おはなしカレンダー

須戸

七月の出来事 勝手に付くテレビ

 これは、せがわ しゅんくん(六歳・仮名)が体験した出来事です。

 しゅんくんの家は共働きで、両親の帰りが遅くなることがたまにあります。そんな時は近所の友達の家にお邪魔して、お母さんが迎えに来るのを待っていました。友達のお母さんに晩ごはんをごちそうになることもありました。


 しかし、夏休みに入り、友達は家族で旅行に行くことになりました。

 仕方ないので、お母さんかお父さんが帰ってくるまで1人でお留守番です。しゅんくんは初めてのお留守番にドキドキ、そしてちょっとワクワクです。


 昼間は小学校のプールへ遊びに行きました。

 たくさん泳いで疲れたので、家に帰ると玄関の鍵だけ閉めて、すぐに昼寝をしました。


 目が覚めると、時刻は午後の7時前。しゅんくんはリビングの電気を点け、仕事に行く前のお母さんに言われた通りに、玄関の鍵を閉めて確認し、冷蔵庫からお母さんが事前に用意しておいた料理を取りだし、電子レンジで温めました。冷たい麦茶も冷蔵庫から取り出してコップに注ぎました。


 テーブルの上に晩ごはんを置き、食べようと箸を持ったところで「出来事」は起こりました。

 突然、消えていたはずのテレビの電源が入り、画面からアニメが流れ始めたのです。しゅんくんはテレビにもリモコンには触っていません。

 なぜこのようなことが起こったのか、しゅんくんには不思議でたまりません。

 驚いたまま、お母さんが帰ってくるまで画面を見続けていました。




 しゅんくんは知らなかったから驚いたのですが、これは、本当は別に不思議な出来事ではありません。


 最近のテレビには、「視聴予約」という機能があります。テレビの電源が入っているときにリモコンにある「番組表」というボタンを押すと、画面に番組表が表示されます。番組表の中から興味のあるものを選び「決定」ボタンを押すと、「視聴予約」という文字が出ます。そこで再度「決定」ボタンを押すことによって、予約した番組が放送されるときにリモコンを触らなくても見ることができます。


 そして、この「視聴予約」を、しゅんくんのお母さんは利用していました。

 1人だと淋しいかもしれないと思ったしゅんくんのお母さんが、しゅんくんの興味がありそうなアニメを予約しておくことにしたのです。。


 しゅんくんには「視聴予約」の存在を教えていなかったので、結果としては、しゅんくんを驚かせるというものになってしまいましたが。

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