第111話フィールド・トリップ其の拾
今日は冬雅達が帰ってくる。
2泊3日の修学旅行、その間は執筆に集中できたが冬雅や真奈がいない部屋が落ち着かなく寂しくもあった。理由はいくらでもあるが、俺が強く望んでいるのは一緒に・・・そばにいてほしい。
「でも、それは望んでいけないことなんだ。俺の
・・・・・それに、二人といつかは訪れる別れの日は必ず来るんだ」
最後の呟きは自分に向けて掛けた、心よりも言葉をしたくて。
リビングでソファーを座りながら、二人が帰ってくることに喜びがあってそれが俺を驚き戸惑い認めたくなくなかったこと。
(今までなかった思考に・・・
二人のことをずっと考えて離れない!もし、これが好きという
感情だろうか?)
「いや、一瞬とはいえそんなことを考えるなんて。
少しおかしくなったか」
そうに違いない。いつもそばにいる二人がいないから強く意識させられるのだ。心理的によく陥るはず・・・きっと。
ピンポーン・・・・・部屋に響く電子音に俺は、玄関に早足で向かう。
間違いなく冬雅と真奈だろう。
時刻は夕方で外は夜、ドアに近づき
ドアノブを握ると緊張で喉が乾くような感覚になる。
胸が高鳴っているのを、追い出し玄関ドアを開ける。
幻想的なつややかさの黒髪は長くキレイで・・・雪を騙せるほど白い頬には赤く染まっていく。
冬制服の冬雅は顔を輝かせる。
「お兄ちゃん・・・・・好き!
大好きだよ。それと、ただいま」
「おかえり冬雅」
冬雅の屈託のない笑顔と玉砕覚悟の告白に悩んでいたことが、霧散していく。
愛おしくて、安心感が溢れる。
不思議な感情であった。
「あれ?真奈とは別行動でも」
「真奈のお父さんとお母さんに心配させるかもしれないから、お兄ちゃんの所にはいけないって」
「そうか。当然か、修学旅行を終わりに別の所で
お互い、やや
時刻が、午後九時なんてよくある。それで、真奈の両親に心配させると思って帰宅の選択したのだろう。
「とりあえず、色々と疲れただろう。中に入ってゆっくり寛ぐといいよ冬雅」
「はい、お兄ちゃん!」
玄関のドアを閉め靴を脱いだ冬雅は隣に来て手を握ってきた。
「お兄ちゃん。こうしていると
同棲しているようでドキドキしますよねぇ」
明るい笑みを向け、いつもの告白というとんでもないセリフを!
「俺は子供の面倒を見ているようかな」
「・・・むぅ、わたしJKなんですけど」
そう淡々と答えたけど、内面はドキッとしている。考えないようにしていた一つであった同棲のよう。冬雅の反応からして俺の顔には赤くなっていないだろう。
冬雅の荷物は、居間の隅に置き
アニメを観ることになった。
「冬雅まずは何を観る?」
「慎重勇者で!」
ソファーの右から肩をよって来た。つまりは、肩と肩が触れていて吐息まで聞こえる距離にある。
(冬雅のアタックは、少し困ってしまうよなぁ)
強い信頼や愛情が伝わって嬉しいくなる。大好きだって毎日と告白しているのだから当然な話だけど。夕食の支度となると一緒に
作ることになった。
「えへへ、どうですかお兄ちゃん。わたしのエプロン姿は」
くるっと、一周と回る冬雅。
明るいオレンジ色のフリルエプロンを身に着けて。
「マリーゴールドの花のように明るく似合っているよ」
「あっ、はは。お兄ちゃん少し
照れてしまいますよ」
本当に照れ笑いを浮かべて、そのセリフを言うのか。
ともかく、今夜ほ料理はロコモコ丼。冬雅が疲れているだろうことでガッツリしたものにした。
「お兄ちゃん。味噌汁は、わたしが作ってもいいでしょうか?」
「え?ああ、いいよ。でも
私が作っても」
「い、いいんです。
お兄ちゃんに食べてほしいというのか・・・・・」
見当違いかもしれないが、好きな人のために作りたい想いだろう。
「ああ、分かった。
楽しみにしているよ」
「うん。任せてください!」
冬雅が野菜を切るのを横目でチラッと見る。冬の旬である野菜の
大根を皮を包丁で危うくなくむく。冬雅は、日進月歩していく。
腕前も想いも、そう思わずにはいられなかった。
(それに引きかえ、俺は成長していない。そばにいていいのだろうか俺なんかが)
本当は俺も成長しているだろう。
でも冬雅のような真っ直ぐ一直線と走っていくとは違って
俺は
それは陽と陰。光と影。
成長速度や過程も・・・・・冬雅は
眩しくて憧憬に見える。
「お兄ちゃん。わるい方向へ考えないで、ずっと一緒にいてください」
「ふ、冬雅もしかして・・・・・」
冬雅は大根を切り終え味噌汁の鍋に入れてから、真っ直ぐ向くいて
信念のある言葉をした。
「あ、あれ?わたし変なことを言ってしまいました。その、さき言ったことは忘れてくださいねぇ
お兄ちゃん」
「ああ。冬雅ありがとう」
一瞬、心を読まれたと思い驚愕した。読心術など眉唾があるわけがない!理屈ではそう判断して、心は通じたとファンタジーに思い。
「えーと、どうもいたしまして?もしかして熱ですか!」
かかとを上げ、手を俺の
「うーん、いつも通りですね。
そういえばお兄ちゃんは、わたし達がいなくても栄養はしっかり
摂りましたか?」
「ぎ、ギクッ」
「・・・・・お兄ちゃんもしかして
暴飲暴食でもしていたの。
あとねぇ、ギクッはなんですか?」
純粋に、ギクッという言葉を知らないと首を傾げていた。
そ、そうなのか。JKさんでは
もう通じないというのか、
知らないのか。
ともかく、詰問は食事となる。
向かい席に座る冬雅は顔を輝かせて、ロコモコ丼をスプーンで
口に運ぶ。
「―――絶品です。さすがは
お兄ちゃんです」
「過度なお褒めをいただき
ありがとうございます」
「えへへ、そのセリフ素敵です。お兄ちゃん。わたしが居なかったときは、話をしてくれませんか?」
「わ、わかったよ冬雅」
俺は観念して説明をした。
冬雅が、いない間に小説を書いてを。カップ
「ふえぇー!お兄ちゃんって
普段はそうなんですか?」
「普段は簡単なもので済ませることなら、イエス。
でも料理を作ることが基本的に多いよ」
「ふん、ふん。
お兄ちゃん、夕食だけど担当とか
決めます?」
唐突でかなり省いた内容の提案。
「えーと、夕食の担当を決めると?」
冬雅は、明るく頷いた。
「うん。負担も減るだろうし」
「それは、俺であって冬雅は
負担が前よりも増えるからダメだよ。それよりも、修学旅行の
話を聞かせてくれないか」
「はっ!そうですねぇ。
真奈だけど―――」
修学旅行が終わってから冬雅の
存在は確実に俺の中では大きい。
もちろん真奈も。
冬雅の満面な笑みと太陽のように照らす温かさを、ずっと変わらずにあってほしいも切実に思うのだった。
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