第85話 メイド服と耳かき
犬の恰好を唐突にした放課後の翌日。
璃月は僕の部屋にくるなり、制服から別の服に着替え始めた。
どうやら今日も姿を変えるよう。で、その姿というと――、
「どーお、ご主人くん‼」
言いながらやってきた璃月の恰好はメイド服。
黒色を基調とした膝丈エプロンドレスは色合い的には落ち着いた印象を受けるが、肩やら背中が露出するように改造されており過激。露出して寒いだろうし、その肩やら背中を触って温め抱きしめてあげたくなる。
腰にはコルセットが巻かれているため、彼女の細いウエストやら腰のラインがくっきりばっちりわかる。僕はその細い腰を持ってグルグルしたくなる衝動にかられる。また、背中側には大きなリボンが付けられておりそれをほどきたくなる。
白いエプロンは、璃月の大きなお胸により盛り上がっている。僕の中の興奮もそれを見て盛り上がり、行き良いのままにお胸へと飛びつきたくなってしまう。
そこで僕はため息をこぼし思う。
どうして璃月って――、
「何を着ても、何も着なくても、こんなに可愛いんだろ」
「ふ、ふーん」
そっぽを向き、そっけない態度をとる璃月。
彼女は「褒めてくれたお礼だよ」とばかりに、僕の頭を自身の胸へと引き寄せるとよしよしと撫で始めた。優しい手つきなのはもちろんのこと、顔面を撫でてくれているおっぱいさんも最高だった。頭の全てがしあわしぇ。
顔や脳が蕩けてしまう中、僕は上目遣いで訊ねる。
「それにしても、急にどうしてそんなにも可愛い格好をし始めたの?」
「うーん。それはね、学園祭前に、誰よりもはやく、私のメイド服姿を鳴瑠くんに見せたあげたかったの。独占させたあげたかったの」
「あ、そうゆうことか」
僕と璃月のクラスは『メイド喫茶』をすることになっている。そこで接客をするには当たり前だがメイド服を着ないといけない。
その恰好を誰よりもはやく彼氏の僕に見せたい、そんな可愛い理由のようだった。逆の立場なら誰よりも早く璃月に見せたいので、その気持ちはわかる。それでも1つ思うことがあったりした。
「でも、璃月って・・・・・」
「ん?」
「学園祭当日はメイド服着ないよね」
「うん、そーだね、ほんとはただ着てみたかったの」
璃月の顔は真顔。
でたらめな理由を言っていることに悪びれる様子の欠片も見せずに、淡々と本当の理由を告げた。ちなみに、璃月がどうして当日メイド服を着ないのか、もっと言えば接客すらしないんだけど。その理由はトークショーのMCをするからだった。
そもそもの話、僕以外の人間に興味を示さない(敵、脅威は除く)璃月が、接客できるのかわからないという問題もあるし。璃月の可愛い姿を僕以外に見られる状況に僕が耐えられるかも怪しいし。
何はともあれ、可愛い璃月の姿を独り占めできているのが嬉しかったりしている。
「にしても、メイド璃月は僕に何をしてくれるのかな‼」
「んー、特には考えてなかったけどぉー、なんでもするよ?」
「なんでも!?」
わざとらしく驚いてみせる僕は、密かに思うことがあった。
メイド服を着なくても、普段からなんでもしてくれている気がする‼――と。
だって考えてほしい。
普段から璃月に甘やかされてるし、ご飯は「あーん」して食べさせてもらってるし、オムライスを食べるときは絵も描いてもらってる。ちゅーをして元気づけてくれるし、あとは・・・・えっちなご奉仕もしてもらってるわけで(僕もしてる)。
「あれ、今更メイドさんになった璃月にやってもらうこととかなくない?」
「失礼だよ、鳴瑠くん。過去一最低なまであるよ‼」
「別にガッカリしてるわけではないよ・・・・可愛いし」
あと、えっちぃし。
これを言うと否定されるので、今回はあえて口には出さない。
「でも、たしかに・・・・メイド服を着たからって、特別やるべきイチャイチャ法があんまり思い浮かばないし、今のところ昨日の自分を超えられる気がしないなー。なんか、昨日までの私に負けた気分で腹立つ・・・・イラっ」
「遂に自分までを敵と判定し始めた・・・・僕的には大好きな人同士で争わないでって感じだよ。そんな姿みたら泣いちゃう。どうやったら見れるのか知らないけど」
でも・・・・いっぱいの璃月に囲まれるかぁ・・・・。
夢のようだなぁー、えへへ。
たくさんの璃月に抱きしめられたいかも。押しつぶされたいまである。
「鳴瑠くん、絶対に私が増えたら幸せになるかも、なんて変なこと考えてるでしょ」
「うん。たくさんの璃月に囲まれたら僕、幸せぇ」
「悪いけど、そうならないかな。私が複数集まったら起きるのは戦争。鳴瑠くんを懸けた自分同士の戦いが始まるよ。鳴瑠くんを愛する私は私だけでいいもん」
「・・・・璃月」
もはや言ってることがほのぼのとした日常を生きる人の言葉じゃないよ。
とか思う僕。
「でも、僕としては全ての璃月を愛するから、喧嘩しないでほしいかな」
「私に浮気しちゃダメでしょ、めっだよ‼」
「めっをメイドさん璃月からもらっちゃったぁー、えへへー」
とか、ニヤニヤしながら僕は思う。
璃月の浮気疑いシリーズも遂には『璃月本人』ときたか。行きつくところまで来てしまった気がして、ちょっと考え深いものがあった。
ま、璃月のことだし、まだまだ続くんろうけど。
「何はともあれだよ、鳴瑠くん」
「うん」
「私は昨日の自分を超えたイチャイチャがしたいの‼」
僕に関しては意識が高い璃月。
もっと言ってしまえば、僕が関わらないと意識がめちゃくちゃ低いんだけどね。それも璃月らしくて好きだし、僕も璃月のことは言えないけど。
「で、どんなことがしたいの?」
「そうだね・・・・なら、耳かきしたあげる」
「わーい‼」
「メイド服の定番ぽいイメージあるし、たまには基本に忠実にいってみようと思うの。逆にね。今までアブノーマルなことばっかりしてきたしね‼」
というわけで、璃月はベットの上に正座で座ると、ぽんぽんと自身の膝を叩いた。そこに意気揚々と、水を得た魚が如く、璃月を得た鳴瑠が如く頭を乗せた。
で・・・・いざ、耳かきをしようと前かがみになったとき、それは起きた。
――ぽむっ。
膝に乗せた頭の上に、彼女のおっぱいが乗ってしまっていた。
現状をもっと簡単に説明すると、下から璃月の膝、僕の頭、璃月のおっぱいって感じのサンドウィッチ状態。うん、幸せ。
なんだけど・・・・・これってさ。
「え・・・・おっぱいが邪魔で耳の穴が見えない」
「僕は幸せだけど?」
「私、膝枕しながら好きな子に耳かきできないの・・・・」
その事実に耐えきれなくなったのか、璃月はむきーと取り乱す。
そうすると僕の頭はおっぱいと膝にもみくちゃにされる。これが新手の頭皮マッサージ・・・・もしくは、小顔リンパマッサージか。うん、効きそう‼
「くっ、これはもーてんだったよ。私の膝枕耳かきの夢が潰えるなんてね」
「うーん、僕的にはこのままサンドウィッチされ続けるのもいいけど」
「いや、待って鳴瑠くん」
「ん?」
「私はまだ負けてない。負けたと思わない限り、私に負けはない」
すんごくカッコいいセリフを言う璃月。
本当にほのぼのとした日常を生きているのか怪しくなってきている。
「とゆーわけで、私は新たなる耳かき法を考えた」
「おー、それはすごい」
「その名も・・・・・添い寝耳かきだよ‼」
「お、おー」
あまりの迫力に、僕はビックリしてしまう。
とはいえ、よくよく考えると添い寝しながら耳かきをするだけという、単純な耳かき法だった。にしても『法』と付くほど耳かきのやり方に種類があるのか謎だけど。
「鳴瑠くん、ベットに寝て」
「服は脱ぐ?」
「どうして脱ぐ前提なのかな、私をえっちな子だと思ってないかな」
思ってる。
とは言えないので、僕は素直に言うことを聞いてベットに横になった。もちろん、耳かきをしてもらうことが前提なので横向きに寝転がる。
その僕に覆いかぶさるように、璃月はうつ伏せで乗っかってきた。
現状を簡単に説明すると、下からベット、僕、璃月(メイド)のサンドウィッチ状態。柔らかな感触が上下ともに包まれて気持ちがいい。
一生、寝てたい。プレスされたい。
上に乗る璃月は「うんしょ」と、ほふく前進が如く僕の身体をよじ登ってゆく。耳の穴が見える場所までたどり着くと、彼女の息づかいが耳に当たりくすぐったい。
彼女は息づかいが当たることなどかまわずに、そのまま耳かきを開始した。
こそばゆい感触が耳の穴に広がる。
耳からの刺激に弱い僕としては、気持ち良さのあまりに身をよじりたくなる。だが、動こうとすることを察知した璃月が僕の身体を両足で挟み込む。がっちりとホールドされてしまい、動くことは叶わなくなってしまった。
身体全身に広がる璃月の柔らかさと体温。耳からくるこそばゆさ、彼女の吐息。璃月に動きを制限されている服従感。全てが快感につながり、不覚にもビクリと身体を数回はね上げてしまう。
「気持ちいいんだぁ」
「わかってて、訊く・・・・なんて、イジワル」
「もっとしたあげるね」
「ん、んー、んんぅ」
「もっともっとしたあげる」
「りちゅき」
「えへへへ、可愛い」
「りーちゃんのイジワル」
「ナーくんが可愛いのが悪いんだよ」
「む、んん」
漏れ出てしまう声が恥ずかしく涙目になってしまう。だが好きな子に好き勝手に蹂躙され、されるがままになってしまうこの状況がいい。気持ちよくて仕方ない。
「はーい、終りぃ♡」
どこまでも甘い声音で囁かれる。それが鼓膜を揺らすせいで、身体中にピリピリとした電流のような気持ち良さが再び走り出してしまう。
またビクっと身体を震わせてしまう。
璃月はそんな僕を見て「上手に気持ちよくなれたね♡」なんて言いながら頭を優しく撫でてくれる。彼女から伝わる全てが心地いい。
快感の余韻に酔いしれ、乱れた息をどうにか正常に戻してゆく。
何はともあれ、気持ちがいいのもこれで終わり。
そのことに少しばかり切なさを覚える。それを埋めるように「んーんー」と甘えるように璃月にすがり強く抱きしめてしまう。そんな僕を見て璃月は告げる。
「安心して」
「ん?」
「もう片方のお耳の掃除もしたあげるから♡」
あまりの気持ち良さにバカになっていた僕は忘れていた。
もう1つ耳があることに。
どこまでも落ちてしまいそうな気持ち良さに少しばかり恐怖を覚えながらも、僕は期待を抱く。こうしてえっちな璃月メイドのご奉仕はもう少しばかり続くのだった。
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