ネクストターニング

第114話JKのためにバイトする

11月の中旬。俺は仕事を探そうと決意してハローワークに行くが、すぐに見つからず、遺憾ながら冬雅の友達である三好さんにバイトの誘いを乗ることにした。

三好さんが、家に遊びに来たときに頼んだ。「まずは両親に訊いてみませんと」ことで返事は明日へとなり、翌日の夕方に明日からでもお願いしますと、三好さんが

言ってくれた。そしてバイトの日。


「いらっしゃいませ」


お客様が来店して、頭を下げ

歓迎の言葉を言う。

最初は緊張で、噛み噛みだったが

3時間も経てば慣れてくる。


「山脇くん。発注した本が届いたからラノベコーナーに並べてくれないかな?」


「はい。分かりました」


レジに立っていた俺は、店長の指示に従う。

店長は三好さんの父親。

高身長で、容姿は整っていて言動が、どこか洗練されている。

一言で表すならダンディ。


休憩室に入り、テーブルの上に本が入ったダンボールが置かれていた。


「よいしょっと!」


本を持ち、ラノベコーナーへ並べる。今日が新刊の発売日。

帰りに後で買おうと心の中で決意する。本屋の仕事は思ったより重労働だ。笑顔で接客は普通として

お客様の読みたい本を探したり

フェアで覚えないといけないことや、本を運ぶなど。


(まぁ、本好きからしたらあこがれでもあるし、そんなに悪くないかも)


しかし、そう思ったのは午後4時になる前。午後四時になると人が増えてくる。そのため、接客をしたり探している本などなど。


(フッ、ここは地獄だ)


笑顔を崩さずレジに立ち会計を

素早く本を丁寧にカバーを付けて

袋に入れていく。

あっ、中高生の少年が新刊のラノベを買った。

午後6時になり、天使が来た。


「いらっしゃいま・・・せ」


潤いがある長く伸ばした黒髪に

白く透き通った肌と純粋無垢な印象を持つ瞳。二次元にも唯一と渡り合えると言うのは過言ではないほど容姿端麗の美少女。

冬雅が、俺に気づくと寂しそうな顔から一変して太陽のごとく笑みを向ける。


(ど、どうして冬雅が・・・・・いや

昨日の食事で話を聞いていたから当然か)


それでも、来るなんて予想外だった。他のお客様は、太陽の美少女に目を奪われている。

冬雅は、歯牙しがにもかけずに本棚を見ていく。

時々、チラッと俺にも見て。


(好意を向けていると分かっているから落ち着かない。

そして、落ち着き始めているのは、立派な矛盾だなぁ)


だけど悪くない。冬雅がいると

いつもよりも頑張れる気分になれる。JKの冬雅が27歳の俺に告白してから半年も経過していないのに何年も一緒に遊んでいるような濃密な出来事に思える。


「お願いします」


「あっ、はい・・・・・っ!?」


思考世界から現実に帰還。

お客様が冬雅だったことに驚いた。さ、さすがに人目があるから冬雅かも、告白はしてこない。

周囲の目など、どこ吹く風スタイルでも告白は、やっぱり場所を選ぶようだ。そんな当たり前の事を

何を驚いているんだと反省。


(あ、あれ?本のタイトルが

年上の大人がドキッとするセリフ、理想の妹とは、理想の告白は今でしょうか?・・・・・って、

何その変な本は!!?)


実用書だろうけど、タイトルからして怪しい過ぎる。

も、もしかすると俺がドキッとしたのも今の本みたいな知識だとしたら、冬雅はドキッとさせるために努力しているんだなぁ。


「わたし、大好きな人のために

毎日と告白しているんです。

それでも笑顔で受け流すこともあるけど、不撓不屈で何度も挑むんです。わたしが、世界一だって

この人だけだって思ったのだから」


この大好きな人が、俺で周囲に

告白だと分からないよう俺に

案の定やはりして来た。


「あ、あまり無理をなさらずに」


本を入れ、支払いは現金。

考え過ぎだと思うけどお釣りの時間でも少し二人の世界にいたい

とか。

・・・本当に考えすぎだなぁ。

恋愛脳に支配されているかも。


「またのご来店を」


冬雅は丁寧に頭を下げ店を後にする。40分後、次は真奈まなと三好さんがやって来た。


「どうやら、帰ってきたようだね。山脇やまわきくん、もう上がってもいいよ」


ダンディな店長は、隣のレジでクールに促す。


「分かりました。

そう言えば、店長の娘さんが

帰るまで、でしたね。

それじゃあ、失礼します」


休憩室に入り、脱衣室のドアを開けて着替える。カバンを持ち戻ろうと休憩室に行くと真奈がいた。


「お、お兄さんお疲れ」


「真奈も学校や塾お疲れ様。

一緒に帰るか、家を送るばいいかな」


「今日は、家を送りでお願いします」


「分かった」


三好さんと父親の店長に別れを告げて書店の外に出る。


すぐに真奈は、俺の右手を繋ぐ。

周囲は少しギョッと驚く。

まぁ、兄妹に見えないし真奈の頬は紅潮しているのも。


淫行だと思われないか少し

ヒヤヒヤしてくる。


「お兄さん。冬雅は来ました?」


「え?ああ、もちろん来たよ。

そして、告白されるとは思わなかった」


「ふ、冬雅そんなことを。

猪突猛進にもほどがある。

ワタシなら、人目を気にするのに」


(個人的には問題はそこでは無いと思うわけだけど恋するJKは

そんな些細は気にしないだろう)


栗色のサイドアップのポニーテールが夜風でなびき舞う姿はそれだけで絵になる。


「それにしても寒い。

真奈は、寒くはないか?」


「いえ、マフラーやコートも

していますので特には」


11月になってから寒くなった。

もう外に出たくないものだ。


「はく、シュン!」


「あはは、お兄さんまるで

女の子みたいなクシャミだよ」


「そんなこと言われても」


自覚はあるから指摘しないで

欲しかったよ。俺もマフラーとか

いつか買おうかな。


「そんな、お兄さんには

こうするんだから!」


真奈は、マフラーを俺の首に素早く巻く。自棄やけに肩や足など接触するなぁと思えばマフラーが二人分に巻いて・・・それは

カップルの距離感であった。


「ま、真奈さすがにそれは」


「か、風邪ひきますよお兄さん。は、恥ずかしいのはワタシも一緒ですから我慢しなさいよ!」


「あ、ああ」


俺は真奈を自宅の近くに到着して

別れる。かなり、刺激が強かった。女の子に一緒にマフラーなんて初めてだし、一人の帰路での道ドキドキは収まらず続いていた。

家に着き靴を脱ぐ。


(あれ?居間に明かりが)


電気を消し忘れただろうか。

もしかすると強盗か。

少し、慎重に音を立てずにドアを開けると制服姿のままエプロンを

した冬雅が台所で料理をしていた。


「冬雅なのか。どうして!?」


「あっ、おかえりなさい。

お兄ちゃん!えへへ、まるで

新婚さんみたいですねぇ、わたし達」


振り返ると、嬉しそうに答える冬雅。新婚さんじゃありません。

否定したが冬雅が料理を作り

本当に新婚体験みたいだ。


「もしかして、私のために?」


「うん。そう、そうなんです。

そろそろ帰ってくると思って

作っていました。

そろそろ出来るので手洗いに

行ってください」


「わ、わかった」


冬雅が、俺がいない家に入るの今まで無かったことだ。

そうまでするのは、負担を減らすためだろう。けど、そこまで

尽くさなくても告白の返事は

変わらない。

恋を諦めさせるのが当初の目的は

変わっていないのだから。

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