最終章-Never Forget-

最終章part1『捜査本部へ殴りこみっ』

蘭:警視庁小野木佳代自殺事件捜査本部内 昼


 蘭です。お姉ちゃんの事が心配ですが、姉を傷つけた悪漢を確保しなければ私の気がすみません。

 私はお姉ちゃんが働いていた警視庁小野木佳代自殺事件捜査本部に殴り込みをかけました。


「ああ、お前は、女子高生っ」


 私に声をかけてきたのは姉の上司で長い付き合いの成田鉄平警部補でした。


「どうした女子高生。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞっ」  

「私は網浜凜の妹です。お姉ちゃんを刺して殺そうとした犯人をこの手で捕まえたいのです」

「なるほど、キミも探偵をやっているんだったな。網浜がこんなことになってしまって残念だったよ。

 網浜が倒れたお陰で、小野木佳代事件も自殺として処理しようという声を抑えきれなくなってるんだ」

「小野木佳代? 失礼ですが、私は姉からそのような事件の事は一切聞いていません」

「ああ、そうだったのか」


 私は成田警部補から小野木佳代自殺事件の事を念入りに聞かされました。


「ニュースでは自殺したと聞いていますが?」

「実は小野木佳代は首を釣る前に腹部を刺していてね」

「得物は?」

「見つかってない。腹を深く刺した割には部屋に残された血痕も少なかった。君の姉は犯行は別の場所で行われた可能性を指摘していたよ」

「なるほど、そういうことでしたか。ではこの私が、姉の後を引き継いでその事件も解決に導いてみせます」

「おお、そうか。それは心強い。」

「成田君、その女子高生は?」


 私達の傍に厳つい顔をした初老の男性が近づいてきました。


「ああ、本部長。彼女の名前は網浜蘭。網浜凜の妹で、彼女も探偵をやっています。今後の捜査に協力したいそうです」

「ふん、なるほど。お姉さんは不運だったな。協力は大歓迎だが、事件は自殺として処理するつもりだ。悪いが成田君、キミも諦めてくれ」

「そんな、警部っ」

「私は小野木佳代事件にはさほど興味ありません。ただ姉を傷つけた人間を捕まえたいだけです。妹の私には、協力する義務がありますよね?」

「そうか。今警察は色んな事件を抱えていてね。キミには網浜凜を刺した容疑者の捜索をやってもらうとするか」

「ありがとうございます、警部」


 私は本部長に丁寧に一礼しました。


「女子高生、私もこの事件の犯人を追っている。行動を共にしよう。私について来い」

「いいでしょう。付いていきます」 


日下:居酒屋へべれけ 店内 夜


 日下よ。今日は指野さんに誘われて、長畑君と一緒に居酒屋で飲んでいるわ。

 長畑君が珍しくお酒を飲みまくっている。大丈夫かしら。

 指野さんは大事な話しがあると言ってたんだけど、一体何かしら?

 今日の飲みはちょっと変な感じね。


「実はね、二人に話しておきたいことがあるの・・・」


 お酒を口にしつつ、指野さんが語り始めました。


「一体なんですか? 話しって、ヒック」

 

 長畑君、かなり酔っているみたい。


「実は玉藻の会いたい人、森羅聡里さんの事なんだけどね・・・」

「森羅聡里って・・・」

「彼女、私の従姉妹なのよ」

「なっ・・・」

「ああ?」


 何それ? どういうこと? 指野さんの従姉妹ってことは、牧野とも関係があるってこと??」


「一体どういうことですか? 指野さん」

 

 長畑君が真剣な表情で指野さんに迫っていく。


「森羅聡里、彼女は玉藻の腹違いのお姉さんなの」


「なっ・・・・」


「この事は、玉藻には秘密にしておいて欲しい。ちょっと言えない事情があってね」

「ゆっ指野さんはずっと知ってて黙ってたんですか? 酷くないですか」

「家庭の事情って奴よ・・・」


 指野さんは沈痛な面持ちで森羅聡里の過去と彼女に起こった非常なる現実をあたし達に話して聞かせてくれました。

 そして東矢が理由は解らないけれど、森羅聡里と接点を持っていることも。


「あなた達は信頼できるから、話した。このことは玉藻には絶対に言わないで、お願い」

「指野さんがそういうなら、あたしは黙ってます。でも、それじゃ彼女があまりにも可哀想過ぎます」

「玉藻には蘭ちゃんから手紙を渡したそうよ。それで一応、彼女は納得したみたい。この件はもう終わりよ」

「そんな・・・牧野さんが・・・可哀想じゃないですか。あんなに会いたがってたのに・・・」

「私も出来る事なら何とかしたい。でも無理なの。こればっかりはどうしようもないわ」


 指野さんはそう言って、酒を豪快にあおり始めました。

 秘密にしておくけど、納得いかないわ。

 これじゃ、牧野さんが不憫すぎる。。


 というか、あたしも指野さんに相談したいことがあったんだった。



日下:繁華街 夜


 日下です。

 泥酔状態の長畑君と別れ、あたしと指野さんは二店舗目に行くため、二人で夜の繁華街を歩いています。

「あの、指野さん。ちょっといいですか?」

「うん、いいわよ。何?」

「実はあたし、レインバスを退社しようかと思ってるんですよね・・・」

「どうして、先輩と折り合いが悪くなったから?」

「そうじゃないんです。何かもっと、自分の限界に挑戦したい気分なんですよ」

「そう。。。」

「あ、心配しないで下さい。GAMは辞めませんから。引き続き本部長は続けさせてください」

「勿論よ。あなたも悩んでいたのね。ごめんなさいね、聞いてあげられなくて」

「いいんです。あたし、指野さんに出会えて本当によかったと思ってますから」

「ルリちゃん・・・」

「まだ決めた訳じゃないですし、検討してるってだけです。さ、二件目いきましょう、二件目!」 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る