本庄とマスク

 こないだコロナウイルスやってマスクかよ。調子乗ってんのか?

 大丈夫、本庄もそう思ってる。最近、大学が平和で、愚痴も溜まらないんだよな~(どうせすぐ溜まる)。


 マスク不足に喘いでいる世の中だが、意外と本庄はマスクに困っていない。本庄は花粉症なうえに、乾燥している地域なのでマスクが必要なことが多く、元から買いだめしているからである。

 おまけに、前に買ったのを忘れてもう一つ買ってしまったために、ウイルスが流行る前から、既に100枚以上のマスクが置いてあった。

 下宿生一人の家に、である。


 自分の記憶力が終わっていたおかげで、マスク富豪になれた。怪我の功名である。

 すると実家でマスクが売っていないというので、1箱送った。弟から電話が入った。お、お礼の電話か~と思ったら。


「サイズが合わない」

 そう、本庄が買ったのは子供用マスクだったのである。

 ごめんやん~。


 結局、実家近くの薬局で何とか1箱買うことができたらしい。よかった。


 そして、本庄も残ったマスクを使って元気に大学に通っている。それでも60枚以上あるが。

 これだけ流行ってて、イベントも中止中止の連続なんだから、ここは大学閉じろよ~と思うが、まあうちの大学は台風で避難勧告が出ても大学ある(マジ)ので、コロナ程度じゃピンピンしている。


 大学がピンピンしていたら、教授もピンピンしている。

 うちの大学で一番ヤバい教授、そう、あのクソババアやクソ教授をも上回るとんでもねぇ教授が授業にやってきたのである。普段は下っ端の教員に全部授業やらせてるくせに。


 日が変わっても研究室から帰らせないとか、「◯◯ごときの分際で△△のことばっかり研究しやがって」(※別分野を差別した発言のため伏字)などの暴言を吐きまくる、キレて助教にその場にあった刃物を投げる、とにかくエピソードに事欠かない。


 その教授が授業に来てくださった。前のコマを担当していた先生が「次の教授はやべぇぞ」と警告して教室を出るほどには、戦々恐々としていた(教授の部下と学生が)。


 喋っている内容はかなり偏っていたが、授業自体は平和であった。すべては穏やかにであった。

「何でお前はマスクをしていないんだ?」

 教授がこう言い出すまでは。

「こんなに人が集まる場所でマスクをしないなんて意識が低すぎる」

 アンタの授業が怖くてみんな大学来てるんだよ。じゃあ休講にしてくれよ。


「お前もお前もお前もマスクしてないな? 後ろに行けば行くほどマスク率が下がるじゃないか。授業への意識の低さが現れている」

 普通の人はマスク入手できひんねん。研究室に山ほどあるアンタとは違うのじゃ。


 教授はしばらくネチネチネチネチ学生に絡み、うっすら授業をし(これがまた授業が脱線する割に全く面白くない)、一時間弱ほど過ぎた頃のことである。


「あっつ~」

 教授はそう言ってマスクを脱いだ。

 お前だけはマスクを外すことを許さん。


 なんでこんな奴を教授にし、権力を持たせてしまったのか。◯◯学会長とかいっぱい名乗ってるけど学会の恥だよ。


 テメェは大学来るな。隔離じゃ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る