最終章part9『スクアロフ後編』


東矢:喫茶店コールタールの入ったテナントビル前 夜


 東矢だ。

 目的地の店の入ったビルに着いた。

 なにやら現場にはパトカーが複数台止まっていて物々しい雰囲気だ。

 と、そこに聞き覚えのある声が聞こえた。


「スクアロフーーーーッ」


 この声は、今井さん・・・。

 ビルの屋上からだ。急がなきゃっ。

 俺は大急ぎで非常階段を使い、屋上へ向かう事にした。


東矢:テナントビル前 屋上 夜



 東矢だ。

 俺が屋上に着くと、そこでは銃を抜いた今井さんと、屋上の手すりに追い込まれているスクアロフ、

 そして地面に座り込んでいる指野さんの姿があった。


 スクアロフは森羅さんを拘束して、コメカミに銃を突きつけている。

 

「今すぐ銃を下ろして両手を頭の後ろに乗せろ! ひざまずけ」

「お前が銃を下ろせ!」

「お前が下ろせ!」

「お前が下ろせ!」

「お前が下ろせ!」

「この女を殺すぞっ」


 しばらく二人の睨み合いが続いていた。

 と、突然、今井さんが笑い始めた。


「クックック・・・」

「何が可笑しい」

「そんな脅しで俺が銃を置くと思ってるのか、スクアロフ?」

「なんだとっ本当に殺すぞっ」

「大志、銃を置いてっ」


 指野さんが叫ぶ。


「例の物はまだ完成していない。お前にとってはまだ彼女が必要なはずだ、違うか? スクアロフ?」

「ぐっ・・・うっうるさい、黙れ、本当に殺すぞ」

「くっ・・・苦しい・・・」

「森羅さーーーんっ」


 俺も思わず叫んでしまった。


「ふん・・・このっ時代遅れのキリル文字使い野郎がっやれるもんならやってみろっ」

「なっ・・・言ってくれたなっこの黄色い猿野郎っお前から先に死ねぇっ」


 スクアロフが興奮した調子で銃を森羅さんから今井さんに突きつけた。


 今だっ。


「うおおおおおおおおおおおらああああああっ」


 俺は森羅さんごとスクアロフの腹部に突撃していった。

 スクアロフは発砲したが、銃弾は誰にも命中しなかった。スクアロフは倒れこみ、

 頭を強く打って苦しんでいる。森羅さんは無事だ。


「東矢君ーーーーーーーーーーーっ」


 指野さんが叫ぶ。


「グッジョブだっ東矢っ」


 今井さんがスクアロフに近づいて、森羅さんから引き離し、スクアロフの前頭部に銃を押し付けた。


「お遊戯は終わりだぞ、露助坊やッ」

「ぐっ・・・おお・・・」


 何だかよく解らないけど、今井さんは手錠を取り出してスクアロフを拘束した。

 そしてビルの屋上に警察らしき人たちが続々と入ってきた。


 今井さんは、地べたに座り込む指野さんに近づいていき、そして彼女を抱きしめた。


「終わったよ、美咲・・・」

「大志・・?」

「髪、伸びたな・・・」

「切ってないからね・・・」

「なあ。俺と、もう一度やり直してくれないか。結婚しよう」

「大志・・・」


 指野さんも今井さんの背中に腕を回した。


 俺は森羅さんに駆け寄り、介抱する事にした。


「森羅さん、大丈夫ですか」

「うん、ウチは無事だよ。ありがとう、東矢君」

「どう致しまして」


 何が何だかさっぱりだけど、現場は物々しくなったけど、どうやら事件は無事に解決したらしい。


日下(ナレーション)

「こうして、長かった今井警部の孤独な戦いは終わったわ。でも、事件の後には直に事件が起こる。ちょうどその頃、正に東京湾でビニール袋に入った女性の死体が浮かび上がってたの・・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る