いきなり突撃

「で」

「で?」

「はい」

「ここがあの教団のハウスね!」


 目の前にはぽつんと建つ四角い建物。人の気配はない。

 本来ここは警戒するものなのだが、


「ん?このドア立付け悪いよ」

「そりゃあ廃研究所だしねえ」


 こいつらに緊張感なんてなかった。

 いきなりドアを開けて中を探る。RPGの勇者か。


「でもこんな狭い廃墟を粗探ししたところで……何ですか?」


 エルシーが突然言葉を止めたと思うと、スイジーが何か耳打ちをする。


「地下ですか?」

「地下か?」

「地下だしー」

「地価ね♪」

「エヌーゼだけ何か違う気がする」


 でも文字だからわからないね。

 チエちゃん今日もお疲れ様っす。


「えっと、廊下の突き当たり……、霊魂に反応して開く術式がある」

「霊魂?えっと、つまりどういうことだしー?」

「その……霊魂というのは、各々の存在を表すもの。私たちにもある。決して同じものは無いし、……基本的に失われることも無い。あの術式はつまり、顔認証システムのようなもの」


 言うなれば霊魂認証システムか。

 しかし、そうだとすると問題が発生する。


「どうやって開けばよいのだろうか」


 キュオルのその言葉は、質問というよりかは零れたというようだった。一つとして同じものはないのなら、そのロックを外すことは不可能ではないか。


 しかし、スイジーに困った様子はない。


「こじ開ける」


 弱く言い放つと、廊下を進んでいく。そして、何も無い壁にすっと手をかざす。


「……」


 何かを囁いたような気がしたが、聞き取れたものは誰一人いなかった。

 するとなんということだろう、青色の光が浮かび上がってきて、扉が現れた。


「すごーい!」

「はえー」


 スィエルとエインは興味津々に眺めていた。


「まあ、よく分からないが道は開けたんだな。ありがとう」

「……いいえ、構わない」


 いつも冷たいチエがお礼を言った。


「何だか今失礼なことを言われた気がする」


 それこそどうでもいい話だ。


「……」



 扉を開くと、先は地下へ続いているであろう階段になっていた。

 壁は青混じりの灰色で、青い線のような照明は近未来という感じがした。


 一本の通路を歩いていくと、分岐路に辿り着いた。


「じゃあスィエルとシータスと私はこっち」


 あいあいさー!と元気の良い二人。息ピッタリである。


「あたしとキュオルはこっちでいいわね」


 ふんす、とやる気に満ちている二人。


「じゃあ、チエとエヌーゼはあっち」


 オウカが通路のひとつを指す。エヌーゼはひらひらと手を振り歩き出し、チエも頷いて追いかける。


「スイジー、エルシーはそっちをよろしく頼むわ」

「わかりました」


 通路は長く、それぞれ先の様子はわからなかった。

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