第1話Part5『裏の世界』
牧野:自宅、寿司屋店内 昼
それから上京資金を貯めるため、父の仕事を手伝いながら学校に通いつつ、
ベースの練習も欠かさず行いました。東京で森羅さんと再会したときに
「あんた下手になったね」
などと言われないように、鬼気迫る勢いで練習しました。
東京に行ったらソロでデビューを目指す。夢を叶えてみせる。
そんなことを考えながら実家の寿司屋の財務会計業務にあくせくしていました。
しかしそんな私の頑張りを、兄貴は鼻で笑ってきました。
バンドを脱退してから私と兄貴の関係は最悪です。元々私が中心のバンドだったから、
私が抜けると土台から崩れてしまったんです。
牧野:自宅、牧野の部屋 夜
「お前のせいで俺のバンドは崩壊寸前だ」
兄貴は顔を合わせるたびにうわごとのようにそんなことを言って来ました。
ですが
「私にも譲れない夢があるんだよ。いつまでもサスペンションズにはいられない」
というと、兄貴は押し黙ってしまいました。
「夢か・・・お前、東京で森羅を探すつもりならやめておけよ。彼女はもう永遠に俺達の前には姿を現さない」
「それどういうこと?」
「彼女は裏の音楽の世界に行ったんだ。俺達の理解できない世界にな」
「なにそれ」
「俺が言えるのはここまでだ。あとは自分でなんとかするんだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます