第64話冬雅の一日学校篇

「お兄ちゃん好きです!」


「ありがとう・・・た、食べない?」


「いえ、食べますよ。

でもお兄ちゃんが抵抗しても

わたしはやりますけどねぇ」


お兄ちゃんの部屋でわたしは、

あのべドリントン・テリアの

動物パジャマのままでお兄ちゃんの

向かいでわたしは嬉しくて

はしゃぎたい気持ちを抑え言います。


動物パジャマは、羊の犬みたいで

認識でいいでしょう。

さて、どうしてわたしが着ているかは

早朝でかわいいと連呼したから。


顕著な反応を示さなかった

お兄ちゃんがです。学校の制服や

カバンを持って家に上がり

今はいい雰囲気です。


「抵抗してもか・・・冬雅その

積極性が前よりも強くないか?」


「そうですね。常に日進月歩にっしんげっぽですので。お兄ちゃんのためなら・・・わたしは、

何でもできます。覚悟も・・・」


「やっぱり冬雅、深呼吸しないか。

そうすれば―――」


「落ち着く?大丈夫だよ。

平常だから、お兄ちゃん口を開けて

ください。その・・・入れますので」


わたしは、恐る恐る近づける。

手には震えている。

恐いんだ・・・わたし。


「・・・そこまで言うなら分かった。

従うよ冬雅」


「お、お兄ちゃん・・・・・

はい。受け取ってください。

わたしの想いを」


わたしは、お兄ちゃんに・・・・・

ウインナーをお箸で掴み

ゆっくり運び、

口に入れ咀嚼するお兄ちゃん。


「えへへ、どうですかお兄ちゃん?」


「いつもと変わらないとしか。

でも・・・恥ずかしいなぁ」


「です・・・ね!わたしも・・・

ですけど、やっと

口あーんがてきました。えへへ」


夢だった口あーん・・・とっても

嬉しいのはお兄ちゃんも恥ずかしかったようで同じ気持ちで嬉しい。


「それじゃ、これで終わりことで」


「あ、あの・・・あーん・・・・・」


目を閉じて口を開いて待機。

この状態をどんな意味を持つか

鋭いお兄ちゃんなら

間違わない・・・はず。


「・・・・・―――――!?」


触れたわけじゃない。

ただの口あーんに手を繋ぐことや

ハグではない・・・ですけど

ドキドキしてきるのを感じる。


なんだか、幼くなったような

弱点を晒したような

形容や感情がごちゃ混ぜごちゃ混ぜになって奔流のように襲う。


これは・・・・・

お兄ちゃんに教えてもらった千惜万綜せんさくばんそうてしょうか。

確か・・・意味は錯綜が千も万も

つくほど複雑に入り組む混乱。


「・・・・・正直、ここまで

やると申し訳ない気がする」


「い、いえ!わたしが頼んだのですから、そんなことないです!

そ、そんなことよりも嬉しかった?」


「・・・うん。楽しかったと

思っているよ」


「えへへ、一番に照れているのは

お兄ちゃんですね」


告白と口あーんにお兄ちゃんは

著しく顔の色を変えた。

取り繕うことできない顔を見ると

わたしも恥ずかしくもあって嬉しい。


お兄ちゃんもドキドキしている・・・


「お、俺は食べ終わった。

食器洗いでもするので!」


一人称が、私ではなく俺・・・

慌ててお兄ちゃんは、食器を持って

行きます。もう少し向かい合って

見つめて合いたい名残はありますが

勘弁しましょう。


わ、わたしはあと少し持ちますけど。


「お兄ちゃん照れていた!えへへ」


2階に上がってお兄ちゃんの部屋で

動物パジャマから制服に着替えます。


毎日ここでわたしが見ている部屋で、

ベッドを見るとダイブしたいとか

いかがわしいです!

どんな柔らかくふかふかなのか

頭の隅に起きましょう。


着替え終えて今日も愛妻弁当ならぬ

愛夫あいふ弁当をカバンに

入れて玄関でローファーを履く。


「お兄ちゃん。行ってきます!」


「ああ、行ってらっしゃい」


笑顔で手を振るお兄ちゃん。

わたしも振り返って手を振ります。


「・・・・・ふ、冬雅

そろそろ学校に行かないと遅れるよ」


「うぅー、離れたくない。

お兄ちゃんすぐに塾とかも

終わったらトランザムシステムで

帰りますねぇ」


最近は、ガンダムOOダブルオーを観賞したわたしにお兄ちゃんは

ああ!と顔に出てネタが分かった!

後ろ髪を引かれる思いで登校。


(えへへ、あいふ弁当。

お兄ちゃんドキドキ、

恥ずかしがっていたーーー)


わたしは、踊るような気持ちで

歩きます。今日はいつもよりも

通行、通勤に行く老若男女の

好意的な視線を感じる。

特別にオシャレはしていないけど。


疑問を答えたのは親友の真奈。

教室に入りグランドの先を一望できる

窓際の一番後ろ席に座ると

しばらくすると真奈と茜が向かい

教えてくれた。


「なるほどねぇ、東洋とうようお兄さんにドキドキか・・・」


「うん、わたしの告白やアプローチ

歴史では深く刻まれた出来事です」


真奈まなは、

お兄ちゃんの事が好き。


わたしも真奈は恋のライバル

となるのですが、奇跡的に

わたしと真奈はお兄ちゃんが

幸せなのが一番。


それが、わたしではなく親友を

選択しても恨みなどなく

歓迎してくれる。きっと、わたしも

真奈がお兄ちゃんにデートしても

そうだから。


「ふ、冬雅さんって前々から

思っていましたけどブラコンですね」


黒曜石、並みの光沢がある

ショートヘアーしたあかね

頬を引きつった笑みで言う。

ひ、引いている。

そうだった!茜には実際の兄と認識!


「で、でもお兄ちゃんにも

そろそろ他の・・・お・・・・・

女の子とけ、けけ・・・結婚・・・

すればいいのにーー!!」


「う、うん、その冬雅さん。

どうして、机に突っ伏しているの?」


「茜それは、残酷だよ」


「ま、真奈さんも!?

えっ、なにかしました?」


わるくない・・・設定が悪かったと

しか言えない。

でも、素直に言えるわけなく

淫行と呼ばれる社会ではそう

見られる。


なんとかして、堂々と付き合い

将来的にも結婚できるのは調べた。

どうやら、両親が

認めないといけない。


わたしの両親は忙殺の人生に

生きている人。会えるのも言うのだって困難すぎるでしょう。


「おはよう冬雅。

その、元気がないようだけど

大丈夫かい?」


少し憂い顔で見るのは爽やかで

定評がある学園一のイケメン(どこ情報か不明)岡山牛一おかやまぎゅういち


「はい?・・・うん、元気だよ。

心配させてごめんね岡山くん」


「い、いいんだ。その・・・

時間があれば、その放課後に体育館の

裏に来てくれないか?」


「「「おぉぉーーー!?」」」


岡山くんの席は廊下側の一番後ろ。

秋に席替えした。


その席の周囲に集まる

スクールカースト最上位に降臨する

岡山くんの友達が驚きの声。

他の人達もなんだ?告白らしい。

など人垣が出来た。


(これって、どう見ても考えても

告白。体育館の裏なんて定番・・・

真っ直ぐな岡山くんらしいけど)


好きじゃない。わたしが心に決めているのは、お兄ちゃん・・・・・

ただ一人だから!


「・・・・・」


真奈が無言でわたしを見て代わりに

ワタシが断ろうかとスマホの画面に

書かれている大きな文字を見せる。

わたしは首を横へ振り断ります。


「岡山くん。嬉しいのだけど・・・

わたしには、もう好きな人がいるの」


頬が熱い。自分から好きな人を

いると宣言みたいな言葉に。

頭に浮かぶお兄ちゃんと一緒に

いる日々を走馬灯のように

次から次へと思い出に残った脳内の

写真を刹那に

浮かんでは変わっていく。


「好きな・・・人いるのかい?」


ショックを受けている・・・

ごめんなさい。真剣なのは伝わるけど

誠意に答えるとしたら、

もうこれしか無かった。

長くただ伸ばしていくのは

ツライのだから。


「本当にごめんね。

わたしが好きな人は立派な人なの」


「・・・その人は、この学校の

人かい?」


「ううん、違うよ。場所とか・・・

他にも離れている所はあるけど、

わたしがこの人しかいない。

そう思える本当に大好きな人なの!」


わたしの恋は、かなり長引くだろう。

お兄ちゃんに告白してから

振られて無理に合うようになって

本当の返事はわたしが大人になるまで

か、唐突に終わる恐怖もある。

叶えるには難し過ぎる恋。


「・・・その人の事をそこまで

好きなんだね冬雅は」


「はい。世界一で大好き!」


最高の笑顔で、わたしは返事する。

お兄ちゃんが、大好きと言えることに

嘘や暗い気持ちなんてないから。


少女漫画の理想像とされた岡山くんは

明るく笑って諦めてくれた。


「いつかは、冬雅のような

恋愛をしてみたいよ」


渇望と羨望で岡山くんは返事した。


時刻は、正午になりホームルームの

岡山くんを振りわたしの好きな人が

広まっていた。12時にまで

広まる速度、速くないかな?

そんなわけで、わたしは友人二人と

屋上のベンチに座って食事となる。


屋上にベンチがあるのは、教諭や

校長が生徒は屋上に行く頻度値が

高いと真奈に教えてもらった。


「なんていうか、冬雅の好きな相手

で校内中が騒いでいたねぇ」


「・・・質問攻め怖かった」


真奈が、嘆息して茜は涙目。


「あ、あはは。ごめんね二人とも。

迷惑を掛けてしまって」


「それは、違うでしょう。

周りが勝手に盛り上がって冬雅は

好きな人がいるって蕩けるような

顔をしただけ」


「と、蕩けていないよ・・・たぶん」


真奈の言うとおり少し蕩けたかな?

思う節はある。


「二人とも終わり忘れたい私」


秒で忘却の彼方に追いやりたい茜の

込められた言葉。

わたしは―――


「だ、だね。忘れたい」


「さ、さてお弁当、お弁当」


真奈も話題を終わらせ昼食タイムに

入る。わたしもお兄ちゃんが作ってくれた、あいふ弁当を食べましょう。


「えへへ、なんだか今日は幸せです」

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