魔女の鍋調合

葵流星

魔女の鍋調合

「ふふっ…よしっ、これはイケる!」


皐月(さつき)レオンは、鍋の中で沸き立つ紫色の物体をの見てそうつぶやいた。

ぐつぐつと、マグマを想像させるようないかにも魔女の鍋みたいな物が出来上がっていた。


「それじゃあ、味見をしてみようっと!」


普通なら嫌がるであろう物だが、レオンはほほえましいくらいに笑顔だった。

さて、そんな彼女は鍋の中の物体にお玉を突っ込みかきまぜた。

いろいろな物を入れたのにも関わらずどんな化学反応が起きたのであろう、物凄く水のように滑らかだった。


ぐるぐるっと、お玉で鍋をかき混ぜ少し小皿に取ってからしばらく冷ます。

レオンが取った液体(?)は、なぜか小皿の上でビー玉のように丸くなりそして、またこの世界に形をとどめられなくなったのかこの液体(?)はまた液体のようになった。その瞬間を見ていたレオンは驚きはしたもののすぐに目を輝かせた。


「!」


「!!(まじかっ!)」


「やりましたよ。やりましたよ、ボク!ああ、なんて素晴らしいできなんでしょう。これこそ、ボクが求めていたものです。」


どこの世界に常温で形状の変化する物体があるのだろうか?

でも、というよりも今の彼女にとってそれはあまり関係のないことだった。

そもそも、なぜ彼女がこんなものを作っているのかというと…。




数時間前


「それでね、レオン。」

「あっ、うん。」


いつものように、猫屋敷 (ねこやしき)華恋(かれん)と帰り道を歩いていたレオン。華恋は、今日ようやく読み終えた本の感想をレオンは聞いていた。

この時、レオンの頭の中にはおやつに何を食べようか考えていて、既にメロンパンに運命(かくてい)していた。


(メロンパン、メロンパン、メロンパン…。)

そう頭の中で反復していたレオンに…。


「こんにちはー!」

「!」


声の主は、そうノエル・ミルフォードだった。

不意をつかれてしまったレオンは、すかさず刀を身構えた。


「あははっ、レオンちゃん。ノエルちゃんだよ。」

「…あぅ。」


ノエルは少し涙目になりつつ、レオンを見ていた。


「ノエルちゃん、今日は何してるの?」

「今日は、買い物をしに行くところなの。」

「一人で行ける。」

「ノエルを子供扱いしないで、一人で買い物だってできるもの。」

「子供なのに?」

「子供言うな!」


間髪入れずにノエルをからかうレオンに華恋は呆れつつノエルに質問した。


「買い物って、言ったけど何をノエルちゃんは買いに行くの?」

「お塩と香辛料、お酢とか、色々買いに行くの♪」

(塩…香辛料…!)


この時、レオンの頭のスイッチが変な方向に入った。

(塩と言えば、霊に対する効果がある。また、盛り塩をして自分の近くを霊が通れなくなる簡易的な結界を形成できる。そして、香辛料。かの大航海時代に重宝され、まじないにも使われる高級品。それを異世界から来たノエルが手に入れるということは大金を手に入れることに等しい。くっ、ボクとしたことがうかつだった。そして、お酢…なんでこんな物を欲しがっ…はっ!お酢は酒税法が適用される。だから、お酒だ!)


「う~ん、何というか庶民的ね。」

「そう、でも大切な物よ。白くてキラキラしてるし、(体にとっても)大事な物だわ。」


(…!)


「ごめん、華恋(かれん)。」

「えっ…ちょっとレオン!」




現在に戻る


「それじゃあ、味見をしてみようかなっと。」

「お邪魔するッス!」


どこから入ってきたのかはわからないがディアナ・ファブニールがやって来た。

本来なら、何かしらのツッコミを入れるのだが…。


「ん?ディアナ、いらっしゃい。」


今の彼女は、そんなことはなかった。


「何を作ってるんすか?」

「ああ、今できたところ飲んでみる?」


はい、どうぞとレオンはコップに汲みディアナに渡した。


「う~ん、なんか玩具(ニンゲン)のエナジードリンクみたいなにおいするんッスけど。」

「まあ、大丈夫だけど。」

「そうッスか?それじゃあ、頂きます。…ん?」


ゴクリっとレオンの作った何かよくわからない液体を飲んだディアナは、ピューッ、バタンと膝から転げ落ちるように倒れた。


「おおっ、これはすごいですよ!ボク!ファブニールさんを倒したこの飲み物のことは、『邪龍の為の八塩折之液体(ファブニール・ドラウン)』とでもしましょう。よしっ、やる気が出てきました待っててください一滴飲めばすぐに良くなる『東方賢者の薬融液(バサナテル・メルト・リキッド)を作りますからね!」


レオンは目をキラキラさせながらそう呟いた。

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魔女の鍋調合 葵流星 @AoiRyusei

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