第3話part13『夜会ですが、、、何か?』

長畑:社宅 384号室内 リビング(夜)


 長畑だぁ!

テーブルには今日のために買ってきたオードブルやサラダが用意されている。すでに半分ほど無くなっているが。今日の酒は美味い。 

最高だ!!

・・・東矢と網浜が火花を散らしていなければ、な。

犬伏がそろそろ帰ってくるようなので、俺は二人に片栗粉の用意をするように言った。漬け汁に入った鶏肉は美味そうだ。後は揚げるだけらしいが、実際に揚げるのは犬伏の仕事なので、俺達はアイツの帰宅待ちってわけだ。。

 「はあ、もうさっさと揚げちゃわない?」

日下さんが待ちくたびれたように声を上げる。

 「ダメですよ。犬伏さんが怒りますよ」

「あいつの唐揚げに対する拘りは尋常じゃないからな」

「たしかに。今日のメインディッシュらしいからね」

「ピザだけでも先に焼いちゃおうか」 

「犬伏さんが帰ってくるまで待ちましょうよ~」

「ああ。なんか黒ビール飲みたくなってきたな。」

「買ってくれば? あんた達二人で」

 ・・・・網浜が残虐極まりない獣の瞳で俺をみている・・・・・

 こっ・・・・怖ぇよ。

 「凜的にはポテチが欲しいですね」

 「じゃあ買ってくれば? 刑事さん、ついでに黒ビールも宜しく」

 「ええ~こんな時間に乙女を使い走りにするんですか?」

 「まだ9時大分前だろうが! 一人で行けよ、刑事だろ!?」

 「まあまあそう言わずに二人で行ってくればいいじゃん」

 「いや待て。真希ちゃんに頼めばいいんだ。」

 東矢の奴がスマホを取り出した。

 犬伏に電話をかけるようだ。 

 「・・・もしもし、真希ちゃん? 俺、東矢。今どこ」

 どうやら繋がったらしい。

 「あのさ、悪いんだけどコンビニで黒ビール買ってきて。」

 「ポテチもお願いします! コンソメで!!」

 「うるさいお嬢さんだな。黙っとき! え? ああ、何でもない。こっちの話。そう、黒ビールだけでいいから」

 「良くないです! ポテチのコンソメですよ、コンソメ」

 「いや、何でもない。え? いや、それはいい。そういうのいらないよ、真希ちゃん。全然かかってないよ」

 犬伏のやつ、何を言ったんだろう・・・。

 「え? もう家のすぐ前なの?」

 ドアが開く音がした。

 俺はゆっくりと立ち上がり、玄関に向かう。


犬伏:社宅 321号室内 玄関(夜)


 「ただいまあ~~あ~疲れた」

 帰ってきたあたしをれん坊が出迎えてくれた。

 「お疲れ、意外と早かったな」

 「まあね、さっそくから揚げあげちゃおう」

 「おう、頼むぞ、犬伏」

 東矢君が玄関にやってきた。

 「真希ちゃん酷いよ! 俺の黒ビールはどうなるわけ?」

 「残念。もっと早く連絡してくれればよかったのにねえ」

 「うむむ、それもそうだな。今、急に飲みたくなったわけだし」

 「ポテチはいいの?」

 「ああ、それはいらない」

 おっ網浜ちゃんが走ってきた。

 「要りますよ! 」

 「あらそう。でもあたしは何もいらないし。・・・そうだ! なら二人で買ってくればいいじゃん」


   ? 


 どうしたんだろう。

 一瞬、アミリンの顔がムンクの叫びみたいになったような。

 気のせい?

 「真希ちゃんまで日下さんみたいなこと言って!」

 「はあ? どういうこと」

 「真希さん、聞いてください。東矢さんが凜に敵意むき出しなんです」

 「だからあれは事故だって言ってるだろ」

 「え~~うそ。東矢君、アミリンが嫌いなわけ? 可愛いのに」

 「それ以前の問題だ!」

 「はあ。・・・あれ? アミリン、おでこのガーゼどうしたの」

 「この人が凜を殺そうとしたんですっ」

 「殺意はなかったっ」

 「立証できますか?」

 「ぐぬぬ」 

 「あんたたち、うるさいわよ、真希、早く台所に来なさい」

 ルリに呼ばれた。

 「はいは~い」

 「まあまあ、せっかく玄関まで出てきたんだし、このままコンビニ行っちゃいなよ」

 「そうそう、その間に俺がピザ焼いておくから」

 「そうですね。じゃあ行きましょう、ヒガシヤさん」

 言い終わると、アミリンは靴を履き始めた。

 もう行く気満々みたいだね。

 「トオヤだ! 人の名前を間違えるな!! 失礼だぞ!!」

 「はいはい、うるさいから早く外に出て行ってね~」

 あたしは東矢君とアミリンの背中を押して外に出してあげた。

 「ちょっと真希ちゃん! 靴!!」

 東矢君の靴をドアからほおり投げて、直ぐに閉めた。

 「全く騒々しい奴らだな」

 「あたし、あの二人、絶対気が合うと思ったんだけどなあ」

 「・・・あれだ。同族嫌悪って奴だろう」

 「そっか。どっちも基本ツッコミ系だもんね。覇権争いってやつかな」

 「そうだな(笑)。寒かっただろ、早く部屋入れよ」

 「うんうん。さー、楽しい夜会の始まりだーーー」


犬伏:社宅 321号室 キッチン(夜)


 犬伏です。

 あたしの地元、大分県中津市は唐揚げ帝国です。当然ですが、私も唐揚げが大好き。ただいまルリとれん坊と一緒に唐揚げを揚げてます。

 お婆ちゃんからは秘伝のレシピを受け継ぎました。

 そして美味しく揚げる技術も教わりました。

 2度揚げするのがポイントなのです。

 「あんたほど唐揚げにこだわる若い女は見たことないわね」

 「そう? あたし大分県民だし。大分の人はみんなこだわるよ。高校時代は毎日学校帰りに唐揚げ屋に寄ってたし」

 「よく太らないな」

 「その分運動してましたから」

 「ああ、そういえばお前テニスやってたんだっけ」

 「そう。エースを狙ってましたから。れん坊だって野球やってたし、東矢君はサッカーで全国行ったし。あたし達って何気に体育会系だよね」

 「・・・一応、俺も甲子園行ったんだけど」

 おっキッチンタイマーが規定時間を指しましたよ。

 「ねえ、そろそろお皿にレタス盛り付けておいて」

 「!!(あれ?無視??)・・・はいはい」    


 東矢:コンビニ内(夜)


東矢だよ。家から5分歩くと、コンビニがあった。なんか文学みたいだぜ。

ということで、今、俺はコンビニにいる。網浜凜と一緒に。


 「黒ビール、ここ置いてないですね」

 「何?!」

 俺はドリンク棚を凝視した。

 無い! 無い!! 本当にない!!!

 「本当だ。なんでや! なんで無いんや!」

 「プルングスはやっぱりコンソメが一番ですね」

 あの野郎、恐ろしい身のこなしだ。

 いつの間にか菓子コーナーに。

 さすが、刑事。動きに無駄がないぜ。 

 しかし、なぜ関西弁? 

 とかそういうツッコミ、ホントしないのなアイツ。

 そうだ。

 ビアカクテル用にトマトジュースとソーダ水。ジンジャエールとヨーグルトも買っておこう。ブラックベルベットを作りたかったんだけど、しょうがないね。


「あれあれ、東矢さん。余計な物ばっかり買ってますねえ。東矢さんって、意外とコンビニに来て無駄遣いするタイプですよね。凜も人のことは言えませんけど、さすがに今日は自重してますよ。なんてったって、凜はゲストだし。自分大好きだし。財布も部屋に置いてきたし。」


・・・ふう、落ち着け。落ち着くんだ、東矢。絞め落とすのは、外に出てからでも遅くない。 

 

 「・・・・あれ? よく考えたら、何で今日ゲストの網浜凜がコンビニに買い物に来てるんだろう。東矢さん、何故ですか?」

 「さあね。自分の胸に手を当てて考えてみたらどうだい」


 俺は皮肉たっぷりに言ってやった。


 網浜凜・・・変な女。確かに可愛いけど、俺は嫌いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る