第107話 ショタと少年の違いとスキー場と僕の選択
スキー場に着くとバスを降り、ロッカーや食堂がある休憩所に行く。そこでスキーウェアに着替え、荷物などをロッカーに預け、今後の日程や注意事項を聞くために1度集まる。それが終わると遂に再集合の時間まで自由時間となった。ここからは生徒各々がスキーか、スノボーを選んでウィンタースポーツを楽しむこととなった。
で、もちろん僕と璃月は一緒に行動することとなる。
そんな僕たちが選んだものは――、
「見て、見て、鳴瑠くん。鳴瑠くんのお友達がいっぱいだよぉー」
すんごく無邪気に僕の思考を遮ってきた璃月。
もはや、思考を遮ることに関して、文句などでてこずに、最近ではこれがなければ物足りなさまで感じる。新たな斜め上の喜びを覚えた僕がいたりした。
そんなことを言っている彼女の視線の先に誰がいるかと言えば、楽しそうにキャッキャと遊ぶ幼稚園児たち。ようするにこの彼女・・・・、
「僕の精神年齢が幼稚園児並みだと言いたいのか、璃月のばか‼」
「え、違う。違うよ。可愛さレベルで同列にあたるからお友達だよっていう意味」
難解なことを言い始める璃月。
ようするに、彼女は同知能があるかどうかではなく、同レベルの可愛さがあるから僕のお友達になれるという意味でそう言ったらしい。ようやくしてもわかりづらい。
にしても、まだ対象が幼稚園児でよかったと密かに思う。
ここで園児たちが作るゆきだるまに対して『僕の友達』と言っていたら泣いてたまである。さすがに無機物が友達は辛い。
悲しみ覚える僕に璃月は更に言ってくる。
「そもそも鳴瑠くん。君の精神年齢はショタでしょ‼」
「たしかに、僕の精神年齢は高校生というよりは、小学生だと思うの。だけど、璃月は知らないと思うけどね、フォローしてる体でそう言われるほうが心にくるんだよ」
「いやいや、ショタであることは誇ることでしょ、可愛いし?」
「でた・・・・・ショタコン」
「ショタコンじゃないっていうか、鳴瑠くん以外のショタに興味ないから‼」
それはショタコンじゃないという否定になっているかな。
何より、僕は正確にはショタじゃないから。
また、普通のショタコンよりも、彼氏にショタを見出す方が闇というか変態度が高い気がするのは僕だけだろうか。たぶん、僕だけじゃないはず。
とはいえ、幼児扱いされてない点に関してはよかった。
さすがの変態度を誇っていると自負する僕でも、幼児扱いをされて喜ぶほど人として成熟できてはいないのだ。幼児扱いされて喜ぶのが成熟しているのかは謎だけど。
あ、でもね、弟扱いされるのは好きぃー。
璃月がお姉ちゃんぶるの可愛いし、妙に甘えたくなってしまうのだ。たぶんね、弟のサガってやつだね(全弟への風評被害)。実の姉にやるのは絶対に無理だが。
「そうそう、1つね、勘違いしちゃだめなことがあるの」
「え、何、急に」
「いいかな、鳴瑠くん」
言って人差し指を立てる璃月。
そんな彼女はお姉ちゃんが弟に言い聞かせるような口調で語りかけてきた。
「小さい子が全てショタになるわけじゃないの。そこは勘違いしちゃダメなの」
「え、あ、うん」
「幼児とショタは別ものだからね。更に言うと、ショタと少年も違うからね。後者は特に間違いやすいから注意が必要。これね、この手の業界で間違えると炎上まったなしだからね。ちなみに、私もショタの部類を間違えられるとイラっとするからね。もしも間違えたのが鳴瑠くんでも怒っちゃうからね。気をつけるように、わかったかな」
僕は一体何をショタコン彼女に言われているのだろうか。
だが、僕は彼女の趣味がわからないからと言って、全てを諦めてしまうような彼氏ではない。ちゃんと理解できるように、相手によりそうことができる彼氏なのだ。
と、いうわけで考えてみる。
自分の趣味思考に照らし合わせるのがいいのかも。
ショタと少年。
似てるようで非なるもの。
それが僕にとって何なのか・・・・あ、1つあるじゃん‼
たぶん、僕にとっての弟扱い、幼児扱いのような違いがあるのだと思う。
それならよくわかる。
僕的には璃月をお姉ちゃん扱いするのはセーフで、アリである。何より「璃月お姉ちゃん」と呼んで甘えながらえっちなことするの大好き。もちろん、実の姉にするのは無理だけど、璃月にならいい。むしろ、大好きなプレイの1つだ‼
だけど、もう一方の幼児扱い・・・・ようするに、璃月をママとか言うのは無理。というか、キツイ。言葉に心理的ハードルが半端ない上に、僕的には背徳感やえっちな感情が湧いてこないまである。璃月に対してなのに、だ。それくらい違う。
なにより、『お姉ちゃん』は『ママ』とは違って近所の年上の女の人なら誰でもカテゴリーできてしまうわけで、血が繋がっていることを感じさせない点もある為に、ハードルは幾分か低いはずだ。うん、うん、わかってきた。
たしかに僕も、
――「お前、彼女をお姉ちゃん扱いしてんのかよ」
って言われても何も感じない。
むしろ誇るまである。
だが、
――「お前、彼女をママ扱いしてんのかよ」
って言われたらキレる自信があったりする。
僕はなんとなくだが、璃月の言うことを自分に置き換えて理解することができたのであった。また1つ、璃月とわかり合えてうれしい。
そんなわけで意気揚々と告げてみることにした。
「ようするに、璃月のお姉ちゃんプレイとママプレイくらい違うってことね‼」
「あ、うん、たぶんそー。すんごく努力してくれた痕跡が見られて私は嬉しいよ。鳴瑠くんのそうゆー理解しようとしてくれるとこ、大好き。てか、待て、おい。ママプレイってなんだ。さすがの私もそんなんしてないぞ」
璃月が怖くなった。
どうやら彼女もママ扱いされるのは嫌なよう。
両想いでなにより。
それはさておき、彼女に伝えなくてはならないことがある。
僕はそれを告げることにした。
「璃月にどーしても伝えたことがあるんだ」
「え、何急に改まって。もしかして、告白されるの‼」
もう告白して付き合ってるはずなんだけど。
もっと言うならば、プロポーズも何度となくしてるんだけど。
気を取り直して、こほんと咳ばらいをして、ある意味では告白をすることに。
「実はね、僕は友達がいないんだ。だから、できればいいんだけどネタでも『鳴瑠くんの友達がいるよ』とか言わないでほしいかな。泣きたくなる」
「・・・・・それはほんと、ごめん」
「僕の学校の交友関係とか、恋人の璃月とお姉ちゃんと、ルナ(男の娘時)の信者くらいなんだ。あれれ、なんで信者はいて友達がいないんだろうね、おかしいな」
「な、鳴瑠くぅん‼」
虚ろな目をしはじめる僕の名を璃月は呼ぶ。
それからぎゅっと抱きしめてきた。
「友達なんていなくても、幸せになれるんだよ?」
「うん、そうだね・・・・」
「ほら、ほらナデナデしたあげる。だから、ね。泣かないで?」
璃月の優しが染みる。
手で撫でられ、おっぱいで身体を撫でられ、全身を抱きしめられ。
スキーウェアを着ていることで、彼女の体温など僕に伝わらないはずなのに。もっと言えば、シャカシャカとウェアが擦れる音しか伝わってこないはずなのに。僕はどこまでも彼女の温かさを心に感じられた。あー、璃月、温かい。
そして、気づく。
知っていたはずなのに再認識することができた。
「僕には、璃月がいるじゃん・・・・璃月がいるじゃん‼」
「うん、そーだよ。私がいるよ。ずーっと一緒にいたあげるよ」
「ありがと。僕、友達いなくてもいいや、璃月だけでいいや、えへへー」
「うん、うん、そうだね。私はそう言ってもらえてうれしいよ」
「それに友達できると、人間強度が下がるって聞くしいなくても平気」
「それはよくわかんない」
「ついでに信者もいらない。追いかけ回されるし」
「それはほんとに、そー」
こうして僕は復活。
元気になったのであった。
ここまでかなり遠回りをしてしまったが、今はスキー・スノボー教室という学校行事の真っ最中である。折角のスキー場で何をやってんだって話だよ。
というわけで、僕たちが何をやるかで話が止まっていたはずなので、ようやく発表しようと思う。僕たちがやるのは――、
「よーし、元気が出たところで、雪遊びしよ」
「いえーい、するするぅー」
――雪遊び。
スキーでもスノボーでもない、第3の選択肢だった。
雪遊びというのは先生たちの選択肢にはもちろんないのだが、僕は思うのだ。
時として自身のやりたいことに挑戦してもいいのではないか、と。
たしかにそれは、身勝手な行動で和を乱すことに繋がるかもしれないし、文句を言う者、最悪は炎上する可能性だってあるかもしれない。
けれども、僕たちは学生。
出された選択肢に従うだけでなく、新たな道を作り成功と失敗をすることも学習の1つではないだろうか。また、そうやって新たな選択肢を作った者たちが、新たな時代を創りあげてきたのだと思う。
だからこそ、僕はスキーでもなく、スノボーでもない新たな選択肢である雪遊びを作りだしたのだ。もちろん、やりたいことがあるから。
え、雪遊びでやりたいことって何なのかって?
それはね、もちろん、決まってる。
「よーし、璃月とのマイホームをかまくらで作っちゃうぞ‼」
「いえーい」
こうして僕と璃月のかまくら作りが始まりを迎えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます