第63話冬雅の一日

わたし峰島冬雅みねしまふゆか仄々明ほのぼのあけの時間に

目覚めればすぐに準備に移らないといけない。


「うーん、お兄ちゃんは犬派。

そしてわたしの動物パジャマで

けっこう見ているけど

普通に反応なんかさせずに

ドキドキさせてみます!」


トイプードルやブルドッグなどの

動物パジャマでは衝撃が弱いでしょうから海外の珍しいのにします。

べドリントン・テリアです。


軽く調べて見ましたが、種類の由来はイングランドのべドリントン生まれでそう呼ばれるようになったようです。

目はつぶらで小さくかわいい上に

モフモフした毛は羊そのものに思えて

これもかわいい。

それに、頭の上に毛飾りのが生えてあるのも良いです!


「正直・・・高かったですけど

これもお兄ちゃんがわたしに好きになってほしい。そのためなら、これぐらい安いものです!」


メラメラと燃えるわたしは、着て

姿見で全身を観察・・・よし。


高いだけあって、白モフモフで

かわいいですね。・・・果たして

成否は、失敗の確率は高そうです。


お兄ちゃんは美少女だろうが美人

であろうが難攻不落なのです。


喩えるなら上田城。城主は、真田昌幸さなだまさゆきでして真田幸村の

父親になります。第2次上田城の戦いで徳川家康の息子にあたる秀忠さん

が初陣を台無しにした堅固さですね。


「でも今度こそは惚れさせてみる!

・・・できたらいいなぁ・・・・・」


成せば成るですわたし!

わたしは部屋に戻って学校で板書と

先生のトークを書いたノートを持って

ベランダにスタンバイします。


折り畳みのアウトドアチェアに座って

授業のノートを見て復習します。

早朝だけあって風は忘れたころに

吹かれ気持ちいい。


外も喧騒の前触れをカウントダウンに

思えるバイクや車の音。


穏やかです・・・それにカーテンが

開いたままで窓越しですが

お兄ちゃんの部屋を見れます。

すやすやと気持ち良さそうに

寝ている。これが、わたしだけ見て

いるのは隣の特権ですね。


「えへへ、お兄ちゃん大好きですよ」


就寝しているなら、勇気を振り絞らず

自然に言葉が出ます。

将来的にもこれで行きたい。

さて、そんな平穏を堪能していたら

お兄ちゃん目覚めました。


「お兄ちゃんおはようございます!」


最初の告白から断われて

習慣となっている挨拶は幸せでした。


「ふわぁー、冬雅おはよう」


鼓動が速くなって緊張する。

ベランダを開ける最愛の人はわたしの

姿を見て呆然となりました。


えっ、べドリントン・テリアの

動物パジャマは、変でしたか?

自信があったけど・・・うわぁぁぁ

不安しかないぃぃぃよっぉぉぉ!?


「うぅ、恥ずかしいよお兄ちゃん」


わたしは無恥蒙昧な行動に思えて

きた。遅れて恥ずかしさに堪えられず

視線をベランダの下に向ける。

人が誰も通らない静謐な場所。

わたしは、どんな言葉を言われるか

不安で・・・怖い。


「ご、ごめん。

ずっと視線を浴びさせるようなこと

してしまった。

冬雅その、白い動物パジャマが

似合って言葉を失ったんだ」


似合って・・・うん。流石に

物事を悪い方へ一方的に考えるわたし

でも理解できる。好意的で、

憂えている必要はないよね。


「・・・お兄ちゃんは、わたしの

事をかわいいと思いますか?」


「もちろん。かわいいよ」


「も、もっと具体的に!」


ワガママを言いましたけど、

嫌われていないか不安でいっぱい。

そんなことばかり、巡っている。


「冬雅は、太陽の妖精と形容できる

ほど眩しくってかわいい。

それに、行動や言葉だって

今まで聞いたことも見たことない

ほどかわいいよ!

声だって鈴を湖に転がしたら、

とあり得ない形容も何度も

思ったこともあるぐらいに

美しいすぎる!」


あわわ、もうだめです。多幸感が

頭だけではなく身体まで

いっぱいです。

な、なんとか返事しないと。


「・・・お兄ちゃん大好き!

いつかは、たくさんデートしたいよ」


わたしは、告白をしたのだと

気付いた。いつもは意識的に

してきたけど今回は考えず抱いた

想いをわたしは言ったのでした。

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