第3話 ルエルフの村
どれだけの時間、泣きじゃくってしまったのだろう? 急に
「ごメんね……」
何の
「やっと泣き止んだの? ボクちゃん?」
少女はウンザリ声で答えた。
見た感じ自分と同じくらいか、少し下の学年にしか見えない少女の前で、
「ハい……スみまセんでしタぁ」
反論もせずに素直に答えるしか無かった。
「じゃあ、もう一度聞くけど、あなたはどこから来たの?」
「……K市」
「ケーシ? どこの村?」
「村ジゃなくッて市。○県のK市」
「ハァ……何? それ……とにかくこっちを向いて!」
少女は指先を篤樹に向けた。さっき、あのバケモノ……
「大丈夫、『アタクカギジュ』じゃないから、安心して」
アタクカギジュ? なんだそれ?
少女の言葉に 篤樹は
「○ケンケーシねぇ……知らない場所だわ。でも
「嘘は……つかないよ、ヒック!」
あまりにジッと見つめられ、篤樹はなんだか恥ずかしくなり目をそらしてしまった。
「こっちを見て!」
少女は篤樹の顔を挟む両手に力を込めて向き直させ、大きな濃緑の瞳でさらに覗き込んでくる。少女の表情に、突然驚きの色が広がった。
「あっ!……あなた……『この世界』で生まれた生き物と……違う?」
「はい?」
唐突な少女からの問い掛けに、篤樹はキョトンと声を洩らす。
え? どうゆうこと? 「この世界で生まれた生き物」って? いや、俺はこの世界の人間だし。何言ってるんだこの子は……? この子……エルフ? ルエルフ……だっけ? さっきのはトロル? 腐れトロル? ん? 何これ?
「あなたはこの世界で生まれた人間では無いって言ってるの!」
「この世界で生まれた人間じゃ……無い?」
「そうよ!
「瞳の奥の……光の色?」
「ちょっと! 何でも聞き直すのやめてよね! 話が進まないわ!」
「あ、ゴメン……」
「さっきのカギジュ、う……んと、私が指から出した光!」
「ああ、さっきの手品みたいなやつ?」
「テジナ? まあ、とにかくそれであなたが嘘をついてるのか本当のことを言ってるのかが分かるの。んと……テジナ? で」
「ああ、ごめん。だったら手品じゃなくて
「マフー?」
「マ・ホ・ウ。魔法」
「マホウね。あなたたちの世界ではマホウって呼んでるのね。あなたもマホウを使えるの?」
「え? いや……魔法は作り話だから……使える人間なんて誰もいないよ。まあ……魔法みたいな手品はあるけどね」
「何それ? よく分からない! カギジュは訓練した人間なら普通に使えるものよ。マホウとは違うものじゃないの?」
「ごめん、なんか
「ふーん」
少女は立ち上がると
「まあ、とにかく
篤樹も少女につられるように立ち上がった。学生服はもうボロボロで、草や落ち葉や泥にまみれている。「卒業するまで大事に着てよね」という母親の言葉を思い出し、とりあえず急いで葉っぱや
左手の袖をまくると
「
少女が聞いてきた。
「あ、うん……多分、事故の時に。あと、アイツ……腐れトロル? ってのから逃げてる時にも……」
「ま、私たちの村に入るためには『傷の無い体』じゃないとダメだから当然ね。森の決まりのルー……マホウよ」
「へぇ……」
篤樹は、いつの間にか回復した
―――・―――・―――・―――
森の中を歩きながら、篤樹は「エシャー」と名乗るルエルフの少女からいくつかの質問を受けた。
さっきまでの「取り調べ」のような口調ではなく、篤樹の世界でも「はじめまして」の後に
「家族はいるのか? 好きな食べ物は何か? 仕事は何をしているのか?」質問自体は普通だが、食べ物の話だけでも「カレーとは何か? カラアゲとはどんな料理か?」の説明も必要だったし「中学」と言っても、そもそも篤樹自身が日本の学校教育制度についてほとんど何も知らないから説明に困ってしまったが……
10分ほど森の中を歩くと、少しずつ木々の
森の出口は少し
すり鉢状の草原のほぼ中央には直径1キロメートルくらいの
湖を囲むように家々が
卓也のゲームとかだとエルフの村は「大きな木を切り抜いて作った家」が森の中に
「さあ、こっちよ」
ルエルフの少女エシャーは、「すり鉢」の底に在る湖へ続く道をどんどん進んで行く。篤樹は置いていかれないように、エシャーの歩くスピードに合わせ普段より早歩きでついて行った。
道々、エシャーと同じく
「エシャー、そいつが
「おい、エシャー。用の無い人間は村に入れてはならないんだぞ!」
声をかけられる度、篤樹の
「侵入者は腐れトロルだったわ。こいつは
エシャーはすっかり篤樹の保護者気分になっているのか、動揺する篤樹の手を握り、村人たちに笑顔で応じながら歩き続けた。
何だか高木さんみたいだなぁ。高木さん、無事かなぁ……
篤樹は3年2組の
男女の分け
時には頼まれた本人以上に責任感をもってやり
篤樹も香織から何度も助けてもらったことがある。
苦手な
絶対に俺が
事情を知ってるクラスメイトからは「ご
「怖がってちゃ相手の怒りを買うだけだよ。ビクビクしないで、堂々と必要な情報だけ
香織の言葉を思い出す。
怖がってちゃダメかぁ……でも「ルエルフの
そんな篤樹の不安に気付く様子も無く、エシャーはまるで新しく出来た友人を家族に紹介するような、軽やかな足取りで歩き続けて行った。
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