第95話 おこタイツ
正方形の小さな空間は、空からの赤外線の雨により、鈍い赤色が支配している。鈍い赤色の世界にこの身を入れてしまえば最後、抗うことはできずに抜け出すことができなくなってしまう。僕もその例外ではなく、璃月の足の上に乗っかると抱き枕にして、うつ伏せに寝転がることしかできなくなっている。太ももに頭を乗せると、心地よくっていつまでもこうしてたい。璃月もこの空間と同様に、僕をダメにする要因であった。
もはや、どれくらいの間、こうしているのかも覚えてはいない。
ま、幸せだからいーや。
僕は考えるのをやめる。
ここの心地よさ、璃月のタイツに包まれた足を堪能することにした。
そんな僕は、最近ハマっている遊びをすることに。
ルールは簡単。
璃月の履いているタイツを引っ張って放す、これだけ。
単純なものだけど、これがね、めっちゃえっちぃの‼
興奮し始める僕。
キラキラとした目で僕はまずは、タイツを人差し指と親指でつまみ引っ張る。
この時の注意点としては、璃月を引っ張って痛くしないようにすること。
あくまで引っ張るのはタイツのみ。
足はつままないようにしなきゃダメ。
「えい」
で、放す。
そうすると、ぺちんと璃月の足に引っ付く。
それを見て思う。
僕も、璃月の足にずっと引っ付きたいなー。って。
タイツに負けじと僕も璃月の足に引っ付くことにした。
えへへー、よくわかんないけど、タイツ引っ張るのえっちぃー。
僕は確信していた。
これがいつの日か、1分間に引っ張り放すことが何度できるのか競われる日が来るのではないかと。それが来たら、僕は絶対に代表になれるね。
僕にはもっと確信するべきことがあったようだった。
それが何かと言えば、ここにいすぎてバカになっている、ということ。
なにはともあれ、僕は数回それを繰り返し遊ぶ。
そうしていると、段々とタイツの履き心地に違和感を覚え始める璃月(字ズラがえっちぃ)。もぞもぞと足を動かし始めた。彼女の足の上にいる僕は振り落とされそうになっていた。
まさに彼女が動かす足の上は、嵐の大海原に巻き起こる高い波のよう。その上にいる僕という船は揺れ動き転覆し離れてしまわないように必死に抗い続ける他ない。
だんだんと何を言っているのか自分自身でもわかんなくなってきた。
やはり、この場所も、璃月も僕をダメにしていっているのだろう。
かまわずタイツを引っ張って放す遊び――『タイツぺっちん』を続ける。先ほどまで転覆がどうのこうの言ってたけど、これがしたくてたまんない。
気にせず続けることにした。
そんな僕の覚悟を悟ったのか、何をしてもやめないのだと呆れたのかはわからないけど、璃月はこの空間の外から僕へと喋りかけてくる。
「鳴瑠くん。私の足とタイツが好きなのはいいけど、それやられると違和感がすごいし、すぐにタイツがダメになっちゃうから、あんまりしてほしくないんだけど」
「新しいのなら、僕がいっぱい買うよ、箱買いする」
「・・・・ガチ勢すぎる」
呆れる声。
僕はそんな彼女にこれをやり続ける理由を告げることにした。
「璃月のタイツをぺっちんするの楽しいの」
「特殊性癖というか、なんというか・・・・・」
「でも1番の理由は違うよ」
「そうなの?」
「うん。1番の理由としては、こん中、これくらいしかやることないの‼」
「ないのじゃないの。ならおこたからでなさい・・・・・」
「それはや‼」
「やじゃありません。可愛くしてもダメです」
聞き分けのない小っちゃい子に言い聞かせるが如く言ってくる璃月。
そんな僕がいるこの場所は、彼女の言った通りコタツの中。1度入ったことがある人はわかると思うけど、特殊効果〈引力〉が常に発生している特殊ステージ故に、出ることを困難にするようなところだ。僕もまんまとそこの住人になっている。
「出てきて、私とイチャイチャして」
「してるじゃん。璃月の足とイチャイチャしてるもん。ぎゅーしてるもん」
「私の足と浮気しないで!?」
出たな、浮気シリーズ‼
遂には自分の身体の部位にきたか。
「ね、鳴瑠くん。足に頬ずりしないで、私のほっぺにしてよ」
「ほっぺにする機会はいっぱいあるけど、足は中々する機会ないもん」
「いやそうだけど・・・・したければ別にいつでもしていいけど」
「やったー、なら今する」
「あげあしとらないで、出てきなさい。いえ、ごめんなさい。お願い、出てきて。お顔だけでもいいから見せてくれないかしら・・・・私、心配なの」
だんだんと引きこもりの息子を部屋から出そうとする母親になろうとしている璃月がここにはいた。僕が言うのもなんだけど、恋人に戻ってほしい。
とはいえ、僕と璃月の間にあるのは鍵のかかったドアなどではなく、いくらでも簡単に捲れてしまうようなコタツ布団が1枚だけ。
彼女は、強硬手段である布団を捲りあげる、そんな無慈悲なことをしてきた。
可愛い璃月の顔が中を覗き込んでくる。
そんな彼女は眉を逆八の字にすると、僕に言ってくる。
「ほら、ねこさんみたいに入ってないで、出てきなさい」
可愛いことを言ってくるけど、やってることはめっちゃ酷いことだよ‼
冷気が入ってきて、身震いしてしまう。
「わぁー、璃月のえっち‼」
「私、えっちぃことしてない‼」
「してるもん。勝手にコタツ布団を捲ってるじゃん」
「どこがえっちなの‼」
「今璃月がやってるコタツ布団を捲るの、スカート捲りと変わらないんだからね」
「全然違うじゃん、えっちぃことしてないじゃん‼」
マジでもっともなご意見、ご感想だった。
気を取り直す僕。
「うぅー外は寒いよぉー」
僕は言いながら、璃月の太ももの間に顔を、身体を埋めることにした。
はわー、いい匂いするし、柔らかで、ここ最高。
「私、思うの。えっちぃことしてるの、どーみても鳴瑠くんだよ」
「コタツ布団を捲るほうがえっちだからね。璃月のえっち」
「絶対に、確実に、誰がどー見ても、鳴瑠くんのやってることのがえっちだからね」
正論でしかなかった。
僕は華麗に話を聞かなかったことにして、
「む、このまま捲り続けるなら、僕にも考えがあるんだから」
「もー出てこないと無理矢理そこから出して泣かしたあと、慰めてあげるんだから」
「それはおっぱいで慰めてくれるの?」
「もちろん、鳴瑠くんの大好きな私のおっぱいで」
「ならそれはそれでアリなのでは」
「え?」
「なんでもない」
「あ、うん。それで鳴瑠くんは何をするの?」
「コタツ布団を捲り続けるなら僕、璃月のスカートの中に入っちゃうんだから‼」
「それは私、すんごくえっちなことされちゃうの?」
「めっちゃくちゃにえっちぃことしちゃうんだから」
「それはそれでアリかも」
「え?」
「なんでもない」
似た者同士だった。
というよりも、璃月め、本性をだしてきたな。
このえっち。どんだけ最高なんだよ。
「私のこと、えっちとか思ってない?」
「・・・・」
「返事をしなさい」
「・・・・」
「もー、なーくなんて知らないんだから、ふん」
と、璃月。
彼女はそれ以降なにも言いはしなかった。
僕は心配になり、彼女の太ももの間から顔を上げた。
そうすると、コタツ布団は下げられていて、中に覗き込んでいた璃月の可愛い顔はどこにもない。それから数分経っても、何の音沙汰もなく・・・・。
え、もしかして僕、見捨てられた?
ぶっちゃけ、あと2回くらい・・・・いや1回言われたら出ようと思ってのに。
不安になる。
璃月に見捨てられたら僕、生きてけないよぉー。
しかたない。
ここは出ることにしよう、かな。
璃月もなんやかんや言いながらも寂しがってると思うし。
何より相手にされないのとか、やだし。
思うがはやく僕は璃月の足を、太ももをよじ登る。
コタツ布団の端までゆくと、ポンと顔だけ外に出した。
出た先は璃月のお腹の辺り。そこから璃月の顔を見上げると笑顔で待っていて、
「よーやく、可愛いお顔が見れた」
なんて言って嬉しそうにする。
うー、うー、これは、これはぁー。
僕がどうやったら出てくるのかわかった上で、やられたぁ‼
なんだか悔しくて、恥かしい僕は、次なる行動に出る事にする。
今、璃月が着ているのは制服。
スカートの中にブラウスの裾が入っているのでそれを外に出す。
出した彼女のブラウスの裾を僕は少しめくり上げると、そのまま『穴があったら入りたい』が如く『ブラウスがあったら入りたい』を強行してしまうことにした。
「いやいや、待って‼」
「はぶっ」
ブラウスの裾の中に入ろうとした僕の頬を、璃月はむにゅと両手で捕まえる。そのため、ブラウスの中に入ることができなくなってしまう。
「なにぃ?」
「なにじゃないよ。どーして私のブラウスに入ろうとしてるの?」
「コタツに戻ったら璃月が嫌かなって。だからブラウスに入ろうかなって」
「どんな2択なの。というよりも、今日の行動、えっちすぎ」
「や?」
「やではないけど・・・・ちょっと恥ずかしいかも」
照れたように、むにゅむにゅと、ほっぺを潰しにかかる璃月。
これいい。気持ちいいし、地味にやられるのが楽しくって癖になっちゃう。
「やじゃないなら、とりあえず、ブラウスに入ってもいい?」
「どんだけ入りたいの。あと、とりあえずってやめて」
「それはごめん」
「ん」
そっぽを向いて返事をする璃月は、僕をほっぺむにゅむにゅの刑から解放してくれた。言葉にはされてないけど、これはようするに――。
「おじゃまします」
「ん、ちゃんとゆえてえらい」
僕はその言葉に喜びをえつつ、何の躊躇もなくブラウスの中に入る。
ブラウス内は、当たり前のことだが璃月の体温で温かく、また彼女の匂いに包まれていて落ち着く。僕はコタツよりも楽園という言葉に相応しい場所を見つけた。
そんな僕の目の前には可愛いおへそが。そこに指を入れたい衝動に駆られて入れた。そうすると、璃月が可愛い声をあげる。楽しくなってきてしまい、幾度かクリクリして彼女の可愛い声を聞くと、興奮してきてしまう。そんな僕をポカポカ璃月が叩いてきて、自制することにしました、はい。
次に目に入ったポイントとしては、お腹‼
細いながらも柔らかさがあるお腹がめっちゃいい。そこにむにゅむにゅ頬ずりしたり、指でつっついてみたり、わき腹をモミモミしたり。おっぱいとは違う柔らかさがあって、やみつきになってしまう。色んなことをしていると璃月はまたもや可愛い声をくれて、やっぱり僕は興奮してしまう。調子に乗って触り続けると、またもやポカポカされる。そこで自制しました、はい。
でもこーなると、悩ましいことができる。
璃月のおっぱいで一生を終えるか、お腹の上で一生終えるか・・・・。
究極の2択と言える。
とりあえずは、今度、お腹を枕にして眠りたいと思いました。
絶対にいい夢が見れると思います。
で、僕が今回もっとも興奮したのはタイツ。
普段は見ることができないタイツの上部分には1本の線(センターシームって言うみたい)が入っていて、そこをなぞりたい衝動に駆られなぞった。璃月はくすっぐったそうに声をあげ、またもやポカっとしてきた。
またタイツの入口部分と璃月の白い肌の境界線がいい。ここが世界の果てなんだと僕は悟った。またもや何を言ってるのか理解不能になりつつもまとめるとこう、璃月の白い肌とタイツの黒色が見事なコントラスト生み出してるってこと‼
いやー、いい。
璃月の裸も好きだし、白い肌も好きだけど、タイツもいい‼
今の僕がそれを見て何をするかは決まっていた。
もちろん、それは――、
「えい(ぺちん)」
――タイツぺっちん、である。
「こら、ばかなる‼」
「璃月が僕のこと、呼び捨てで呼んでる‼」
「変なとこで喜びを得ないでよ」
「えへへ、なにー?」
「そのぺちんするのやめてよー」
「タイツぺちんのこと?」
「そんな名前なのね」
「うん。僕が付けた。これから世界でもっとも競われる競技になるよ」
「なったらこの世界を私が滅ぼす」
「こわい」
「大丈夫、その元凶たる鳴瑠くんは、ずっと私が愛し続けるから」
「浮気をされたヤンデレ彼女の極限系を見た気がする」
「私、ヤンデレじゃないもん。ちょっと愛が強いだけだもん」
「僕はヤンデレレベルで璃月のこと、大好きぃ‼」
「なんか負けた気がするぅー、私もヤンデレレベルで好きってことにする」
「お揃いだね」
「うん」
謎の負けず嫌いで、ヤンデレになる璃月。そんな彼女は、自身のブラウスを捲ってお腹と僕を露出。無理やり外に出された僕は寒くなってしまったので、タイツぺっちんをやめて璃月のお腹に強く抱き着き暖をとることにする。
こうすることで、僕だけでなく、璃月のお腹も温められる。一石二鳥。
ぎゅーとする僕の頭を撫でながら、璃月は言う。
「とにかくね、そのタイツぺっちんであんまりオイタするんだったらね、私が鳴瑠くんにタイツを履かせて同じことしちゃうよ?いいの?」
「・・・・それは璃月がタイツを履かせてくれるのでしょうか」
「え、うん。そーだけど?」
「なら、やぶさかじゃない」
「変態さん」
「璃月から言ってきたのにー」
あ、でも僕、タイツもってないや。
男性用のもあるらしいけど持ってはいない。一応、念のために言っとくけど、女性用のも持ってない。男の娘になった時もハイソックスだったし。
でもでも、ガターベルトは付けたことあったな。
異色な経歴をお持ちの僕。
「どーしよ、僕。タイツ持ってない」
「その発言はノリノリってことでいいのかな」
「一応ね、一応、聞いとかなきゃじゃん。僕がやられるかもなんだし」
「う、うん。で、タイツだけど、私のがあんじゃん」
「・・・・」
いいの、それ?
やば、え、いいの?
あまりの興奮により、語彙力が低下しまくりな僕。
「えー、そっか。たしかに。今、璃月の履いてるのあったね」
「え、別に現在進行形で履いているやつとはゆってないけど・・・・」
「だめ?」
「ダメではないけど・・・・鳴瑠くんがいいならいいよ」
「え、ほんと‼」
「・・・・うん――てっやっぱ、それは恥かしい‼」
「えー」
「えーじゃない‼」
こうして璃月にタイツぺっちんをしてもらう夢は途絶える。
もはや収拾がつかないこの状況を僕はこうしめようと思う。
やはり、コタツは人をダメにする――と。
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