第112話フィールド・トリップお守りと告白

「お兄ちゃん。やっぱり一緒に寝ませんか!」


NOノーだよ!」


靴を履き終えた冬雅は、玄関を出ようとせずにとんでもない発言をした。当の本人は額面通りの本当に一緒に寝るだけで言っているけど俺の以外に使えば勘違いする。


「えぇー、妹としては普通だと思うんですけど」


「そもそも、実の妹じゃな――

いやそれも違うか。とりあえず

コンプライアンス的に駄目!」


「せ、せめて照れてくれても」


冬雅は、ボソッとそう呟いた。

もう少し声量を下げてほしいところだけど。


「明日だってあるし、そう急がなくても毎日と挨拶して食事するんだし。そういうのは、正式的に恋人になってからで」


もうこれ、何度目だろうと自問自答したくなる。きっとわずかに離れていたから、いつと変わらぬ言葉をしたくなったと思う。


「そ、それじゃあ・・・・・正式な恋人にな、な、なってくれませんか」


「・・・・・・・・・・」


「・・・お、お兄ちゃん?」


「あっ、いや年が離れて過ぎているから駄目だよ」


一瞬とはいえ口をつぐんでしまったのは、冬雅が恥ずかしそうに告白だ。いつもは、天真爛漫と猪突猛進にして来るのに対して、今日はリアルな告白だったから。


「お兄ちゃん!わたし年齢とか気にしませんし、その・・・淫行が気になるなら将来の恋人として予約してほしいかなぁ」


勢いがあった声がたちまちと落ちていき小さくなる。

内容は全部と聞こえたけど、恥じらう姿を見ると、こちらまで恥ずかしくなる。それよりも予約って

何!?っとツッコミそうになり

真剣なのに、そんな無粋なことを口にしない。


「ごめん」


どれだね熱い想いや真剣でも27歳の俺は告白するJKの冬雅には

断る選択しかない。


「ううん、いつもの事です。

それでも成果は少しはありました」


「成果?」


「気づいていないようだけど、

顔が赤かったですよ」


「こ、これは・・・狒々ヒヒの真似をしていたんだ」


咄嗟に出たのが何故か狒々。

腕を後ろに満面な笑みで、指摘して欲しくない所を言う。


「もっと嬉しかったのは・・・・・

告白もしっかり受け止めて

考えてくれたことも」


「・・・・・冬雅」


口を噤んで、何か言おうと言葉を探すが名前しか出てこなかった。

そして、冬雅はいつもの笑みへと戻る。この話は終わりと言わんばかりな行動だった。

なんだか、有耶無耶うやむやになって落ち着かないが解決策があるわけがなく従うことにした。


「今夜も楽しかったですよ

お兄ちゃん。それじゃあ、また

明日」


「ああ、また明日」


軽く手を振り別れの言葉をする。

ドアノブを握り、そして離す。


「そ、そうでした!お兄ちゃんに

お土産があるんです」


「お土産?」


長年、ぼっちと友達もいないような俺に無縁だと思ったセリフ。

冬雅は、かばんからお守りを――


「はい!お兄ちゃん」


「あ、ありがとう」


両手で差し出すお守りを受け取る。真ん中に書かれている[幸]と書かれたお守り。視線を冬雅に戻し、冬雅は頬を掻く。


「えへへ、大好きな人にお守りって思ったよりも恥ずかしい・・・」


俺には理解できない範囲だけど、

感謝と素直に嬉しいを込めて伝えよう!


「ありがとう冬雅。大事にさせてもらうよ」


「はぅ!そ、そう言ってもらえると嬉しいです・・・えっへへへ。

じ、実は真奈に勧められて

これにしました。

その文字のお守りは幸せを願いが込められているんですよ」


「へぇー、」


「最初は恋愛成就にしようかなって悩みました」


(恋愛成就のお守りを渡されてたら反応が困るから助かった)


言葉にせず心中で安堵のため息。

冬雅の言葉は続く。


「・・・お兄ちゃんには幸せになってほしいですから迷いなく

選ぶことできました」


暖かく親しい人に向ける笑みを

――もとい!愛おしそうに眼差しを向ける冬雅。


「大好きですから、幸せになってほしい。それが、隣にわたしが

いなくても」


一粒の水滴が頬に落ちていた。

感情が抑えられずに涙を流して。

それを見た俺は、もう決意した。


「冬雅、実は俺もす――」


好きと言って本当にいいのか。

次は真奈が泣いてしまう。

なら、俺が選ぶのは最初から決まっている。


「・・・す、すき焼きにしようと

思うけど、どうかな?」


「・・・・・ふぇ。こ、このタイミングで、ですか?

別にいいんじゃないですか」


必然に戸惑わせることになった。

あ、危うく勢いで告白するところだった。好きなのか、自分でも

よく分かっていないのにだ。

俺ってこんなに軽率な行動するのか。


「その幸守さちまもりは、効果が無くても、わたしがお兄ちゃんを幸せにさせます!

それと、また明日も料理を作りましょうねぇ。ばいばい!」


韋駄天いだてんのごとくスピードで外に出ていきドアを閉める。返事を返すすきを与えずに。


「また明日、冬雅」


声が届かないと分かってながらも言葉にして今日は別れる。

きびすを返し居間に戻る。

また、告白を耐えないといけないのかと耐える続けないといけない日々が来る。

それも悪くないと思うのは

間違っているだろうなぁ。

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