第27話 誕生日 その1 1日前
時間は少し遡る。
いつぐらいかというと、ファーストキスの後くらいのお話。
私、星降町璃月には、一緒に過ごす中で変態で鬼畜になっていく彼氏がいた。もちろんそれは、宇宙町鳴瑠くんのこと。
とんでもなく、えっちで、変態で、自分で言うのもなんだけど私のことが大好き過ぎる初めての彼氏。で、私自身も大好き過ぎる初めての彼氏。
えっちで変態なのは悲しいことながら私も彼同様か、それ以上かもしれないから人のこと言えないかもだけど。
ちなみに、そのことについて私の口から鳴瑠くんに言ったりは絶対にしないけど。恥かしいじゃん。
とりあえずは、どこまでも似た者恋人だった。えへへー。
じゃなくて、今はそんなことはいいんだよ。
だらしない顔をパンパンと2度ほど叩いて考える。今はすんごく重要なことを考えている最中なのだから。
何を考えているのというと。
それは恋人同士の大切な日の1つ――明日5月9日は鳴瑠くんの誕生日。そんなわけで私は誕生日プレゼントを選んでいる最中なのだった。
今、私がいるのは片隅駅近くのショッピングモールで、ここにくれば大抵のものが揃うと言われている。ここならば彼にあげるプレゼントも見つかるのではないかと足を運んでみたんだけど・・・・。
「むぅ」
私は唸ることしかできなかった。
だって、鳴瑠くんて基本的に無趣味だから何が好きなのかもいまいちわからないし(たぶん好きなのは私くらい)。たぶん、彼のことだ。私が用意したものなら何でも喜んでくれると思う。逆の立場ならそうだし。きっと鳴瑠くんもそう。そうだよね?
うわーん、ちょっと。ううん、すんごく不安になってきちゃったよぉ。
「むわー」
考えすぎて頭の中が混乱だよ。大混乱だよ。
軽くパニックになってしまった。
あれかな。ありきたりだけど、自分にリボンを付けて「私がプレゼント♡」みたいなことをすればいいのかな(多分ありきたりじゃなかった)!?
それなら絶対喜んでくれるし、あんぱいだよ。それがあんぱいな彼氏もなんかやだけど。でも、それは最後の手段。ううん、それもセットにして何かを渡したいな♡。
こー、なんだろ。
肌身離さずもってくれるものとか?
うーん、それはちょっと重いとか思われるかも・・・・。もう遅いかもだけど。体重は軽く愛は重くとか言ってる気がするけど。だから今更かもしれないけど。
私は少しショッピングモール内を探索してみることにした。
男の子が好きそうなネックレスが目に入る。
うーん、これは違う気がする。鳴瑠くんにはもっと可愛いもの、女の子が付けてそうなやつの方が似合う気がする。とりあえず今回のプレゼントにネックレスは違うかな。私の写真が入れられるロケットペンダントならいいかもだけど。
うーん、あとは。
ネックレスの代わりに首輪をプレゼントしても喜んでもらえる気さえするんだよね。たぶん彼なら「璃月の犬ってことはずっと一緒にいられるね。頭撫でてー」とか言ってきそうだし。
うん、かわいー。
えへへー、撫でたいな♡
そんなこと言ってくる鳴瑠くんの体を撫でまわしてあげたいな♡
・・・・。
う、ダメだよ。そんな方向性のプレゼントは。
どうにか我に返ることができた。
なし。えっちな方向はなしにしよー。私がプレゼントはやるけど。
で、もう少し歩いてみる。
そこで見つけたのは指輪。
あれは私がほしい。彼から私が貰いたいので却下。
あとは・・・・・なんだろ?
悲しいことながら出てこなかった。
私はまだ鳴瑠くんのことをあんまり知らないんだとわかってしまった。たとえば、人をその人だと形づけるもの――好きなモノとか。
そもそも教えてもらってないとかじゃなくて、彼の場合は『ない』と言った方が正しいのかもだけど。ただ1つを除いて。
ふと、付き合う前のことを思い出す。
『好きなものを見つけたい』
『好きなものを作っていきたい』
そんな言葉たち。彼が言ったことだった。
だったら私がそんなことを言う彼にプレゼントできるもの。
好きなものを見つけて、それを残しておけるもの。
そんなものをプレゼントしてあげたら素敵じゃないかな。
何よりも、それを使っていくことが1つ目の趣味になってくれたら、私は嬉しかった。鳴瑠くんの好きなものを見つけていく人生に影響を及ぼせるなら恋人になってよかったと思える。
思うがはやく、私はプレゼントを買いに電気屋さんに向かった。
目当てのものはすぐに見つけた。
だけど、いくつか種類があって、どれがいいのかわからなかった。だからとりあえず私は1番可愛いヤツを買うことにした。
ちなみに色は私が最近、大好きになった瑠璃色。
それをラッピングしてもらう。受け取ると落とさないように大事に大事に両手で抱え運ぶ。
1度や2度、落としてしまっても、箱があるので壊れる心配はないとしても。落としたくはなかった。だからいつもよりも慎重に運ぶことにした。
私のプレゼント、喜んでくれるかな。えへへー♡。
だらしない顔をしながら私は自分に付ける用のリボンを買って帰ることにした。
好きな人の為に悩むこの時間が楽しくて仕方がない。また1つ、好きなものを見つけた瞬間だった。
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