第87話JKお二人はお泊りする弐

(なにか、手が温かい?)


感触からして、誰かが握っている。

柔らかい手からして女の子だろう。

その温かさは、不思議と杞人天憂きじんてんゆうな俺でも一抹の不安を感じさせない。


まぶたを開けると、

すぅーすぅーと、冬雅と真奈が

気持ち良さそうに眠っていた。


「・・・そうか、二人は泊まるって

言っていたなぁ・・・・・焦らない

俺に一抹じゃない不安を覚えるけど」


二人が床に座り顔をベッドに横向きで

寝ていることに、違和感とか驚きが

起きないことが、危機感を覚える

驚きだ。


(うわぁー、普通に考えたら

色々と危ないような、淫行しているって実感させられる。

二人、泊まる言っていたけど・・・

ここって、流石に無いから夜遅くまで看病の途中で疲労で寝た・・・

でも同時なんて可能性もあるんだな)


起きていたら片方が起こすわけだから

同時に寝た。まさか、俺の自室で

泊まると頭によぎったが無い。

いくら何でも常識的に考えれば

その可能性はないと判断する。


「・・・・・・そっと」


起こさないよう手を解こうとするが

左手を離そうとしない。

俺の左手の右に冬雅のエンジェル顔、

左では真奈の穏やかな顔。


(まぁ、トイレに行かなくても

いいか。二人とも俺の熱を心配して

いるわけだから)


少し上がっていた上半身を横になろうとして留まる。二人が、毛布をかぶらずに寝ていたからだ。

変更して、起こすことにした。


「おーい、二人とも

起きてくれないか!」


声を掛けるが反応はなかった。

冬雅の眉が微かに動いただけ。

仕方なく肩を揺するのは、セクハラにあたると考え悩んだ末に頭になでる

ことにした。


空いた右手を冬雅の煌めくほど艷やかな黒髪の上に優しく撫でる。


「冬雅、そんなところだと風邪を

ひくぞ。億劫だろうけど起きてくれ」


「んっ・・・ふぇ、お兄ちゃん。

こんな遅く起きたのですか?」


目を開いた冬雅は、視線を上げる。

覚めたようだし次は真奈だな

撫でる手を真奈に移ろうとする。


「ああ、熱なんて久しぶりだからかな?冬雅、毛布もないと

風邪をひくよ」


「は、はい・・・」


冬雅は、名残惜しそうに頭を空いた手で抑え頬を赤らめ見つめる・・・

2度も撫でないよ!?


「ほら、真奈。起きないと風邪を

ひいてしまうよ」


「・・・うーん、ママもう少し。

・・・・・え?」


目を開き顔を上に向く真奈。

視線が合い、固まりそして―――


「あっ、これ夢だ。ワタシお兄さんのお嫁さんになったから・・・ふふ」


「・・・・・真奈、毛布がないと

寒くないか?」


スゴイ言葉を聞いたが、何も聞こえなかった体で声をかけ続ける

ことにした。


「え?・・・な、なな・・・キヤアァァァーーー!!?お兄さんがいる。

そうだったよ。ワタシお泊りして

あわわ!?!?同じ部屋」


「し、深呼吸すれば落ち着くかな。

よし、今からしんこ――

ゴッホ、ゴッホ、コッホ」


「お兄ちゃん!」「お兄さん」


心配する二人は、握る手をギューと

強める。行動も心配が伝わり嬉しくあるけど、そう何度も不安そうに

させると心苦しい。


「平気だよ。二人はそう心配しなくてもいいよ。ゴホッ、コホッ」


「心配するよお兄ちゃん!!」


「苦しかったら、何でも言ってねぇ

お兄さん」


手を離し冬雅は、俺の背中をさする。

真奈も手を離しさず優しく声を

掛ける。

・・・なんだか、危篤きとく状態になった患者みたいな扱い方だ。


二人が落ち着くまで2分ぐらい経過。


「それで、お兄ちゃんがわたしを

起こしたのは風邪を移ることと

毛布もなく寝ていたから

なんですねぇ」


「冬雅・・・説明もしていないのに

よく分かったね」


「だって、逆の立場だとわたしも

そうしますから」


冬雅は、嬉しそうにサムズアップ

する。俺も親指を立てて返す。

・・・冬雅は褒められて

舞い上がっているようだ。


「分かりました。ワタシ、布団を持ってここの床で睡眠を取ります」


「ま、真奈!?どうして私の部屋」


「お兄ちゃん勝手に決めてごめんなさい。でも譲れないものが・・・

あるんです」


「冬雅、そこでカッコいいセリフを

言っても困るのだけど!?」


真夜中で、俺は二人をツッコミ

さばく。つ、疲れた・・・俺がベッドで二人は床で布団を敷くなんて

駄目に決まっている!

同じ部屋で寝ていたなんて、今後の

事を考えればお互いにデメリットしか

ないはずだ。


「わ、悪いけど今回だけは認めない。

二人は、弟の部屋が空いているから

そこで――――」


「お兄ちゃん待っててください。

ヒンドゥー神話の韋駄天いだてんように早く駆けます!」


「ちなみにお兄さん知っていました。

韋駄天ですけど、仏教に入る前は

シヴァの子供skandaスカンダという戦いの神だったのですよ。

仏教では、足が速い韋駄天の護法神になったのですよ」


真奈は、突然の豆知識が始まった。

まぁ、いきなりだと戸惑うけど俺は

個人的に好ましく思う。


「なるほど、勉強になったよ真奈」


「そ、そうですか・・・ふふ。

お兄さん退屈でしょうけど待ってて。

すぐに戻るから!」


真奈も部屋を出て布団を持ってくる

のだろう。嵐のように去ったように

部屋は静謐な空間となる。


「でも一瞬だけだよなぁ、ハァー」


ため息をこぼすと自然と頬を弛める。

予感が的中だった。真奈が出ていて

一分ぐらいで入る冬雅。敷くのは俺のベッド近く、そこだと寝返りで、落ちたら危ないと言ったが―――


「望むところです!お兄ちゃんに

布団に入ってくれても構いませんよ」


と、顔を赤くなり一線を超える危険を

恐れずに返事をした。

ベッドから俺が落ちたらケガすると

思うけど・・・・・。

真奈は、ハァハァ!と頑張って

持ってきた。枕や毛布を取りに

行き戻ると本当に3人で就寝した。

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