第98話 クリスマスイブがまったく関係ないプールデート

 今日はクリスマスイブ。

 そんな日のデートに僕と璃月が選んだ場所は冬でも入れる室内プール。

 やって来た僕たちは、更衣室前で一端、分れることに。

 本当は一緒に着替えて、璃月のお着替えシーンを見たり、僕のお着替えシーンを見て璃月を興奮させたかった。また、あわよくばお着替えしてもらいたかったし、逆に璃月をお着替えさせたかったのだが、社会がそれを許してはくれない。

 久々に思い出したよ、僕。

 着替えって基本的には男女でバラバラにするんだったね。

 璃月と一緒にいるときは何でも一緒にやるので、逆に新鮮に感じてしまう。

 学校で着替えるときとかも、隠れて一緒に着替えるし、完全に失念していた。

 はぁー、もう無理。辛いわー。

 璃月と着替えたい。着替えさせてもらいたいよー。

 こんなことなら、家で着替えさせてもらってから来ればよかった・・・・。

 その場合、高確率でパンツを忘れる自信あるけど。

 適当なことを考え、璃月と一緒じゃないことを意識の外にやり寂しさを遠ざける。そうしているうちに、いつの間にか洋服から水着へ着替えが終わっていた。

 にしても、冬に水着を着るのは、なんとも不思議な感じがする。

 冬って厚着はすれど、脱ぐことってほぼないわけじゃん。

 そのために、新鮮というか、違和感というか、そらを感じてしまう。

 あ、でも、この間、冬なのに全裸で璃月と追いかけっこしたっけ。たいして服を脱ぐことに新鮮味も違和感も感じなくなってきた僕がいた。

 それはさておき。

 プールも久々にきた気がする。

 僕たちの通う双ヶ丘十海里高校にはプールがない。

 そのため、プール自体は、中学生以来になるのかな?

 あ、でも、今年の夏にお姉ちゃんと庭にビニールプールを敷いて遊んだっけ。だからそれがノーカンならの話だけど。とりあえず、それはノーカンにしとく。

 で、更衣室からプールサイドへの道を歩き終わる。

 ここはお姉ちゃんと昔、来たことがある場所。

 そのため、少しばかり懐かしさがあり、昔を懐かしむように周りを見渡す。

 この室内プールには、25メートルのプールはもちろんのこと、水深の浅い子ども用プールやら、うねうねとした川のような流れるプール、洞窟を模様したようなくるぶし丈しか水深がないよくわかんないプール、スライダーやら噴水、果ては温泉まで、様々なものが用意されている施設になっていた。

 また、クリスマス仕様の為なのか、クリスマスツリーが置いてあったり、トナカイの浮き輪やら雪だるまの浮き輪がプールに浮かんでいたりする。あと気になるところと言えば、標準装備されているであろうプールサイドのヤシの木には雪を模様したであろう白い綿が付いており、季節感を狂わされ違和感がヒドイ。

 混沌を極めるこのプールだが、冬の為か人は少なかった。 

 これなら璃月の水着を他人に見られる心配をしなくてすむし、マンガやらアニメやらに出てくるナンパをしてくる人たちもいないだろう。

 存分に璃月と楽しめそうで、すごく安心できた。

 そんなわけで、心配すべきは、ポロリくらい。

 璃月のポロリは見たいけど、こういう場ではなく、2人きりの時がいいし。なにより、璃月が僕のポロリを狙ってくる可能性も無きにしも非ず。故に、璃月からのフレンドリーファイアならぬ、ラバーズファイアにも気をつけなきゃだね。

 ま、脱がされるのも悪くないけど・・・・(ぽしょり)。

 本音をこぼし待っていると、璃月が女性用更衣室からやってくるのが見えてきた。そんな彼女の恰好は上下ともに青色を基調とした水着。ビキニの谷間当たりからはフレアフリルが付いていて可愛く、パンツには本体とは別に黒い紐がウェスト部分にありとてもえっちな仕上がりになっていた。ちなみに、夏に着ていたものと同じもの。この僕が璃月の姿を忘れるわけがないので、遠くからでもそれはわかる。

 とはいえ、昔見ているからと言って見飽きたなんてことはない。

 そもそも璃月の恰好で見飽きるなどという概念は存在しないのだ。なので裸を見ても何度でも興奮しちゃうし、今回の水着だって新鮮な気持ちでみることができる。

 故に僕は――、

 きちゃぁぁぁぁぁぁぁ、りちゅききたぁぁぁ‼

 りちゅきのみじゅぎしゅがただぁァぁァぁ‼

 えっちぃぃぃぃぃぃぃ‼

 ビキニのふれあふりるを捲って、居酒屋のノレンのように入店したいぃぃぃ‼

 ――興奮しっぱなしだった。

 もはや、限界オタクというか、信者というか。

 たぶん、この勢いだとプールで遊ぶことなく体力が尽いて寝てしまうだろう。

 出来る限りそれは避けたい。

 ぐっと我慢だ、僕。

 深呼吸をしてみる。

 すーはー、すーはー。

 う、うぅぅ、抱きしめさしぇてぇぇぇ‼

 落ち着ける気配は一切なかった。

 興奮しっぱなしの僕を見つけた様子の璃月は小さく手を振ってくる。もちろん僕はそれに対して、肩が外れんばかりに手を振り答える。

 ぶんぶん手を振る僕を見てコロコロ笑う璃月。

 そんな彼女は「はっ」とした顔をするといきなり歩みを早めて僕に歩み寄ると、


「こら、だめでしょ、鳴瑠くん‼」

「にゃ、あ、ぅ、ん」


 いきなり怒ったかと思うと、僕の胸を――正確に言えば僕の乳首を両手で隠し始める璃月。僕は敏感なとこに触られ、不覚にも気持ちよくなり、変な声を出しながらビクリと身体を震わせてしまった。

 これは仕方がないことなの。

 璃月に敏感なところを触られたら、気持ちよくなるのは当然なことなんだもん。

 と、誰に言い分けしているのかわからないけど、そんなことを思う。

 僕はえっちな声を出さないよう、気持ちいいのを我慢しながら訊ねることにした。


「なんで、璃月は僕にえっちなことしてくるの?」

「えっちなことしてない」

「でも璃月、僕の乳首触ってるよ?」

「これはね、鳴瑠くんが悪いの。だって、鳴瑠くん、可愛いい男の娘なのに丸出しにしてるから。可愛いい子が乳首出してたらいけないんだから」


 え、そうなの?

 僕の知らない法律がここにはあった。


「おまわりさんに連れてかれちゃうんだから。もちろん、人間のだよ。犬のおまわりさんじゃないからね」


 別にそこは心配していないというか、さすがの僕も犬のおまわりさんがやってくるなんて1ミリも思ってない。流石に子ども扱いし過ぎだよ。

 思う僕に、璃月は「ちょっと自分で抑えてて」なんて言う。

 もちろん、僕は彼女の言葉に従い、自身の乳首を抑えてみる。

 そして、思う。

 この状況の方が犯罪臭しない?

 というより、恥かしいし、先に璃月の水着を褒めさせてほしいんだけど・・・・。


「どこだろ」

「何してるの?」

「探しもの」


 言いながら璃月は自身の胸の谷間をごそごそする。

 ヤバい、めっちゃえっちぃ‼

 おっといけない。こんな公衆の面前で興奮しちゃいけない。

 教科書には書いてないけど、それはいけないことだと思うの。

 そんなわけで、少しでも興奮が下がるような言い方に変えてみることにした。

 璃月は四次元が広がっていそうなポケットを探るように、自身の胸の谷間に手を入れると何やらごそごそと何かを探し始めた。

 ・・・・くっ、ダメだぁ。

 前提条件に胸の谷間があって、どうにもなんない。

 えへへ、えっち、僕もそこに手いれたい。自分の乳首を抑える使命さえなければ、入れていたことだろう。く、璃月に逆らえない僕が情けないよぉー。

 どう頑張ってもえっちにしかならないようなので、諦めて興奮しつつその様子を目に焼き付けることにした僕だった。で、璃月は「あった‼」と可愛く呟き喜ぶ。


「何を探してたの?」

「これだよ」


 璃月が谷間から出したのは絆創膏が2枚。

 えっと、誰かケガしたかな?

 キョトンとした顔を向けると璃月は可愛い笑顔。

 そんな彼女は。


「私以外に見られないように、片手ずつはなして」

「あ、うん」


 指示に従い、僕はまず右手を右乳首から放す。

 で、璃月は「ぺったんこ」と、そこに絆創膏を貼った。


「・・・・」

「はい、次」

「・・・・」


 左手を左乳首から放す。

 で、そこに先ほど同様「ぺったんこ」と絆創膏を貼る。

 これで僕の両乳首は絆創膏が貼られ誰にも見られることはなくなった。

 そんな様子をみてか「むふー」と満足気に息を吐く璃月。


「かんぺきぃー」

「何がかな!?」

「はえ?」


 何を言われたのかわからない様子の璃月が、間抜けな顔でめっちゃ可愛い。

 手元にスマホがなくて撮れないのが悔しい‼

 それもあるけど、


「どーして僕は両乳首に絆創膏を貼られたのかな!?」

「鳴瑠くん。男の娘が乳首をそう軽々しく人に見せるもんじゃありません」

「はしたないことをしちゃった女の子に言う風に言わないでよ」


 そもそも僕の乳首に需要があるのは璃月だけかと。

 規制とか入らなそうだし。


「それでも、鳴瑠くんが乳首を見せていいのは私だけなの」

「・・・・璃月」


 そっぽを向きながら独占欲強めに言う璃月。

 うん、うん、なら仕方ないかな。

 正直、乳首が見えているよりも、絆創膏を貼られて隠されてるこの状況の方がめっちゃ恥かしいけどね。彼女の頼みなら仕方ない。誰にも見せないようにしよう。

 僕は両乳首を絆創膏で隠すこのスタイルを維持することにしたのだった。

 それから水着を褒め合った僕たちは、25メートルプールの比較的水深が浅いところを選んで水の中に。とはいえ、僕も璃月もあまり背は高くない。そのため、背伸びしてつま先立ちになると、ようやく水面から肩が出るくらいに。

 水の中のため、地上にいるときよりかは比較的に楽。

 そうはいってもいつ足がつってしまうのか恐怖が少なからずあるけれど。

 そのような状態の中、僕は璃月の名を呼んだ。


「ね、璃月」

「なにかな。お水のかけあいっこしたいの?」

「それもしたいけど違うの」

「それじゃ、何かしたことがあるの?」

「うん‼」

「なになに?」


 興味深々な璃月。

 僕の話が聞きたくて仕方がない様子だ。

 もぉー、どんだけ僕のことが好きなんだよぉー(ノロケ)。

 期待に応えて、僕のしたいことを伝える。


「水にぷかぷか浮いてる璃月のおっぱいをつっついて沈めたり浮かべたりしたい‼」

「無邪気にとってもえっちなことゆってるの」

「やりたいの」

「てかね、それさ。一緒にお風呂はいったとき、いつもやってんじゃん」


 彼女の言う通りだった。

 湯船に浸かると璃月のおっぱいはぷかぷかと湯に浮かぶ。それを僕はツンツンと指で突っついて沈めたり浮かせたりする遊びが大好きなのである。

 タイツぺっちんとどっちが好きかと言えば、断然こっちの遊びのが好き。

 だって、僕の大好きな璃月のおっぱいが触れるし。

 何より、熱いんだ(何がかは知らないけど)‼


「やってるけど、やってるけど、プールでやるのは違うの‼」

「違う・・・・の?」


 ほんとに?とばかりに疑いの眼差しを送られる。

 璃月からそのような目を向けられることなんて本当に稀。

 そのために、なかなかない経験だ。


「やりたい、やりたい、おっぱいぷかぷかつんつんしたいのぉ‼」

「・・・・そんな名前なんだね」

「璃月はや?」

「鳴瑠くんにおっぱい触られるの好きだし、嫌ではないけど。無邪気に遊ぶ鳴瑠くんが見れて楽しいし。鳴瑠くんに弄ばれてると思うと、えへへ、えっちぃ」

「・・・・璃月、でてる」

「ぽろり?」


 言いながらクルクル回りながら自分自身を見る璃月。そんな彼女の様子は、なんとなく自分の尻尾を追いかける駄犬のようで可愛かった。

 愛らしい様子を眺めつつ、僕は何がポロリしてるのか教えてあげることに。


「えっちぃ本性がぽろりしてる」

「してないもん‼」


 顔を赤らめて言いながら璃月はパシャンと水をかけてきた。

 もちろん、全身で水をかかりにゆく僕。

 それが何であれ璃月からの贈り物だ、受け取らない選択肢はない。


「あう、えへへ、璃月に水かけられちゃったぁー」

「嬉しそうだね、えい‼」

「にゃはは」

「えい、えい」


 水をかけられて喜ぶ僕を見てか、璃月はそれからもかけ続けてくれる。

 それを10分くらい続けて僕が満足すると一端落ち着く。

 で、話を戻すことにした。


「やっちゃだめ?」

「あれ、その話終わったんじゃないの」

「終わらないよ。僕、璃月も、璃月のおっぱいも大好きなの。だからしたい」

「むぅー、仕方ないなぁ。でも、鳴瑠くん以外に見られるのは嫌だから、見られないようにしてね。約束できる?」

「うん、できる‼」

「ならいーよ」

「ありがと‼」

「うん」


 恥かしそうにしながら璃月は、「お礼が言えて偉いね」なのか、喜ぶ姿が可愛かったからなのか、僕の頭を撫でてくれる。どうせならおっぱいでナデナデしてくれてもいいのになー。なんて贅沢なことを思いつつ、手を引きプールの隅っこの方へ。

 待ちに待ちかねた、おっぱいぷかぷかつんつんという今の僕がもっとも熱くなれる遊びを開始することにした。

 ルールは簡単。

 まず、人差し指を立てる。それを水の上に浮かぶ璃月の柔らかマシュマロおっぱいにつんつんとして、水に沈めてある一定のところまで沈めたら指を放す。そうすると自由になった璃月のおっぱいが面白いくらいに浮上して、最終的には水面に再びぷかぷかと浮かび漂う。それを何度か繰り返して、その様子を見るって感じ。

 すんごく単純な遊びだけど、僕はドハマりしていた。

 僕にはおっぱいがないからできないし、お姉ちゃんと一緒にお風呂に何度となく入ってきたがぺったんこだからお風呂に浮かぶさまは見れたことがない。そのため、この遊びが新鮮で、ずっと見て遊べた。

 で、僕は人差し指で璃月のおっぱいを水に沈める。

 ある一定のところで放す。

 そうすると、璃月のおっぱいが浮かび上がって、


「にゃはは、えっちぃ‼」

「キャッキャする鳴瑠く、ん、がかわ、いい」


 璃月は僕におっぱいを触られているためか、顔を赤らめ艶やかな声を出し始める。

 おっぱいの動き。

 彼女の声。

 それらが僕の遊びを加速させ、自分の意思では止められなくなってしまう。


「えい」

「ん」

「えい」

「あ、」

「えい」

「んー」

「にゃはは」

「楽しっ?」

「うん‼」

「ならよかっ――んっ♡」


 璃月はすべて言えずに、身体を大きくビクンと震わせ、今日1番のえっちな声を漏らしながら立っていられなくなったのか僕に倒れ込む。そんな彼女を受け止め抱く。

 なぜそうなったかと言えば、何度目かのおっぱいぷかぷかつんつんをしようとした僕だったが、指の狙いを外して水着に隠れているある中心部分を誤って触ってしまった為。そこは璃月のえっちくなる部分で気持ちよくなってしまったよう。


「あ、ごめ――」

「バカなる‼」


 謝りきる前に僕の胸の中にいる璃月は罵倒してくる。

 そんな彼女の体温は水の中でもわかるくらいに熱くなっており、えっちぃ声を漏らしてしまったことが恥ずかしかったよう。顔もすごく赤くなっていた。

 恥かしがっている璃月には悪いけど、熱くなっている璃月の身体はポカポカして温かい。いつまででも抱いていた気分にさせられる。


「あー、熱くなった璃月の身体、ずっと抱きしめてたい」

「どーして、鳴瑠くんは、鳴瑠くんは私を辱めたのに、呑気なことゆーの」

「というよりも璃月。よくよく考えたら、璃月もさっき、僕の乳首を触ってえっちな声をださせたわけだしお相子じゃないかな?」

「そ、そーかもだけど・・・・」


 ぶつぶつ続ける璃月。

 仕方がない。ここは僕の大好きなおっぱいぷかぷかつんつんをやめて、別のことをして璃月の気分を変えてあげることにしよう。

 そんなわけで、


「璃月はプールに来てやりたいことはないの?」

「うーん、私は・・・・」


 僕の意図を察したのか、それ以上は何も言わずに考え始める。

 答えを見つけたのか、彼女はポツリと言葉をこぼす。


「あれやりたい」

「どれ?」


 璃月が指をさす。

 その先にあるのは、スライダーかな?

 それとも洞窟みたいなプールかな?

 疑問に思いつつ、半ば楽しみにしながら璃月の指の先を見てみる。

 そこにあったのは・・・・いや、いたのは小っちゃな子とそのお父さんらしき人の2人。何をやっているかと言えば、お父さんが小っちゃな子に泳ぎ方を教えていた。

 やり方としては、お父さんが小っちゃな子の両手を掴み後退しながら引っ張る。で、小っちゃな子は引っ張られながらもバタ足したり、時折顔を水につけたりして息継ぎの練習なんかをする感じ。小さな子は水がまだ怖いようで、父親に「放さないでね‼」と念を押したりしていて、その光景は微笑ましいものがあった。

 あー、ショタ好きの璃月ならやりたそう。

 とか納得する。


「私、水が怖い鳴瑠くん(ショタ)に、泳ぎ方を教えたあげたい」

「別にそれはいいけどさ、璃月」


 僕、泳げるんだよね。

 言うかどうか迷ったものの、言わないことにする。

 だって璃月の提案だ。出来る限りやらせてあげたい。


「いいけど、なに?」

「ううん、なんでもない」

「そーお?」

「うん」


 返事をして、僕は気持ちを切り替える。

 ここからの僕は、水が怖い小っちゃな子にならなきゃいけないんだ‼

 そんなわけで、


「璃月お姉ちゃん、お水怖いよぉー」


 言いながらようやく立てるようになった璃月に抱き着く。

 抱きとめられる前に僕は身体にしがみつき、ここぞとばかりに彼女のおっぱいの中に顔を埋めた。これは決してわざとやった結果ではない。水が怖い故に逃げこんだだけに過ぎないのである。たまたま逃げた先に璃月のおっぱいがあっただけなのだ。

 それにほら、おっぱいって恐怖を和らげる力があるじゃん(自説)?

 だから、恐怖から逃げるとなると、本能的にここに逃げてきてしまっただけ。

 ね、わざとじゃないでしょ?

 何を言っているのかわからないが、とりあえず、これだけは言っておこう。

 璃月のおっぱい柔らかさいこー。


「うん、うん、お水怖いね。私をに捕まってていいからね」

「そーするぅー」

「でも、男の娘だし、泳げる方がかっこいいよ。だからね、私が泳ぎ方を手取り足取り教えたあげる。私に任せて‼」


 言葉選び、なんかえっちくない?

 思うが言葉にせず、僕はただただ璃月のおっぱいの中で頷く。

 こうして璃月の水泳の授業が始まりを迎えたのだった。

 それで、――パシャパシャ。

 璃月と手を繋いで水に浮かぶ僕が、バタ足をすると水面が音を立てて揺れた。

 何度も言うが、僕は泳ぐことができる。

 そのため、最初は虚しさが強かった。たまに璃月が「上手、上手」と褒めてくれたのは嬉しいものがあったけど、やっぱり虚しい方がすごく強かった。

 だが、やっているうちに僕は気づいたのだ。

 水につけていた顔を持ち上げ息継ぎをすると、璃月のおっぱいが視界いっぱいに広がることに。うん、絶景。これなら永遠にやってられるよ。

 にしても、見ているだけっていうのは虚しい。

 ぶっちゃけ、このまま泳ぎ、璃月の胸の中に突っ込みたいな。

 そんな衝動に駆られる僕。

 にしてもさ、と思う。

 今日の僕、クリスマスイブとか関係なしに、璃月のおっぱいの話しかしてない気がする。ま、そんな日があってもいいかな。

 おっといけない、ショタぽいことも言わなきゃだよ。

 サービス精神旺盛な僕は、璃月が好きそうなことを言うことに。


「手、放さないでね」

「うん、放さないよ」

「絶対に絶対だよ?」

「うん、絶対に絶対にはなさな――いっだぁッ!?」


 瞬間、璃月は立ってることができなくなり、水の中に沈み始める。

 そして、もがき始めた。

 え、急に何!?

 突然のことながら璃月のピンチだと悟り、僕はおねショタプレイ(健全版?)を取りやめて立ち上がると、璃月をそのまま抱き留め水中から助け出す。僕が助けたのがわかると、安心したようにもがくのをやめてくれたので、簡単に救うことができた。

 救えたことに安堵する僕。

 そんな胸の中にいる彼女は、溺れたのが怖かったようで泣いており、僕の首に腕を回すと強く、それは痛いくらいに強く抱きしめてきた。そんな彼女をより安心させるように僕は、背中をさすって声をかける。


「怖かったね。でも、もう平気だよ?」

「ぐすん・・・・ありがどぉぉ・・・・」

「大丈夫?」

「だめ。・・・・いだい。めっちゃいだい。あし、めっちゃいだいよぉー」

「よしよし、もう安心だからね」

「うん。わだじ、水に溺れるのやー。溺れるのはなーぐんとの恋だけでいい‼」


 泣きながら璃月はそんなことを言う。

 彼女がどうなってしまったかと言えば、足がつってしまったようだ。

 立っていられなくって、最終的には溺れてしまったようだった。

 溺れた理由を聞きながら、プールから出してプールサイドに座らせてあげる。

 それから璃月の足を擦りながら「痛いの痛いのとんでけー」とおまじないをかけてあげる。そうすると、落ち着きを取り戻したのか、ようやく泣き止んでくれた。


「もー、やー、深いとこ、やー」

「そうだね。あっちの子ども用のプールにいこーか」

「いくぅ」

「じゃ、いこーか」


 先ほどまでとは逆に璃月が子どもぽくなっていて、ダメだとわかっていながらも彼女が可愛くて仕方がなかった。そんな彼女に僕は手を差しのべ立たせようとする。

 が、一向に手を掴む様子はない。

 あれかな?

 抱っこしてほしいのかな?

 思い、太ももに手をかけたとき、璃月はポツリと言う。


「じんこうこきゅー」

「璃月は知らないかもだけど、人工呼吸って意識のない人にするやつだよ?」

「知ってる。けど、私、溺れたもん。してもらう権利あるもん」


 拗ねたようにワガママを言う璃月。

 そんな彼女の肩は小刻みに震えていて、まだ恐怖が残っているのかもしれない。

 僕はそれを察し、彼女のワガママを聞いてあげることにした。

 とはいえ、意識のある人にしちゃダメなんだよね。

 どーしたものかな・・・・・。

 少し考え、アレンジを加えることにした。

 それがどんなことかといえば、


「ん、ちゅ、れろ」

「ん、にゅー」


 肩を抱きちゅーをする僕は、空気の代わりに舌を入れてあげた。艶めかしい音が脳に響く。ここまでのえっちな気分を晴らすと言うよりは、恐怖を忘れさせてあげたくて、めいいっぱい舌を動かし続ける。そのかいがあったのか、璃月の肩の震えはいつのまにか、気持ち良さからくるビクリとした大きな震えに変わり嬉しくなる。

 どうやら恐怖は消えたようで、安心だ。


「ん・・・・ぷはっ」

「ナーくん、ありがと。あと、ワガママゆってごめん」

「いいよ、別に。ちょうど璃月とちゅーしたかったし」


 さっき起きたことを忘れられないかな、なんて気持ちを込めて冗談めかしてみた。

 それから、先ほどと同じ提案をする。


「璃月、とりあえず、別のとこいかない?」

「うん、そーしたい」

「じゃ、いこ」

「うん」


 今度こそ璃月は僕の手を取り立ち上がる。こうして僕たちは、怖い思い出を忘れさせるように、楽しい思い出を作りに別のプールへと歩みを進めたのだった。

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