第97話ハロウィン・スクワッシュ終

「これは・・・すごいなぁ!」


案内された冬雅のリビングには

ハロウィンイベントに

飾られていた。


窓から中を伺った時よりも

心に感じるものは違う。

所々に置かれている

カボチャランタンの灯りは幻想的で緑、青、橙色と様々な色で

リビングの空間を彩る。


「うん。お兄ちゃんが喜ぶと

わたしも嬉しくなります。

ですけど、驚くには・・・

まだ、早い!」


冬雅は、右の手をどうぞと

向ける先にはダイニングテーブル

にケーキやらジュースなど

置かれていた。すみにカボチャランタンが置かれシーリングライトつけなくてもいいように計算されているのが窺える。


「本当に本格的だ!?

ハロウィンパーティーって

もう少し素人が準備した部分が見えるのに二人だけで大変じゃなかったか?」


真奈は、うーんと唸り疑問を

答えため思考する。


「別に、ワタシは何も。

冬雅が気合を入れていたから

何かお礼した方がいいよ」


「わぁー!またそんなこと。

お兄ちゃん細かい事やカボチャランタンをあの数や配置を案と

作ったの真奈なんだよ。

なので労を報いるために

せめて頭をなでてくださいねぇ」


真奈が、苦労していないとセリフに状況をほとんど突っ込みをする

冬雅。真奈はみるみる顔を赤くなっていく。


「せ、せっかくお兄さんに

好感度を上げるようにしたのに

別に言わなくてもいいのに」


「何度も言うけど真奈は

自己犠牲みたいなことがある。

押し付けはやめようよ」


真奈は冬雅のために、

冬雅は真奈のために・・・美しい友情だけど、このままだと

ケンカに発展しそうだ。


「そこまでだよ二人とも。

俺のためサプライズを頼む」


サプライズを受ける身から

促すのもおかしなことだけど

二人は頷いてくれた。

冬雅は、テーブル上のタンブラー

グラスの黒い液体・・・コーラ。


「立食パーティー風にイスは

ないので、そのつもりで。

はいビールは未成年なので用意は

出来ませんでしたけど」


グラスを受け取り、真奈は繋いだ手を離した。改めてテーブルに

並べている料理の数々に

圧巻させられる。


「さあ、お兄ちゃん。わたし達の

パーティをしよう!」


並べた料理を盛り付けた皿を持ち

箸で口に運ぶ―――美味だった。

他にもカボチャ煮物や焼き飯が

あってどれも美味しく絶品だ。


「お兄ちゃん味はどうですか?」


「美味しい・・・俺よりも

上手く出来ていると思うよ」


口に広がる肉汁のハンバーグ。

彼は外で出すよりも中で隠れているときが美味しい・・・って

ハンバーグを擬人化みたいに

語ってしまった。それだけ

俺は、はしゃいでいるかもしれない。それが俺のためだと。


「えへへ、やったね真奈。

試行錯誤の料理だから、絶対に

美味しいって言ったでしょ」


「そうだね。それで冬雅、

ワタシが作ったの言わないって

何度も言った気がするのだけど」


半眼になる真奈に冬雅は、

別方向に向きコーラの入ったグラスを飲む。


「これを真奈が作ったのか、

相変わらずハイスペックだね」


「は、はい。ワタシも冬雅の

迸る気持ちに感化されて

多く作って・・・あはは」


オバケ衣装の真奈は、手を頭を掻こうとしたが手が長い袖で隠され

スリスリと見える。


「そう言うけど、1時間とか

できる量じゃないと思うよ。

これだけの量を見れば」


「ほ、本当に大したことじゃ―」


「そんなことないよ。真奈は

すごいじゃないか!」


「あ、ありがとう」


料理を堪能し、二人と共通の話題や今季のアニメなど盛り上がっていく。冬雅はテレビのリモコンを

操作して録画していたアメリカの

ヒーロー映画を再生。


2年前に上映した

ドクター・ストレンジ。

世界観や迫力のある戦闘シーンなどファンタジー好きには堪らない作品・・・もちろん、そうでも

ない人でも十二分に楽しめる。


「お兄ちゃんこの作品で

よかったですか?」


冬雅はニコニコと訊ねる。


「うん。一度しか見ていないけど、いつか見直そうと思っていたからパーティーで見れると

一興があっていい!」


「そうだよね。ワタシも

何度も見ても飽きない!」


隣に立つ真奈は興奮気味に頷いた。 何度も見たって、勉強や

料理とゲームをして時間が

どれだけあるのか驚かよりも

呆れてしまう。


「わたしは、初めて見ますけど

少し孤立感を感じますね。

けど、お兄ちゃんと観れるのが

嬉しいですよ!わたし」


冬雅は、僅かな恥じらいを頬に

表れているのに満面な笑みで

俺の目を一寸も逸らさずに言う。

しどろもどろになる気持ちに

いつもされるので対処方は

下手にあせらずにする。


「そうだね」


短くいつもの返事に冬雅は、

絶句した・・・変なことを

言ったかな?と、おどおど。

真奈は、呆れたような諦観な眼差しを向けていた。どこか諦めた

ような目だった。


「お兄ちゃん大好き!」


「冬雅?えーと、ありがとう」


そういえば、今日は告白していなかったなぁ。どうして、この

タイミングか疑問だけど。


「お兄ちゃん大好きです!」


うつむいていた顔から見上げ

目が合う。前よりも鼓動が上昇していることに感じる。


「わたしは、お兄ちゃんが・・・だ、大好きなんです・・・・・」


「ふ、冬雅・・・ありがとう」


涙目で、耳まで赤くなってまでも

目はずっと見つめていた。

いつもの告白じゃない。


「言えた・・・言えなかった。

本当の気持ちを込めた大好きを」


(本当の気持ち?)


「冬雅・・・」


真奈は、慈しむ表情で親友を

見ていた。俺には知らない

何かが吹っ切れたように思う。


「大好き、大好き!大好き!!」


冬雅の恋い焦がれる強い感情は

止まらない。


「お兄ちゃん・・・いえ、

山脇東洋やまわきとうようさん。最初の頃よりも大好きに

なっています。

わたしと・・・付き合って

ください!」


冬雅の強い決意による言葉と目に

並大抵の覚悟じゃない。

真剣な表情で目から頬に伝う涙。

冬雅の誠意に俺は、最初の返事よりも喉から出ているのに出せない

・・・しばらく口を開閉したが

ようやく言葉を発せる。


「ごめん・・・付き合えないよ」


冬雅の告白から約2時間後。


「冬雅、泣いていたねぇ」


「そうだね・・・」


真奈を家の付近まで送りに

二人で夜の道を歩く。

こんな資格はないけど、冬雅が

泣いて心の底で引裂かれたような

激痛を感じた。


「後片付けと言っていたけど

俺が・・・」


「お兄さんは、間違っていないよ。嘘をついて付き合うことするのお兄さん?」


「・・・そうだね」


真奈の言うことは、解るけど

他にもあったのでは常に考えで巡らしていく。勇気を振り絞った

強い想いの少女の告白に、

雑にすることは許されない。

真剣な想いに俺も真剣に

応えた。


「冬雅は、すぐに立ち直りますよお兄さん。だから、そこまで

攻めないで」


「真奈・・・」


温もりを感じる右手。

手を繋いで励まされて・・・

もうそんな弱い自分にならない

ようにしないと。


「ありがとう。それと冬雅に

ハロウィンパーティ人生で

最高に楽しめたって伝えて

ほしい」


俺の言葉に真奈は、明るい笑みに

変わる。


「ふふ、お兄さんはポジティブが似合いますよ」


ハロウィンパーティーは、

少し苦く楽しい思い出に終わる。

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