第二部第二話Part16『僕の家に天使がやってきた』

東矢:上杉のマンション前 夜


 東矢だ。網浜が妹をここに呼び出すつもりらしい。

「一体どうするつもりだ」

「通い妻大作戦です」

「通い妻? ってどういうこと」

「報酬を払わせるんだよ、蘭に」

「あの屑、じゃなかった蘭のクソ野郎にそんなことできるの?」

「大丈夫、今LINEで連絡したから、もうすぐ来るよ」


俺達がすったもんだしているうちに蘭がやって来た。

どうやら真希ちゃんの部屋にいたらしい。


「お姉ちゃん。頼みって何?」


網浜が蘭に事情を説明した。


「なるほど、それは大変だね」

「そう、それで蘭に純夜君の通い妻になってほしいわけ」

「うん、いいよ。お姉ちゃんの頼みなら」

「おい、待てよ、網浜。お前妹を一人で乗り込ませるつもりか?」

「一人のほうが好都合なんです」

「万事私にお任せあれ」



上杉:上杉のマンション リビング(夜)



 上杉です。僕がギターのチューニングをしていると、玄関のインターホンが鳴りました。

 一体誰だろう。

 インターホンを覗いてみると、可愛らしい女の子がカメラを覗き込んでいる。

 

上杉:上杉のマンション 玄関前(夜)


 僕は大急ぎで玄関に向かい、ドアを開けた。

 そこにはピンクのカーディガンにピンクのタイツを履き、

 更にピンクのマフラーをしている女子高生が立っていた。

 髪の毛の一部を側頭部で結んでいる。とても可愛い女の子だ。



「(かっ・・・・可愛い・・・・可愛い過ぎる。まるで天使みたいだ)」

「あれ? あの、あなたはどちらさまですか?」

「どちら様って、キミこそどちらさまだい?」

「失礼しました。私の名前は網浜蘭と申します。私立晴嵐学園高等部の2年生です。あなたは?」

「晴嵐・・・・って」

 僕の学校じゃないかっ。

「お名前は?」

「あ・・・上杉、純夜。」

「・・・・失礼ですが、年齢は? 私は16歳ですけど」

「18」

「失礼しました。先輩ですね。あの、差支えなければ、学校はどちらですか?」

「うっ・・・」

「う?」

「さっ、差支えがあるから、言えない」

「はっ失礼しました。変なこと聞いちゃいましたね」


・・・。


「(咳払い)実は、私の姉からこの家の家事をしてこいと頼まれまして。」

「何それ?」 

「私にもよくわからないんですが、姉の頼みなので、今からさせていただきますね」

「ええええええええええ(部屋中を駆けまわりひっかきまわす上杉)」

「(ビクッとしつつ)あの、私がやりますんで、動かないでください」


上杉:上杉のマンション リビング(夜)


 上杉です。可愛い女子高生の後輩が僕の家にやってきて、エプロンをつけている。



「夜ご飯は、もう食べちゃいました?」

「いや、その・・・これから買いに行くつもり」

「丁度良かった」


彼女は冷蔵庫を開け、食材を物色し始めた。

そして十分ほどでありあわせのものでチャーハンと、サラダ、卵スープを振る舞ってくれた。


「食材を持ってこなかったんで、今日はこれで」


 僕はさっそく彼女が作ってくれた料理を口に入れた。


「・・・・美味すぎるっ」

「御口に合いましたか?」

「美味すぎて死にそう」

「よかった。明日はもっとちゃんとしたものを作りますね」

「明日も来るの???」

「あれ? その辺どうなんだろ? (スマホを取り出し)ちょっと聞いてみますね」


 蘭という名前の女子高生がスマホを取り出し、LINEを始めたみたいだ。



『家事終わったよ。明日も行く必要ある? というか、この人誰?』

『お疲れ、暫く通い妻してちょーよ。

 彼こそ私たちが探し求めてたギタリストなのだ!』

『上手いの???』

『超絶テクニシャンなのだ、丁重に扱って』

『了解』


「また明日も、通い妻致しますね、旦那様」

「通い妻・・・・だっ旦那様?!」

「それで一つお願いなんですが、今度行うカウントZEROライブにギタリストとして参加していただけないでしょうか」

「よろこんで参加させていただきます!」

「おお、ありがとうございます。感謝、感謝です」

「よし、二人の出会いの記念に曲を聴かせてあげるよ」

「曲? いいですね。どんな曲でしょう」

「今日という二人のよき出会いの日を祝して、この曲を贈ります。」

「ワクワク」

「それでは聴いてください、童貞賛歌」

「」



ナレーション(日下)

「こうして、上杉純夜が法月幼成の代打としてカウントZEROライブ当日にギターを弾くことに決まったのでした。

 はたしてどうなることやら・・・・」

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