第2話
俺は自分の恋心に気づくのに実にご年近くもかかってしまった。
と言うより分からなかったのだ恋というものが。
そいつは小学校で6年ともクラスが同じで運命を感じちまったんだ。
それからだ。
俺がそいつのことが好きで好きでたまらないと思ったのは。
あいつが本が好きだと知ると図書委員に立候補して、一緒に委員をしたりふたりきりの図書室で作業をしたりもした。
彼女は無口で基本的には喋ってくれなかった。
だがいつからだろうか?
心を開いてくれたのか会話をしてくれるようになった。
「私はこの本が好きなの。」
たわいのない話だった。
たが俺はその声の音の一つ一つが柔らかいと感じ、高揚感よりもむしろ落ち着きを与えてくれた。
彼女の名前は一色 茜といった。
才色兼備で、頭もよくピアノも弾けて趣味は言うまでもなく読書だ。
小学生だった俺は付き合うなんて大人のすることだと思っていたし、そんな気はなかった。
彼女と二人きりで、その上滅多に聞くことの出来ない彼女の甘くとろける声を静かな図書室で聞く。
これ以上に、幸せなことはないと確信していた。
「この本はね、1人の不幸な男が復讐をなしていくの」
彼女のハスキーな声の前には復讐という苦しく苦い単語さえ甘くなる。
俺はこの関係が中学も続いて高校で付き合い始めるなんて思い描いていた。
これから起きる事も知らずに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます