第98話デッド・オア・デス

はは、お兄ちゃんにふられた。

世界は愛と平和ラブ・アンド・ピースって言うけどそんなの真っ赤な嘘だ。どれだけ真っ赤と言うとトマトジュースのよう。


デッドオアライブなんて無い。

生か死ではなく、死と死―――

デッド・オア・デス。

恋は、苦しい思いでいっぱいさせ引き時や諦めることしない。

いや、できない。

失恋しても不器用に下手に真っ直ぐ想いを込めて告白して来た。


「・・・お兄ちゃん大好きだって

嘘がない本当の告白したんだよ」


一人、朝に吹く風をベランダで

浴びながらお兄ちゃんがベッドに

穏やかな寝顔を見る。

午前4半に目覚めて眠たい。

けど、眠れない。ハロウィンパーティーの余韻が・・・

ううん、原因は告白。


(最初の告白を断れてから、

わたしは泣いた。あそこまで泣いたのって小学生くらいかな?それから、愛を込めて告白が出来なくなっていた。わたしは、その時に名案を・・・ううん、無謀な毎日の告白を課題として実行した。

お兄ちゃんを惚れさせるために)


告白されたお兄ちゃんは、わたしが好きだって記憶にある。


やりやすかった、知っているなら

告白を何度でもする。

無意識に本当の想いを込めずの

愛の言葉にドキッと反応も

あった。


「そう考えれば、前よりも前進したかな?・・・ううん、絶対に

そうなんだ。じゃなければ

お兄ちゃんが恥ずかしくなる

なんて無いから!」


パーティでの高揚感が、思い切った行動を起こし秘めていた想いを出せた。

告白できた嬉しさで何度もして。

二度もふられた苦痛は、わたしの

告白に大きな障害となる。


「それでも諦めないから。

お兄ちゃんが、誰かと付き合うまで告白します。

わたしが大好きなのはお兄ちゃんだけだから!!」


唯一無二の想い人。

年の差は、10で大人と高校生。

恋が成就するか、実はわたしも不安で震えてしまうほどだけど。


「大好きな東洋お兄ちゃんを

・・・想い気持ちが

あふれるから」


わたしは、ベランダから洗顔所に

降りてキレイに整える。

地味な動物パジャマから、

制服を袖に通しお兄ちゃんが目覚めるまで部屋で勉強の

復習をする。


板書したノートではなく、テストなどで間違った所を徹底的に

調べた分からないノート。

ほとんど頭に入れたら

ノンフィクション小説を読む。


「冬雅おはよう!聞こえるか?」


(お兄ちゃんの声?いつの間にか

こんな時間に?)


視線を窓に移すと、お兄ちゃんが

手を軽く振っている。

先に挨拶された事に、イラッと

した。わたしに。いつもなら

最初は、わたしが心に決めていたのに。でも、お兄ちゃんが

先に挨拶は刺激的でいいですけどねぇ!


guten、morgenグーテン・モルゲン

お兄ちゃん!」


ベランダに飛び出し挨拶する。


「グーテンモルデン?」


「グーテンモルゲンですよお兄ちゃん。ドイツ語の挨拶なんだよ」


「へぇー、そうなのか。

頭がいいね冬雅は」


「ふえぇ!?そ、そんなこと

ないよお兄ちゃん」


よく称賛される言葉だけど、

お兄ちゃんに言われると心が激しくなる。大好きな人に言われると

なんだか恥ずかしい。

恋すると、知らないことばかり。


「冬雅・・・その今週の土曜日に真奈と一緒に出掛けないか?」


「えっ?お兄ちゃんから!?」


「いや、確かに私は引きこもり

体質だけど、小説のリアルな描写

ほしいからなんだ」


少し早口のお兄ちゃん。うーん、

どうして誘ったのか仮設さえも立てられないけどお兄ちゃんが

そんな事を言うなんて・・・

前向きになったんだねぇ。っと

嬉しくなる。


「お兄ちゃん絶対に行きましょうねぇ!最高のデートを楽しみにしていますので!」


ふられてから、変な空気になると

心配していましたが

いつもの朝・・・いえ、お兄ちゃんと土曜にデート約束しました。


「おはよう冬雅!」


「おはようございます冬雅さん」


わたしは、通学路で一人お兄ちゃんの事で妄想していましたが

昇降口で真奈と茜が挨拶して

きた。


「グーテンモルゲン!」


「いや、冬雅どうしてドイツ語なのよ!?まぁいいんだけどねぇ」


さすがに全学年学力トップレベルの真奈にはすぐに分かって

しまった。


「そんなことよりも、真奈。

聞いて驚かないでくださいねぇ。

あっ、耳を近づけて」


「昨日あんなことあったのに、

スゴイ元気だね。

お兄ちゃんと仲良くなった?」


「はい!今日もお弁当も

作ってもらいまして、えへへ。

いや、そんなことよりもです!」


真奈は、微笑ましそうに聞いてくれている。なに?っと耳を近づき

わたしは例のデートを言います。


「そ、そうなの・・・へぇー、

珍しいことがあるのねぇ。

土曜はひょうでも

降るのかな?」


やっぱり、驚きますよね。

お兄ちゃんが出掛けの誘いなんて

真奈はそう余裕な言葉とは裏腹に

表情は明るい笑み。


「ふふ、真奈さん。もしかして

冬雅のお兄さんとデートの約束

ですか?」


聞こえないよう悟られないよう

気をつけたのに茜はすぐに答えを

辿たどり着いたようです。


「ど、どうして聞こえているのよ!あぁ、違う。違うから

決してデートじゃない!!」


「大丈夫ですよ真奈さん。

二人のことは秘密にしますので

存分に楽しんでね」


「どうして、茜はこう・・・

いつも話を聞いてくれないのよ」


「あ、あはは・・・」


「そこ!苦笑いはやめろぉぉ」


あかねは思春期の女の子らしく興味津々に妄想を膨らませ真奈を応援する。変わらぬ光景に苦笑していると真奈に指を突きつけられ叱責される。

話題転換に成功して一緒に廊下を歩き教室に向かうと、

ショートヘアーの黒髪を肩まで

切り揃えた女の子が笑顔でわたし

達の前に止まる?


「お、おはようございます

真奈様!」


「「真奈様?・・・」」


「お、おはよう羽柴さん」


引きつった笑顔で挨拶を返す

真奈様―――もとい真奈。

羽柴さんで思い出しました!

文化祭で一緒にメイド姿で接客したことがあります。典型的な

リア充な彼女は、メイドを知らず

右往左往していましたが

頑張ってくれました。


「真奈様が、私の名前を・・・

感激でヤバみでかわみ過ぎだよ。

キャーーー!!」


「・・・あ、あの羽柴さん。

落ち着いて目立っているから」


周囲の引いていく表情に真奈は

気にし始める。

欲望のままに動いて暴走していく

姿は、まさしく意馬心猿いばしんえん


「は、はい。すみません・・・」


分かりやすいほど、落ち込む

羽柴さん。


「羽柴さん良かったら教室に

入って話をしない?」


困っていると見捨てない真奈は

優しく声を掛ける。


「は、はい喜んで!!

えっへへへ♪」


(あっ!これ好きになっている顔)


隣の茜はキラキラとした目で

動向を見守るスタンス。

羽柴香音はしばかのんは、同じクラス。そして上位

スクールカーストに

所属している。


「四人とも、おはよう。

それにしても珍しい

組み合わせだね?」


スボーツもできるイケメン

岡山牛鬼おかやまぎゅうきは爽やかな笑みを浮かべ挨拶する。ちなみに、わたしに告白してから諦めていない節がある。

その気持ちすごく分かる。


「「「おはよう」」」


「・・・チッ、邪魔が来た」


わたしと真奈と茜は挨拶するが、

羽柴さんがそんな言葉を吐いた。


「か、かのん・・・今日は

体調が悪いのかい?」


「体調が悪い。だから寄るな

来るなせろ!」


「「「ひどい!?」」」


あまりにも暴言に茜と岡山くんで声がキレイにハモる。

わ、忘れていた・・・あの人は

闇が深かったのを。


「うぇーい!どうしたよ

牛鬼?固まって」


チャラそうな男の子は、岡山くんのスクールカーストでいつも

騒ぐ人―――もとい賑やかな人。


「ああ・・・宣彦のぶひこか。いや、何もないんだ

気にするな」


「んぅーやぁ!気になるしょ、

普通によ。そんだろなぁ」


後ろに振り返り同意を求める

宣彦さん(暫定的な呼び)。

ショートヘアー女の子の

田中邦絵たなかくにえ


「そうね・・・」


あれ、わたしを見ている?


「それなぁ!」


大声で賛同するのは、前の人よりもイケメンだけどすごくチャラそうな印象がある。


「へへ、楽しいちょ!うぇーい」


宣彦さんは、少踊りする。

比喩ではなく本当にしている。


「また、五月蝿うるさ

連中が・・・不運だ」


忌々しそうにする羽柴さん。

さすがに、リア充さんも羽柴さんの放つ雰囲気に息を呑む。

お兄ちゃん今日もカオスです。

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