第101話二人のJKは明日は会えない

「アンニョハセヨ

お兄ちゃん!」


冬雅の挨拶はおもしろい。

日常では使わないような挨拶をするのは斬新だった。


まるで、新しいゲームを購入した

ワクワク感や楽しみに近い。

今日は韓国語。

アンニョンハセヨには、ンという発音を弱くしたほうがいいと

聞いたことある。


「アンニョン!ハセヨ」


意識してンを強く発した。


「お兄ちゃん上手く

言えてないよ」


「・・・うん。それより

今日もいい天気だね」


話を逸らそうと試みる。

お隣のベランダを手すり両腕を置いて身を乗り出す冬雅。

その姿に幼馴染の美少女と

日常の朝みたいと思ってしまう。


「そうですねぇ・・・わたしの

嬉しい気持ちが天気に反映

しているみたいです」


「それは少々、大袈裟おおげさ・・・本当にそうかもしれない……」


雲がなく誰から見ても快晴と

答えそうだ。いい天気を

冬雅の嬉しい表現を比喩には

納得している。


「そうなると・・・お兄ちゃんは太陽ですね!わたしをずっと

照らしてくれる。見ていても

嫌な気持ちなんて無いのは

わたしながらスゴイたとえとしか言えないですねぇ!」


「な、なるほど?」


太陽のようって、冗談を言ってるとは思えないし本気なのだろう。

だけど気恥ずかしいし、他者を

明るくさせる力なんてないのに。


「それでは、お兄ちゃん

すぐに会いにいきます!」


言うが早いか、部屋に入りドアを開け出る。バタンと閉まるドアを

呆然と見ていたことに、気づく。

嵐が去ったような出来事。

俺はリビングに行き朝食を作ってから十分ぐらい経過して冬雅が

来たと、何度も聴く音が響く。

玄関に向かい開ける。


「・・・お兄ちゃん大好き。

えへへ、上がります」


「ああ、どうぞ冬雅」


今日の朝食は、目玉焼きその横に

レタスを置いた簡単なものと

味噌汁、具はサツマイモとワカメ、枝豆、大根。

テーブルを向かいに座り

一緒に「「いただきます」」と

手を合わせ声をハモらせ

箸を持つ。


「んぅー、お兄ちゃんの

味噌汁おいしいです!

わ、わたしのために毎日、

味噌汁を作ってくれませんか?」


「け、検討するよ」


定番の告白である。俺のために毎日、味噌汁を作ってくれ・・・

あれ?女の子も言うだろうか?


「・・・へへ、わたしこの告白

を一度だけで言ってみたかった

んです。すごい恥ずかしいさで

噴火しそうです」


自分から告白して、照れ笑いを

浮かぶのは反則だと思う。

もしかして俺は冬雅を女の子として・・・好きな女の子として

意識しているのか。

いや、それはない。現実世界を隔離かくりする美少女に

告白されてドキッとしているだけだ。それだけで、好きとは

言えないんだ。


「お兄ちゃん」


「んっ?」


考えている間に冬雅が箸で掴むのは、味噌汁に入れたサツマイモ。


「はい。あーん」


口を開き咀嚼そしゃくする。


「っ――――!!?」


いや、咄嗟にあーんしたけど

この箸は冬雅が口をつけていた

わけで間接キスになると、

遅れながら気づく。冬雅は、

ご飯を口に運ぶ。


「ふ、冬雅・・・急には

やめてくれないか。

心臓に悪いというのか・・・」


咀嚼し嚥下した冬雅。目を

忙しくなるほど、恥ずかしかったと分かる表情になっていた。


「えっへへへ、お兄ちゃんを

ドキドキさせました。

幸せですねぇ」


それで、同意できるわけがなく

俺はスルーするしかなかった。

俺と冬雅と刺激が強かった朝食を済ませてお弁当を渡した。


「愛夫弁当ありがとうございますお兄ちゃん!」


「あいふ弁当って・・・いや

違うから普通のお弁当!」


玄関に歩きながら、否定を続けるのだけど「照れなくてもいいんですよお兄ちゃん!」っと

聞いてくれない。


「それじゃあ・・・お兄ちゃん

悲しいですけど、行きます。

わたしは、お兄ちゃんが作る

夕食のために必ず帰ってきます」


靴を履き終え、振り返り

いつもの言葉を言う。


「いつものツッコミを言うが、

死地に赴く兵士か!

はい、学業を頑張ってね」


「はっ!必ずや完遂してみせますお兄ちゃん大佐」


敬礼して、最後に満面な笑みして

冬雅は、ドアを開け手を振る。

俺も手を振って応える。

名残、惜しそうにドアを閉めた。

朝から疲れた・・・

今日はとくに。


「よし、小説を書こう」


今日も執筆していく。

モデルが、俺と冬雅、真奈の小説を進めようとしてキーボードの

打鍵音がずっと鳴り響く。

ここまで、順調にキーボードを

叩いたことがない。

冬雅をモデルにしたキャラに

抱く感情とそのキャラが隠している想いを行動してセリフを言うまで止まることなく書く。


「・・・俺は、何を知っているの

だろうか。ここまで想っていたのか?」


主人公のモデルが俺なので、

鏡を見ているような感覚になる。

モデルにした冬雅とデートして

一緒に笑い、家でも楽しく

笑い初恋のように初々しく・・・

そこまで見て閉じる。

やめよう、冬雅の顔が見れなく

なる気がした。

そんなことを考えていると

朝も聴いたインターホンが響く。


「うわぁー!?・・・冬雅?」


窓には夕日が射している。

今日は、塾がなくこっちに向かったのか。・・・冬雅が来ていると思うと緊張する。

いや、妹のような女の子に

何を考えているんだ!

とりあえず、迷いようなものを

振り払い玄関を開ける。


冬雅と真奈。11月の寒さに外套と

スカートに長いソックス。

下は寒くないのか心配になる。


「お、お兄ちゃん!!」


冬雅の悲痛な声。両手を掴み

見上げる。ダンスかな?と何故か

そう思ってしまう。

目に潤って冬雅が苦しんでいると

すぐに理解。


「冬雅なにかあったかい?」


傷ついたのは間違いない。

なら、俺がするのは優しく声を掛けて解決するため考える。


「わたし・・・お兄ちゃんに

明日と明後日も会えなくなり

ました」


「会えないのか・・・」


「うん・・・お兄ちゃんに

会えないんです。

どうして・・・今になって

決まったのか。わたし、

悲しいです。離れたくないです」


「冬雅・・・」


俯き悲壮感が漂っている冬雅に

どう言葉を掛ければいいのか。


「うーん、とりあえず中に

入りましょうお兄さんに冬雅」


真奈に促されリビングに入る。

リビングテーブルに座る。

向かいに冬雅その横に真奈。


「真奈これは?なにが・・・」


「えーと、修学旅行です」


真奈は、頬を掻き答える。


「それが、冬雅を苦しませて

・・・・・ん、修学旅行??」


修学旅行って、あの修学旅行か。


「はい。冬雅は世界が終わった

ような表情でしたよ」


「でも、どうしてこんなに

落ち込んで?修学旅行なら真奈達と楽しめるんじゃあ?」


真奈は、呆れの成分を含まれた

ため息をこぼす。

な、なぜ呆れているのですか!?


「お、お兄ちゃん!?

どうして、分からないのですか

・・・2日間も会えないんです。

挨拶だって一緒に食事やテレビを観るのも・・・・・

神は死んだぁぁぁ!!」


冬雅は、乱心してしまった。

朝は天使と見えてしまうほど

明るかったのに、

今はあらゆる希望を失ったような

表情をしている。

こんな冬雅は、初めて見た。


「お兄さん・・・すごい

愛されていますよねぇ。

ワタシも寂しいですけど・・・」


「俺だって、真奈と冬雅が

2日間もいないのは寂しい・・・コホン。えぇーと少しだけ」


本音が漏れそうになり

取り繕うことに失敗。

これ、ツンデレみたいだ!?


「だ、だからお兄ちゃん」


冬雅は、おもむろに顔を

上げる。愛おしい相手に今生こんじょうのお別れでも

するような面持ちで。

あまりにも美しくドキッと

動悸が速まる感覚。


「冬雅・・・元気を出して

くれないと、なんだか辛いよ」


「・・・ わたし決めました。

今日はお兄ちゃんと一緒に

寝ます!」


突拍子もなく、とんでもない

言葉をするのだった。

・・・冬雅さん自棄やけになって

いませんか?


「じゃあ・・・ワ、ワタシも

お兄さんと一緒に・・・・・・」


真奈さんもですか!?

ラブコメのヒロインみたいに

勇気を振り絞り、答えを

チラッと見ては、逸す真奈。


「・・・・・だめです!」


俺は無理だろうなぁと思いながら

一応、抵抗をする。

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