最終章part16『最強コンビ爆誕!』

蘭:警視庁小野木佳代自殺事件捜査本部内 昼


 蘭です。

 捜査本部に東京湾で顔無しの死体が発見されたというニュースが入ってきました。

 そして同時に今井大志が捜査本部にやってきたんです。


「ああ、荒くれクラブの店長? 何故ここに??」

「店長じゃない。俺は刑事。階級は警視だ」

「とある事件を解決して、昇格したんだよ」

「これからは私が小野木佳代自殺事件の全面指揮を取る。事件を追っていた網浜凜が襲撃された事からも、他殺の可能性が濃くなってきた。総員、他殺の線で動けっ」

「はいっ」

「警視って・・・・あなたが?」

「久しぶりだな、女子高生。何故ここにいる?」

「お姉ちゃんをやった犯人を捕まえるため、捜査協力してるんです」

「そうか。例の死体の件は知ってるか?」

「今さっき聞きました」

「・・・一緒に来るか」

「行かせて下さい」

「ちょっと待って下さい、警視、あなたはボスです。ここにいてもらわないと困りますっ」

「・・・失礼だが、キミ達はどれぐらいこの事件に時間を費やしている?」

「もう、半年以上になりますっ」

「遅いっこの程度の事件、警察の威信にかけても、この私なら一週間で解決してみせるっ」

「警視・・・・」

「網浜も天国で警察組織の怠慢を嘆いているはずだ・・・」

「お姉ちゃんはまだ生きてますよっ」

「俺が直接臨場して、現場から指揮を執る。それでいいだろう。流石の私も我慢の限界なんだ・・・」

「今井警視・・・わかりました。部下達はこの成田が全身全霊で説得します。すぐに捜査にあたってください」

「ありがとう、成田警部補。」

「・・・店長・・・・」

「行くぞ、女子高生っ」

「了解っ」

「待って下さい、私も行きますっ」


 成田警部補も付いてくるようです。

 

 私は今井と共に捜査本部を後にしました。


蘭:霊安室 昼


 蘭です。今井警視と一緒に霊安室にやって来ました。

 霊安室に来るなんて、人生で初めての経験です。

 ビニールを剥ぎ取ると、そこには頭部が切断された女性と見られる遺体が横たわっていました。

「・・・」

「一体誰だ?」


 今井は近くにいた検死担当者に聞いています。


「まだ特定できていません」


 私は死体を隅々までチェックしました。すると、左手首に見覚えのある数珠が付けられていました。


「これは、まさか・・・朝稲小弦の・・・」 

「どうした?」

「この死体が左手首に身に付けている数珠。これは朝稲小弦と同じ物です」

「・・・本当だ。あいつと同じ物だ」

「まさか、この死体は・・・朝稲小弦?」 


 今井さんはスマホを取り出し、電話をかけ始めました。しかし、

「電源が切れてるな・・・」

「そうですか・・・」

「一体どういうことです?」

「わからん。」

「とりあえず、小弦の彼氏と母親に連絡しておきましょうか」

 

 成田警部補が動き始めました。


「ちょっと待って、警部補」

「なんですか?」


 今井警視が成田警部補を静止します。


「法月幼成は、はっきり言って、怪しいです」


 私は断言しました。


「・・・どうしてそう思う?」


 今井警視が尋ねてきたので、私は言いました。


「日下さんから聞いたんですが、姉は意識を失う前に、つきなり。と言ったそうなんです。最初は何のことかさっぱりわかりませんでしたが、もしかしたら人の名前かもしれないと思い、姉の交友関係を漁ったところ、名前につきとなりが両方ついてる人間が五人に絞られました。火月成子、大槻湯成、神無月雅成、水月鳴音、そして法月幼成。この五名です。彼はその中の一人なんです」

「なるほど・・・そいつは良い情報だ。あの名探偵がただで死ぬわけはないからな。で、どうするつもりだ?会社に頼んで監視カメラ映像を見せてもらうとするか。成田警部補、どれぐらいで許可をもらえる?」

「2、3日あれば大丈夫かと」

「それじゃあ遅すぎです。私が今すぐレインバスの社内サーバーにアクセスして、監視カメラの映像を確認します。その方が早いです」

「馬鹿を言うなっ犯罪だぞっ」


 成田警部補が声を荒げて私の意見に抗議してきます。


「もし小野木佳代、朝稲小弦、そして私の姉を殺そうとした人間が同一人物だとしたら、犯人は凶悪な殺人鬼になり始めています。自分の身を守るために、また誰かを殺すかもしれません。無為に時間をかけるのは、更に被害者を増やして、逆に危険になる可能性があります」

「・・・・そうだな。わかった、やれ。私は何も見なかったことにする」

「ちょっと、今井警視!?」


 今井さんは私の意見に同調してくれました。



「どうも。ばれない様にやるので安心してください」

「ああ、もう・・・滅茶苦茶だぁ・・・」

「お前はまるでクロエ・オブライエンみたいな奴だな」

「誰ですか、それは?」

「今時の女子高生は知らないだろうな。さしずめ俺はジャック・バウワーといったところか。クックックッ」


蘭:警察署内 通路 昼


 蘭です。

 レインバスの社内サーバーにアクセスして、監視カメラの映像をチェックしていますが、法月幼成らしき人物は見つかりませんでした。


「どうだ?」

「・・・いません。映像には一切法月幼成の姿は映っていません」

「・・・そうか。もしレインバス社員の犯行なら、監視カメラの存在は把握しているはず。きっと映らないように動くはずだ。だが法月はレインバスとは縁のない人間。もし法月幼成が犯人だとしたら、恐らくは協力者がいるだろう。それもレインバスの内部にな・・・」

「・・・姉のスマホは犯人に持って行かれたようで、通話記録が判りません。ハッキングしますか?」

「いや、そこまでする必要は無い。通信の秘密というものがある。流石にそれは止めておけ」

「わかりました。ではどうします?」

「法月幼成か・・・よし、俺が五名の内の男の方の家に一人で行く。女子高生は成田警部補と一緒に女性達の家に行け。相手は殺人鬼かもしれん。くれぐれも気をつけろよ」

「了解です、店長」

「今は警視だ」


 と、そこに成田警部補のスマホが鳴りました。警部補は応答します。


「なんだって?」

「どうした、成田警部補」

「ジュリエッタの口座に送金していた人間が判りました。」

「誰だ?」

「矢島実里です」

「矢島・・・実里?」

「知っているのか?」

「確か、レインバスの受付嬢をやっている人です」

「そうか・・・ご苦労。予定変更だ、俺は法月を含めた五人に順にあたっていく。女子高生と成田警部補は矢島実里を事情聴取してくれ」

「わかりました。警視、気をつけて下さい」

「心配するな」


 こうして、私と今井警視は一旦別行動を取る事になりました。

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