九月の出来事 夜の帰り道

「ピーッ」

というホイッスルの音。

 直後に聞こえた子どもたちの話し声に、ドキッとする。それらは近くの小学校から聞こえたのだが、今聞こえるのはおかしい。


 最近は日が沈むのが早いため、空はもう真っ暗になっている。

 職場から自宅に帰るために近所を歩いていたら、起こったのがさっきの出来事だ。鞄から携帯を取り出し時刻を確認すると、19時をいくらか過ぎている。

 そして、第一なによりも、校門から見えるグラウンドには誰一人いない。こんな時間に子どもたちの声が聞こえるなんて。



 聞き間違いかと思い、学校を囲んでいる塀伝いに歩みを進める。

 体育館に近付くと、再び声が聞こえた。体育館に明かりが点いていることも確認できる。

 さらに近付くと、体育館の非常口が開いていた。


 体育館を見てみる。

 すると、女子小学生が集まってバスケをしている姿が見えた。付き添いの保護者らしき大人が座っている姿も。


 さっきのはなんてことはない、ミニバスを習っている子たちの声だったのだ。安心しながらも、自分の臆病さを自覚した。

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