最終章part22『サヨウナラ』

牧野:スケール 会議室 夜


 牧野です。

 ギターの上杉君。ドラムの豚さんこと桝井幸成。そしてキーボードの崎山徳子。

 そして私と沢木さんの五名でバンド名を考えることにしました。

「僕はカッコいいのがいいな。」

「俺は何でもいいぜ」

「おタマ様がリーダーです。おタマ様が決めてください」

「実は色々考えて、もう決めたんだ。」

「へえ、どんなの?」

「私の昔やってたバンドと上杉君のバンド名を足して、・・・ラーバス。ラーバスサスペンションズにしようと思う」


 私の意見に、皆が賛成してくれました。


「いいよ、ラーバス。僕の遺伝子も入ってるしね」

「気に入ったぜ」

「おタマ様。ナイスセンスです」

「えへへ」

「どうやらバンド名は決まったようだね。今日を持って、結成としよう」

 

 沢木さんがずり落ちた眼鏡をクイッとあげて言いました。かっこつけてるけど、かっこ悪い・・・。


「ようし、与えられた時間は2年だ。仕事は結果が全て。結果だよ、牧野さん。結果を出そうっ」

「うん。皆、これから宜しくね」

「おうよ」

「はい、おタマ様っ」


長畑:洗足池公園 ベンチ付近 夜


 長畑だ。

 俺は色々考えて、自分も夢を追ってみる事にした。それと、牧野さんに告白をしにやって来た。

 牧野さんは今日も一人、公園でベースの練習をしていた。


 牧野さんは俺に気がつくと、会釈してきたので、俺も会釈しかえした。


「牧野さん。バンド結成、おめでとう」

「ありがとうございます」

「これから忙しくなるね」

「そうですね、頑張ります」

「ねえ、牧野さん。」

「何ですか?」

「実は、俺、役者になろうと思ってるんだ」

「へえ・・・それは凄いですね。お互い頑張りましょう」

「ああ、それと、キミにどうしても、伝えたい事がある」

「・・・私も、長畑さんに、伝えたい事があります」

「牧野さん?」

「私・・・長畑さんの事が・・・」

「待って、俺から先に言わせて欲しい。牧野さん。俺は、キミが好きだ。俺と、付き合って欲しい」

「長畑さん・・・」

「牧野さん・・・」


 俺たちは、しばし沈黙のまま見つめあった。

 そして、牧野さんが口火を切ってきた。


「私・・・、お付き合いは、出来ません。第一、長畑さんには、もっと相応しい人が傍にいるじゃないですか」

「牧野さん・・・」

「ごめんなさい、長畑さん。私、長畑さんみたいな人、大嫌いです。だから、この話は止めにして下さい、迷惑です」

「迷惑・・・・」


 ショックだ。お互い両想いだと思ってたのに・・・。


「・・・わかった。迷惑かけちゃって、ごめんね。これからも、職場でよろしく」

「勿論です。よろしくお願いします」


 俺は肩を落として帰ることにした。


「ごめんなさい、長畑さん。でも、これでいいんです。所詮私はお邪魔虫ですから。サヨウナラ、長畑さん・・・。」


犬伏:長畑の家 リビング


 犬伏です。

 ただ今東矢君、ルリと家のみしています。色んな問題が解決して、とても楽しくて、上機嫌です。

 

「ただいま・・・」

「おっ煉ちゃんが散歩から帰ってきたぞ」

「どこまで行ってたのかしらね?」


 あたしは煉次朗を出迎えに玄関まで行きました。


「煉次朗、おかえり」

「犬伏・・・」

「どこまで行ってたの? 随分遅かったね。今皆で飲んでるんだ。一緒にどう」

「犬伏・・・・ごめん」

「え?」

「俺、やっと解った、自分の気持ちに。俺は臆病者だから、逃げていただけなんだ」

「煉次朗?」

「犬伏・・・俺は、お前の事が好きだ。俺と、付き合ってくれないか?」

「え・・・煉次朗? いいの? 牧野ちゃんの事が好きだったんじゃないの?」

「振られたよ・・・完全にね」

「・・・いいよ。あたしも、煉次朗のこと、好きだから、付き合ってあげる」

「犬伏・・・ありがとう」

「煉次朗・・・さっ飲もう、飲もう。今夜は祝杯だーーー!!」

「ああ、そうだな・・・」


 やっとあたしの恋が実った。でも、ちょっと不穏だ。

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