第3話part11『暗がりの希望』



牧野:牧野の家 リビング(夜)



牧野です。

やっと家に着きました。

帰宅中にも長畑さんに会っちゃったし、もう最悪。

まずはキー坊にエサをあげないと。

キー坊は私の友達のインコです。


 「おいキー坊! ご飯だよ、チュンチュン。今日も、長畑さんっていう新しい会社の先輩に、散々な目に合わされて大変だったんだよ、キー坊。しかも帰りの電車も一緒で、まあランチはただ飯できたから、食費代浮いて助かったけどね、キー坊。」


キー坊は美味しそうにご飯を食べてくれています。


 私もちょっと早いけどご飯にしようかな。

 今日作ったサンドイッチ、まだ持つかな?


 朝作ったサンドイッチとスープはるさめを交互に食べながら、

私は自分の手帳と向かい合いました。


この手帳には、ミュージシャンとしての私の全てが詰まっています。

毎日毎日、ふと思いついた言葉、断片的なものであっても、書き留めたいと思ったことを直接赤いペンで書いています。

私は赤が大好きです。

しかし、今日手帳に書けた言葉は『壇ノ浦』のみでした。

最近思い浮かんだ詩。


地獄の果てで貴様とダンス。


 

 お前の命を削り取る。


 

 滅せよ 撲殺 乳母車でひき殺せ。


う~~ん。デスメタル系の歌詞なら最高なのですが・・・。私はもうメタル路線は卒業したので。今は誰かを勇気づけられる歌を歌える人になりたいんです。そのために、私は東京に来たわけだし。よーし、気分を変えてウィッグをつけて長髪にして弾き語りに行こう。


上杉:自室内 夜


 所詮人間は孤独ではいられない生き物だ。ひきこもりでも誰かと繋がりたくてNETでもがいてる。

 ネットでバズッたとき、僕はこの上ない喜びを感じる。生きてていいんだって思える。

 まるで暗がりの中に希望を見出す行為だけど、一人じゃないって感覚は大切だ。

 僕はPCを離れて窓の外を覗き込んだ。

 なんと犬伏真希さんが歩いている。

 僕はあわてて布団に入り、具足を慰めた。所詮僕はこんなことしかできない人間なんだ。儚いカメムシなんだ。

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