最終章part21『ただ愛のために・・・』
牧野:警視庁小野木佳代自殺事件捜査本部内 昼
牧野です。
蘭に連れられて、警視庁にある小野木佳代自殺事件捜査本部にやって来ました。
そこで今井さんと会い、全ての事情を聞きました。
「そんな小弦が死んだって・・・幼成が・・・??」
「間違いありません。彼が犯人です」
「今すぐ彼を逮捕したい。今連絡が取れるのはキミだけだ。捜査に協力してほしい」
「勿論です。やります! やらせて下さい。それで、私は何をすればいいんですか?」
「法月幼成に電話をかけて、網浜凜が一命を取り留めたと言って、見舞いに来るよう促して下さい」
「誘い出すんだね? それが無理そうだったら?」
「あなたの事が好きだとか何だとか言って、どこかで会う段取りをつけて下さい」
「わかった。私、やってみる。今やればいい?」
「お願いします」
「キミの身の安全は、警察の威信にかけても守る。安心してくれ、牧野さん」
「はい。」
私は蘭にスマホを渡しました。蘭が音声が聞こえるようにセッティングした。
そして、私は、法月幼成に電話をかけることにしました。
私が電話をかけると、幼成が電話に出ました。
「もしもし?」
「あ、幼成?」
「まだ何か用かい?」
「あのね、実は、アミリンが一命を取り留めて、意識を戻したんだ。まだ喋れないけど、こっちの言う事は認識できるようになってるっ。」
「・・・ホント? よかったね」
「よかったら、幼成もお見舞いに来てあげて。会えたらきっと喜ぶよ~アミリンはイケメンが好きだからさ~」
「・・・考えておくよ」
「どしたの? なんか暗いよ?」
「別に。何でもないよ」
「・・ねえ、幼成。よかったら、今日とか、個人的に会えない?」
「・・・どうして?」
「実は、私、幼成の事、ちょっと好きかもしれないんだ・・・」
「・・・それは嬉しいけど、今、忙しいんだ。落ち着いたら会おうよ」
私は今井警視と蘭の方を向きました。
二人とも、両人差し指で罰印を作っている。
「わかった。じゃあ、落ち着いたら、品川大学病院に来て。301号室の個室だよ。まだ当分は入院してるから」
「・・・301号室だね? わかった、じゃあ」
「うん、じゃあね」
私は通話を切断しました。
「逆探知出来たか?」
「バッチリです」
「お手柄だ、牧野さん。これで奴が殺人鬼になっていたなら、病室にやって来るはずだ」
「急ぎましょう、店長」
「今は警視だ」
「私にとっては今でも荒くれクラブの店長ですよっ」
「私も行く!」
「あなたはもう用済みです。来ないで下さいっ」
「嫌だ、私も連れて行けっアミリンの力になりたいんだよっ」
「・・・わかった。着いて来い」
「店長っ」
私と今井警視、そして蘭の三人は作戦を立てて病院で待ち伏せする事にしました。
蘭:大学病院 病棟 301号病室内 夜
蘭です。
もぬけの殻の病室のベッドの下に潜伏し、法月が来るのを待っています。
足音が聞こえてきました。少し大きめ。男でしょうか?
法月幼成でしょうか?
部屋に誰か入ってきました。
「全く・・・まだ生きてるなんて、しぶといね。参ったよ。ちゃんと止めを刺しとくべきだったな。でもこれで終わりだよ、刑事さん。僕は捕まるわけにはいかないんだ。」
この聞き覚えのある声は・・・間違いない、法月幼成っ。
「ふっふっふっ・・・」
「?? 誰だっ」
「私は今、最高に不愉快で、胸糞悪くて、気分が悪いです。まさかあなたのような社会のゴミと相対することになるなんてね・・・」
「誰だっどこにいる??」
「私がどこにいるか? そんなのあなたには関係ないでしょう。どうせあなたは直に捕まるんだからっ」
「この声は・・・網浜蘭っ! どこだっどこだっ」
法月の奴、酷く動揺しているようですね。私を必死に探しています。
見つかるのは時間の問題ですね・・・。
「くっ・・・」
法月の足しか見えませんが、どうやら逃げ出したようです。
「動くなっ」
今井警視の声が聞こえました。どうやら銃を突きつけているようですね。
「くっそおおおおおおおお」
法月が今井さんのいる位置から逆の方向に走り出したようです。
今井さんの足が見えました。どうやら後を追っているようです。
「よいしょ、よいしょ」
私は這いつくばってベッドの下から顔を出しました。
牧野:大学病院 病棟 通路
牧野です。
法月幼成がこっちに向かって走ってきます。
どうやら私の存在を視認し、そしてポケットからナイフを取り出して襲い掛かってきました。
「牧野おおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
「この・・・・大馬鹿者ーーーーーっ」
私は法月のナイフによる突きを巧みに交わして、彼の右頬に全身全霊の拳を叩き込みました。
「ぐあっ・・・」
法月は壁に叩き付けられて、その場に倒れこみます。
そして蘭と今井警視がすぐ傍までやってきました。
蘭が倒れている法月に悠然と近づいていく。懐からDVDを取り出し、法月に見せつけました。
今井さんが法月の後頭部に銃口をグイグイと押し付けてます。
「一応こんなクズの私にも正義の血が流れておりますので、悪党を見逃すことはできませんね。それにしても・・・サブリミナル刺激ですか。こんなトリックにもならない稚拙な手段で人を殺そうとするなんて、あなた、まともにミステリー小説も読んだことないでしょう?本当に大馬鹿野郎ですね。あなたのようなアホのうつけは、 豚箱で呪術でも勉強するとよいですよっ。さっさとお縄につきなさい! このミュージシャン気取りの荒くれ男めっ」
「うう・・そこまで、言う事ないじゃないか・・・」
「一体何故こんなことをした?」
「ぐっ・・・小弦の・・・為だよ・・・。僕は、最初は、ただお金に困っていた彼女を助けたくてやったんだ・・・。なのに、彼女は、彼女は、僕の行動を、理解してくれなかった。真実を話したら、協力するどころか、僕を警察に突き出そうとしたんだ・・・」
「だから殺したのか?」
「そうさっでもこれだけは言わせてくれよ。僕は、殺人鬼なんかじゃない。これは、ただ、ただ、愛のためにやったんだ・・・・っ」
「わかった、もうこれ以上喋るな。詳しくは、本庁で聞く」
今井さんが手錠を取り出して、法月幼成を拘束しました。
「うっ・・・うう・・・」
法月は涙を流しています。
「牧野さん・・・」
「なっ何? 幼成」
「キミを利用しちゃって、本当にごめん」
「どう言う意味?」
「あの復讐ライブは、僕の実験の為だったんだ・・・」
「幼成・・・」
「更に、小弦の名誉の為に言うけど、キミのベースを傷つけたのは、彼女じゃない。僕なんだ・・・・」
「・・・・」
予め待機していた多くの捜査員達も続々と通路に集まってきて、周囲は物々しい雰囲気です。
こうして、小野木佳代殺害、朝稲小弦殺害、そして網浜凜への傷害及び公務執行妨害。3つの事件が同時に解決しました。
詳しい犯行手口とか、共犯者とか、そういうのは聞かない事にしました。
私は知らないほうがいいと思ったからです。
美咲ちゃんが現場に駆けつけてきて、私を抱きしめてきました。
「玉藻っ」
「美咲ちゃん・・」
「もう、無茶しないでよ・・・」
「ごめんね、大丈夫だよ。全部、終わったから。今井さんのところに行って来なよ」
「玉藻・・・私、あなたのことが本当に大切なのよ・・・」
「私もだよ、美咲ちゃん」
後は、アミリンの記憶が戻るのを願うだけです・・・。
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