第12話 魔導師 サーヴァント
第12話 魔導師 サーヴァント
「ふああぁぁっ~。」
春のぽかぽか陽気の中、書斎で、魔導書を読んでいると、いつの間にか眠気が襲ってきて大きなあくびが出る。
深緑色のもじゃもじゃの髪の毛を掻きながら、眠気を覚ますために濃い目に入れたコーヒーを口に運ぶ。
「そろそろ新しい魔法を完成させないと、サボっていると言われそうだな。」
ここ2年ほどいろいろなことがありすぎて、全く集中できる日がなかった。
サーヴァントは、宮廷魔導士として魔法騎士団や魔法使い、魔法学校の講師など第一線で活躍する魔導師であった。
魔法を使うものは、魔法使い→魔法士→魔法師→魔導士→魔導師→大魔導師→賢者→大賢者と、その魔法の威力、魔法の性質、世界平和への貢献度など総合的に評価される。
古の時代より、王宮の宝物庫に保管されている最大級の水晶が真ん中に置かれた複雑な線が繋がったものに手を置くと、その者の現在のランクが表示され新しいランクになったときに水晶が輝き、ランクが表示されたプレートが自動的に出てくる仕組みになっている。…仕組みはまだ解明されていない…。
魔導師サーヴァントは、あと一つ魔法を完成させれば大魔導師へ上り詰めることができるところまで来ていた。
魔導士ランクでも各国家に10名いる程度であり、魔導師ランクになると0~1名、大魔導師となると周辺国家合わせても1名程度である。
その上のランクは、10年ほど前に魔王と戦い死亡している。
そのため、早急にも大魔導師以上が必要であり魔王討伐への新たな編成軍を作らないといけないのであったが、サーヴァントが自宅から動けない状態が続いていた。国家存亡の危機の状態で2年もの月日が何もできずに過ぎて行っていた。
ところがついこの前、その杞憂が突然終わりを告げる。
ちょこんと、椅子に座り以前に比べるとびっくりするくらいおとなしくしている息子を眺める。
2歳の誕生日の日から数日間は手を伸ばしたり、空を見つめながら時折ぶつぶつと理解できない言語を話し心配することはあったものの現在は、児童書を見たり読んでほしいと子供らしくせがむことが多くなっている。児童書を読んでいるときは特におとなしい。まるで、言語を必死に覚えようとしているかのようである。まだ2歳になったばかりなのだが…。
「集中ができるようになったのはいいのだが…。」
今まで、毎日のように物が壊れたり、庭の木を折られたり浴槽のお湯を外に全部流したり木刀を振り回し、遊びに来た若い剣士を打ちのめしたりとハチャメチャな息子が突然おとなしく本を読みだしたのである。
「…突然変わりすぎて薄気味が悪いのだが…。」
考えても仕方がなく、しかも王宮からも早く大魔導師になれと書簡が届いたばかりなので、また集中することにする。
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