第2話

俺は自分の恋心に気づくのに実にご年近くもかかってしまった。

と言うより分からなかったのだ恋というものが。

そいつは小学校で6年ともクラスが同じで運命を感じちまったんだ。

それからだ。

俺がそいつのことが好きで好きでたまらないと思ったのは。

あいつが本が好きだと知ると図書委員に立候補して、一緒に委員をしたりふたりきりの図書室で作業をしたりもした。

彼女は無口で基本的には喋ってくれなかった。

だがいつからだろうか?

心を開いてくれたのか会話をしてくれるようになった。


「私はこの本が好きなの。」


たわいのない話だった。

たが俺はその声の音の一つ一つが柔らかいと感じ、高揚感よりもむしろ落ち着きを与えてくれた。

彼女の名前は一色 茜といった。

才色兼備で、頭もよくピアノも弾けて趣味は言うまでもなく読書だ。

小学生だった俺は付き合うなんて大人のすることだと思っていたし、そんな気はなかった。

彼女と二人きりで、その上滅多に聞くことの出来ない彼女の甘くとろける声を静かな図書室で聞く。

これ以上に、幸せなことはないと確信していた。


「この本はね、1人の不幸な男が復讐をなしていくの」


彼女のハスキーな声の前には復讐という苦しく苦い単語さえ甘くなる。

俺はこの関係が中学も続いて高校で付き合い始めるなんて思い描いていた。

これから起きる事も知らずに







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