇者の強い懸想により召喚された異世界の住人です」


そう答えるのはソファーの横に立つ翁で、説明は助かるけど正直

やめてほしい!

大好きな人が隣に聞いているのに

無神経か翁!


「はは、それはめでたい・・・・・

何!それは真《まこと》の事なのか!?」


向かいに座る次期国王は立ち上がり信じられないと驚愕。


「はい。にわかに信じられないと思いますが事実です」


「だとすれば、彼は・・・未知の勇者と呼べばいいのか」


指をあごに触れて思考に入る。そんなことよりも、お兄さんに・・・強い懸想だって伝わったよ。隠そうと思ったのに。

この、空気をもっと読んでよ!


「真奈その」


「は、はゔいぃぃぃ!」


お兄さんに声を掛けられワタシは上擦った声を出してしまった。


「ハヴイ?勇者よ。それは、

神のお告げか何かでしょうか?」


「声からして何かの凶兆きょうちょうを予知!?」


次期国王と翁、少し黙ってください。すごいシリアスな表情してますけど今どころ何も成果はないワタシにその過分な期待はやめて!


「真奈そうなのか!?」


「お兄さんまで!

何も無いんです。なので、早く本題に入ってくださいよぉーー!」


次期国王と翁は、落胆していた。

お兄さんは・・・まぁ、いつも通り苦笑していた。くっ、あまり照れていないのが腹立たしいです。

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