第86話 学園祭の準備とヤンデレ
学園祭まで残り1日。
今日の学校は1日、学園祭の準備時間に当てられる。私こと璃月は、自身が提案したクラス出し物の1つであるトークショーの準備に勤しんでいた。当たり前だけど、私が主導することになっちゃってる。
どんなコンセプトで行くのか、どんなコーナーを組むのか、どれくらいの時間でやるのか、何公演するのか、予算は――などなど。思考しアイディアをつめにつめてつめつめして、実現可能な段階までもっていくことに成功した。
出演者である謎の美少女こと鳴瑠くんが、メイド喫茶側のシフトに入れられてしまう事態も回避できたし、問題があと1つ片付けば順調とゆえる。
それが1番、どう解決するか悩ましいものなんだけど。
――トークショー終了時にどこで鳴瑠くんを着替えさせるか、ってこと。
後を付けられて、謎の美少女が入った部屋から鳴瑠くんが出てきたら正体がバレちゃうわけで。そこら辺のケアをどーするか決まってない。
決まってるのは私の前で着替えることくらいかな。
恥かしそうな顔してお着替えする鳴瑠くんを見るのが楽しみな私だった。おぱんつも履き替えてもらおうかな、えへへ(私はえっちくない)。
そんな中、この出し物が嫌になってる自分もいた。
1番の理由としては、鳴瑠くんと一緒にいる時間が削られて、ストレスが溜まってきてること。誰なの、こんなイベントを提案したの?
私だった。
何はともあれ、ここまで来て中止にするのは難しいし、さすがの私でも自分勝手だと思う。なので、それなりにやることにする意識が低い私。
そーゆえば、イベントの成功ってよく聞くけど、どのラインでそれに達するんだろうね。無事に終わればなのか、聞いている側に楽しんでもらえたらなのか・・・・。
よくわからない。
私の場合、これをやろうとした理由も、私以外が謎の美少女こと鳴瑠くん(男の娘)で盛り上がっている現状が許せなかったというのが根本にある。
そこから行けば、当初の目的『謎の女の子が私に引くレベルでゾッコンだってことをみんなに知らしめる』を完遂して成功になるのかな。そこが勝利条件なのは変わらないけど、それで成功と言っていいのかはちょっとわからない。
まぁ、いいや。
悩む時間があったら、鳴瑠くんのことを考えたいし、難しいというよりかは面倒なことを考えていてもどーしよーもない。なにより、私が自分勝手なのは今に始まったことじゃない。あーあ、鳴瑠くんに会いたくなっちゃったな。
鳴瑠くんは現在、私のもとにはいなかった。
メイド喫茶の準備が少しばかり遅れているとのことで、そちらの準備に駆り出されてしまった。しかも、こっちの準備は私だけでこと足りる程度のものばかり、私以外の子たちもおらず、寂しさに拍車をかける。
ぶっちゃけ、鳴瑠くん以外の子がここに残られてもそれはそれで困るけど。
あーあ、罰ゲームかな。楽し気なBGMの最終チェックを1人きりでやるのとか。めっちゃ虚しいうえに、寂しさがつのるばかり。帰りたい。鳴瑠くんの胸の中に。
はぁー、と1人ため息をつく――そんなときだった。
スマホが点灯すると、レインのメッセージがきたことを知らせた。
確認すると、相手は気になるあの子こと鳴瑠くん。
彼からの連絡に、私は嬉しさからウキウキとした気分にさせられる。それは髪の一部にも溢れ出て、アホ毛がわんちゃんの尻尾のようにブンブンと風が起きるほどに左右に揺れていた。その風でちょっとだけ寒くなってきちゃう。くちゅん。
心温まる彼からのメッセージでも見て、私は温まることにした。
たぷたぷ、スマホを操作。
『いつもの踊り場に来て』とのこと。
鳴瑠くんが指定した『踊り場』は、いつも一緒にご飯を食べている屋上へと続く踊り場のことだろう。そこしか心当たりがない。
といったわけで、今やっている最終チェックのお仕事は放っておいて、向かうことにした。私はお仕事よりも鳴瑠くんを優先する。仕事は数多くあれど、鳴瑠くんは1人しかいないかけがえのないものだもん。将来、どんなお仕事に就くかはわからないけど、きっとこの信念は変わらない。邪魔をするなら目の前に来たものは潰す。
私は意気揚々と、鳴瑠くんとの待ち合わせ場所に。で、なんだけど。そんな私がどうなったかというと―――、
「どーして私は後ろ手に手錠。しかも椅子に身体を括り付けられて、身動きできない状況にされているのかな。私、さっぱり流れを理解できてないんだけど」
――はたから見たら、誘拐された人質みたいな状態になっていた。
ゆっても、危機感はこれっぽっちもない。
だって、犯人は鳴瑠くんだし。私が痛くならないようにかわからないけど、縛っているヒモはゆるゆるだし。両手を拘束する手錠は私ので、その鍵は私の手の中にある。なので拘束を解こうと思えばいつでも解ける危機感皆無の状況だ。
それに動けないと思ってる私に、鳴瑠くんがどんなことをするのかちょっと興味も湧いてる。せめられ続けるのが恥ずかしくて嫌になったら、拘束をといて気持ちのいいせめをやり返しちゃえばいいわけで。成り行きに少し身を任せることにした。
「どうして私を縛っちゃったりしてるのかな、鳴瑠くん」
「うぅー、僕がこうしなくちゃいけないのは璃月が悪いんだよ」
「ヤンデレさんみたいなことをゆい始めた」
「もしも理由を言ったら・・・・」
「ゆったら?」
「怒ったり・・・・・嫌いになったり、する?」
イタズラがバレた小っちゃい子みたいにシュンとした顔で、恐る恐るといった感じに、鳴瑠くんは私に訊ねてきた。
そんな顔やら態度をされると、私の中のお姉ちゃん心がくすぐられて、思いっきりぎゅーして安心させてあげたくなっちゃう。ついでにもみくちゃにして、わけわからないくらいにちゅーして、スリスリして、おっぱいを飲ませたあげたくなっちゃう。
拘束を外すか、外さずに状況をもう少し楽しむか迷ってしまう。
・・・・うーん。
もう少しだけ、もうちょっとだけ、楽しんでからぎゅーしてあげよう。
そう決めつつも、鳴瑠くんの恋人兼お姉ちゃんとしては、彼を安心させてあげるのは重要であり使命だ。だから、私は優し気な声音を意識して彼にゆう。
「鳴瑠くん、私は鳴瑠くんの、ナーくんのことが好き。だからね、怒らないし、嫌いになったりしないの。だから、お姉ちゃんにゆってみて」
「ほんと?」
「うん。私がナーくんに嘘をついたこと、あったかな?」
「え・・・・わりとある」
「ん、聞こえなかったな。お姉ちゃん、ナーくんのお声、聞きたいな」
「璃月が僕に嘘なんてついたことない」
「だよね‼」
「う、うん」
鳴瑠くんはつまりながらも返事をする。
気を取り直すように私は話を促すと、拘束した理由を話てくれる。
「最近、璃月が学園祭の準備に忙しくって、それで寂しくなちゃってこんなことしちゃったんだ。ほんとにごめんね、璃月・・・・うー」
「そっか、寂しかったのか、なら仕方ないね」
「許してくれるの?」
「うん。もちろんだよ。私をぎゅーしてもいいよ?」
「する」
鳴瑠くんは短く返事をすると、そのまま私のお膝の上に対面する形で座り、ぎゅーって抱きしめ始めた。その強さはいつもより強めで、彼の寂しさの表れだと思うと可愛くもあり嬉しさもあった。また、仕事とかゆう害悪に集中せずに、鳴瑠くんにかまったあげればよかったと反省しちゃう。
「落ち着いた?」
「だめ」
「そっか、ならもっとぎゅーしてもいいからね」
「うん」
コアラの子どもみたいに私にしがみつく鳴瑠くんが可愛すぎる。
もうダメ。私もぎゅー仕返してあげたくなっちゃう。
あわよくばおっぱいを飲ませたあげたい。もう拘束されながら何かを待つのなんて耐えられないよぉ。
切なさが込み上げ、ぎゅーと抱きしめ返す為に手錠を外そうとしたそのときだった。
「じー」
「ん?」
鳴瑠くんは、私の顔を超えて髪の毛、正確にはアホ毛を見始める。
で、なんだけど。
「――ぱくっ」
「はにゅっ!?」
何を思ったのか、バカナーくんは、私のアホ毛を口にくわえ始めた。私のアホ毛は性感帯。そのため、いきなり訪れた快感に、思わずビクリと身体を震わせてしまう。しかも恥ずかしながら変な声までこぼしちゃって。不覚。
――チャリン。
えーとぉ、なんにょ音?
快感によってぽけーとした頭で、何の音なのか考える。
で、導き出した答えは。いや、手の中にあったソレがなくなっているのだから、考えるまでもない。どうやら私は突然の気持ち良さに鍵を落としてしまったようだ。
声だけじゃなくて、鍵までこぼしちゃったみたい、えへへ。
とか笑いごとでもなければ、冗談をゆってる場合じゃない。それってつまり、私がせめに転じられず、本当の意味でされるがままになってしまうことを意味してるわけで・・・・・。まずい。
「アホ毛、食べたなぁー、アホナーくん!?」
「だめ?」
「可愛く聞いてもダメでしょ、ばっちぃでしょ‼」
「璃月にばっちぃとことかないもん」
「嬉しくなるようなことゆっても、ごまかされ――にゃうん‼」
話はまだ終わってないのに、もきゅもきゅとお口の中で、アホ毛をもてあそび始めるナーくん。話を聞いてくれないのが寂しいんだけど、気持ちよくってバカになりそうで。気を抜くと、このまま流されちゃいそうになっちゃう私がいる。
「くすぐ・・・・ん、たい」
「くすぐったいんじゃなくて、気持ちいいんでしょ」
「バカナーくん。私はえっちくないから・・・・あ、んぅ、気持ちよくないもん。くすぐった、い、だけだもん」
「ほんとに?」
ニヤニヤ顔のナーくん。
私が何もできないと思って――実際に何もできないんだけど、ここぞとばかりにえっちく私をイジメてくる。いつものやり返しなのか、はたまた今日は寂しいから私を感じたいのかよくわからない。
何はともあれ、口では嫌といいながらも、それが嬉しい自分もいて。気持ちやら快感やらが複雑に絡み合って考えがまとまらない。
自分がいったいどーしたいのかもわからなくなってきて、結論が先延ばしにされるだけ。その間も鳴瑠くんは、絶え間なく私を気持ちよくさせてくる。
「アホ毛をもきゅもきゅするのを・・・・やめ、ん」
「もきゅ?」
「お口にものいれて喋っちゃダメって、教わった、ん、でしょぉ?」
「璃月のアホ毛は好きだけど、食べたらなくなっちゃう」
「飲み込めなんてゆってない‼」
「そうなの?」
「当たり前でしょ‼もはや、愛がサイコパスみたいになってるよ‼」
「サイコパスのサイコは、最高のサイコだよ?」
「わけわか、ん・・・・ない」
今日のナーくんは、いつも以上に非常識と化していた。
寂しい思いをさせたのを、心の底から後悔し始める。
にしても、恥かしい声を出しちゃうのだけはどうにかしたい。だが、自分の口を手で塞ぐことは、手錠がはめられている現状ではどうにかするのは厳しい。
では、どーするか。
余裕がなくなり始めている、いや。
余裕がなくなってる頭をどうにか動かし、どーにか最善手を導き出す。
「アホ毛をもきゅもきゅする、ん、じゃんくてぇ・・・・・ちゅーしてほしぃよぉ」
自分で塞げないなら、ナーくんのお口で塞ぐまで。
こーすれば、声が漏れ出る心配もなくなるし、気持ちいいし、ナーくんの寂しさを和らげることができる。今の私にしてはいい案じゃないかな。
私の提案に、ナーくんは「いいよ」と答えた。
これで助かる。
そう思ったがつかの間、
「――ちゅ」
「あ、うぅ、ん・・・・ばかぁ、にゃーくんのばかぁ‼」
こともあろうことか、バカにゃーくんは口じゃなくて、アホ毛の生え際にちゅーをしてきた。特にそこは感じやすい場所、私は大きく身体を震わせてしまう。
「どお?」
「にゃ、にゃーくんのばかぁ」
「璃月がちゅーしてって言ったんじゃん」
「お、お口に決まって・・・・るでしょ」
そんなことゆってる間にも、私を黙らせるようにナーくんはちゅーをしてきた。
気持ちいいのが身体中を駆け巡る。
「にゃ、うん」
「えへへ」
気持ちよくなってる私を見て、ナーくんは嬉しそうに笑ってる。
う、嬉しそうにしちゃって‼
そんなに私が気持ちよくなってる姿が、嬉しいのかな‼
たぶん、そうなのだろう。
私自身がそうなのだから、彼の気持ちは大いにわかる。ナーくんを気持ちよくさせてるときとか、幸せを感じるし楽しい。反応を見るのも好き。
それにナーくんは、私にせめられることが多い。ここまで私がやられっぱなしというのはめったいにないわけで、楽しくて仕方がないはずだ。
「む、むぅー、むぅー」
「どーしたの。もっと気持ち良くなりたいの?」
「えっちくないから、そんなことない、もん」
「ほんとかな?」
「ほんとだもん‼」
そーゆいながらも、蕩けきった顔をしていることが、鏡を見なくともわかってしまっている。完全に強がりでしかなかった。
ぶっちゃけてしまえば、もっと気持ちよくなりたいと、おねだりしたい気持ちがないわけでもない。だけど、ゆってしまえば、えっちぃ子だと認めることになるし、負けたみたいでいや。私はやられっぱなしよりも、やる方が好き‼
「にゃ、にゃーくんめ、・・・・これで、これで勝ったと思う、なよぉ‼」
「強がる璃月も可愛いね」
「むぅー‼」
「余裕ないりーちゃんも好きだなー」
「むぎゅっ‼笑ってるのも今のうち。自由になったら、ナーくんを超えるヤンデレ風のせめをしてやるんだから。裸でベットに括り付けて好き勝手にしてやるんだから。気持ちよくなりすぎて気絶させてやるんだからぁ‼」
「なら、今のうちにいっぱいしておくね?」
「ちょ、なんでそーなるぅ‼」
「璃月、今日はお家に帰ってもイチャイチャしようね」
「え、それはいいけど、私にもせめさせてよ‼」
「今日はダメ」
「ナーくんのイジワル‼」
私はナーくんが満足するまでイジラレ倒されたのだった。
何はともあれ。お仕事で溜まっていたストレスは解消され、スッキリした状態で明日の学園祭を迎えることができそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます