第64話 ユウキの試練
副学院長が、ユキとフユの両方とも合格を出しているときに、残り1匹になったキメラに変化が起こる。ユキとフユに倒されたキメラ2体の遺骸が、残りのキメラに吸収されていく。
「なっ??わしは知らんぞ!さては学院長か・・・?」
副学院長は、吸収され、3袋分の大きさになりさらに、体表が竜のうろこに覆われ狂暴化しているキメラを見て驚愕の声を上げる。
「ユウキ君。無理はしなくてよいぞ!学院長のいたずらじゃろうて・・・。」
副学院長が、ユウキを止めようとするが、これが、学院長の試練であればとユウキは、近くにあった銅の剣を手に取りキメラに歩み寄っていく。
体格差は圧倒的であり、キメラはまるで建物のように大きく、ユウキとはライオンとネズミのような差がある。
フユと、ユキも心配そうにユウキの姿を見ている。さすがの双子も、キメラのバカでかさに畏縮してしまっていた。
「【体力強化】【腕力増強】【俊敏強化】【筋力増強】【ガード】【マジックガード】【・・・」
ユウキは、自分の体に覚えている限りすべての身体強化魔法を重ねがけしていく。
「よしっ!副学院長行ってもいいですかぁっ!?」
ユウキは、副学院長の合図を受けてキメラに向かって走っていった。
キメラは、その体躯に似合わない素早い動きでユウキに向けて前足で一蹴する。ユウキの小さな体は吹き飛ばされて壁にたたきつけられて、全身の骨が砕け散った・・・。
・・・かのように周囲に見えたが、ユウキは残像を残してキメラの頭上に飛び上がっていた。
しかし、キメラの蛇から竜の頭に変わっていたしっぽが、ユウキの動きを見ており食いちぎろうと向かってくる。
ユウキは、銅の剣を横に薙ぐ。竜の強固なうろこに覆われ、太さも数倍になっているキメラのしっぽがサクッと簡単に切り落とされる。
「ぐぎゃぁ!!」
痛みを感じないはずのキメラが、悲鳴を上げる。
ユウキは、キメラが一瞬怯んだすきを逃さず、その四肢を切り落とす。
キメラは、背中からドラゴンの羽を生やし、その場から逃げ出そうとする。ドームには、強固な防御壁があるためドームから出ることはできないはずであったが、その防御壁を勢いで突き破って出て行ってしまった。
「やばいぞっ!!あれが街に出れば甚大な被害が・・・。」
副学院長が青ざめている。ユキとフユが、援護しようと両手をキメラに向けていたが、ユウキがそれを制止する。
【ハイ・ウィング】
ユウキは魔法を詠唱する。ユウキの背中から龍の羽が生える。その羽を1・2回、試運転するかのように動かした後、一気に空へ飛びあがり逃げたキメラへ向かって銅の剣を一薙ぎする。
キメラは、胴体を横に切り裂かれ臓腑をまき散らしながら、地面へ墜落し跡形もなく粉砕される。
「ユウキ君。そなたも、文句なしの合格じゃ。しかし、その背中の羽はなんじゃ・・・。そんな魔法見た事ないが・・・。竜族でもあるまいし・・・。」
副学院長は、ユウキの見た事もないような魔法の数々に感心しながらも、編入試験合格通知を3人に渡すのであった。
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