本庄と酒

 本庄はあまり酒を飲まない。ビールは大嫌いで、日本酒が一番嫌いである(初めて飲んだ獺祭で全然ダメだったので多分日本酒全般ダメ)。カクテルやチューハイが一番好きという、ゆるふわ系女子みたいなことを言っている。


 あと酒そのものがあまり強くない。体調にもよるが、ほろ酔い(3%)一缶で基本的に死ぬ。

 は? ほろ酔いはジュース? 酒だよ。お前ジュース飲んで運転できんのか? お?(すでに酔っているような文面だが、今は素面でこれを書いている)


 だが飲み会は好きだ。勿論、なんか偉い人がわらわらやってくる飲み会は嫌いである。気を遣うからとかではなく、純粋に金をめっちゃとられるからである。なんで一万五千円も払って飲み会して吐かなあかんねん。てめーのスーツに吐いたろかコラァと心の中で思っていたら、偉い人はスーツで来なくなった。さすがは偉い人、そういうところだけは頭の回転が早い。


 同期と後輩を交えた宅飲みが一番好きである。しかもハチャメチャになるような飲み会が実は好きである。


 本庄が入っている部活は体育会系のどブラック部なので、当然飲み会も激しい。合宿終わりは酒を持ち出して暴れるのが鉄則だ(なので近くに客室のない大部屋を割り当てられている。ホテルもうちの大学の特性をわかっているのだ)。


 本庄は後輩に無理やり酒を飲ませるということはないが、後輩が飲みたがれば与える。ワインをジュースで適当に割ったりすることも多いが、酔いが回るとほぼ酒になったりほぼジュースになったりする。バーテンダー(じゃないけど)失格である。


 しかし、ここで一人の後輩にふざけてスミノフ原液(アルコール度数40%)を与えてしまったのがすべての元凶である。誰だよスミノフ用意したの。しかも酔いが回ってくると、自分が今飲んでいる酒の濃度なんか気にならなくなるんですよね。絶対に真似をしないでください。


 そしてその後輩は暴れ出した。普段は無口な後輩なので、まさか暴れるとは思いもせず。いつのまにか寝ていた本庄も起きて彼を止めることになった。

「ほんじょぉさんみたいなぁ~お酒弱い人にぃ~介抱される覚えはぁ~ありませぇ~ん」


 敬語は忘れない割に物理的にボコボコにされたが。

 しかもこの後輩、腹筋がバキバキなので強い。背も高いし。彼はただ暴れているだけだが、止める側からしたらそこだけ台風である。


 その後、彼に大量に酒を与えるのは禁止された。


 翌日、彼は二日酔いでずっとゲロゲロ吐いていたのだが、まあそれは介抱するとして、問題は袋である。袋は各自で用意することになっており、それぞれが普段の生活でレジ袋の一つや二つを鞄に入れておくことになっている。

 だがそれが悪かったのだ。年に一回大暴れするための飲み会に半年前からレジ袋を入れるような几帳面な奴の袋には大抵穴が開いている。結果はお察しのとおりである。汚いのでここには書かない。


 うちの部活には、新品のレジ袋が用意されることになったとだけ言っておく。

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