私立ニノキ大学へようこそ

サンクロー

井上 良太 (20) ①

 俺は、高校をなんとか卒業し、家から離れた大学に通うことにした。一人暮らしや試験勉強、なんとなく頑張って、それなりの大学生活を送っている。この春で大学2年になった。授業には慣れたが、朝は相変わらず弱い。


「ピピピ!ピピピィ!」

 スマホのアラームが、起きる時間だと主張してくる。布団から手を出し、ノールックで枕周辺を漁り、少し離れたところにあった眼鏡をつかみ、慣れた手つきでかけた。メガネをかけても寝起きはイマイチ視界が不良だ。


「ああ、今日1限からだったなあ…」眉間にしわを寄せながらスマホの画面を確認した。俺は、気がすすまないが出席点のためには行くしかない、体をのそっと起こす。


「スマホ、財布、イヤホン、あとは…今日はこのファイルと…」少しくたびれたバックの中に、今日いるものを詰める。朝ごはんを食べようかと思ったが、準備が面倒なのでジュースをグビッと飲んで済ませた。髪の毛も前はセットしていたが、いつしかしなくなった、トホホ。ボサッとした頭で靴を履き、玄関に鍵をした。


 大学に着き、教室へ向かった。


「今日はここまで、次回は実習なので、持ち物は…」

 ファァ…、俺は大きく伸びをした。伸びのせいで先生の声はイマイチ聞こえなかったが、まあ誰かに聞けばいい。授業が終わった、背中をボキボキ鳴らす。さぁさぁ片付けて移動しよう、そう思っていると後ろから声をかけられた。


「よっ!井上、2限休講らしいぞ」佐々だ。こいつは朝から元気そうだな。

「自習室いこうぜ、課題進めて早く遊ぶぞ、な」背中をバシッと叩かれた。

「わかった、ちょっとまてよ」カバンにファイルを突っ込んで佐々と自習室へ向かった。


 2人で歩いていると、途中で学科の掲示板に目が止まったので、掲示板の前で足を止めた。掲示板にはA4サイズの掲示物が大量に貼ってある、誰も整理しないから荒れ放題である。

「解剖の再試験、人数多いな、…インターンか、先輩行くんだったかな、これ」

「知らないよ、何先輩?」佐々は俺と違って、交友関係が広い、佐々のラインの友達の数は俺の何倍なんだろう。掲示板を見ながらお互いブツブツ言っている。そこで俺はある文章が目に飛び込んできた。

「被験者、募集。整形疾患なしの男性…身長が170程度で、運動経験のあるもの…」

「ん?なになに」佐々も興味を持ち、読み始めた。

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