現代に生きるデュラハンちゃんは他人の死を予言しない

水川青天

1「Encounter」

 デュラハン。


 人間と同じ見た目、更に言うとその中でも美しい出で立ちでありながら、首と身体が離れる姿を持つ騎士として語られる。


 更に言うと、人の死を予言し、執行するという、死神としての顔を持つとも語られる。


 あなたは、そんなデュラハンがもし、現代に生きていたら……そんな世界を見たことがありますか?






 ……今日から始業……か。

 俺は窓際の端の席で、窓の外を眺めながらぼーっとしていた。

 俺には友達がいない。16年ぐらい生きてきたが、友達という友達ができたことはない。ずっとぼっちだ。

 誰もが俺と友達になろうとすることどころか、交流すら避けようとすることも、もう慣れた。

 俺はきっとこのままずっと1人で生き続け、誰にも看取られることなく1人で死んでいくのだろう。

 まあ、それも悪くないな。

 ホームルームの始まりを告げる鐘が鳴る。

 グループで談笑していた人々がそそくさと自分の席へと着席する。

 その後、先生が現れ、開口一番このように告げる。

「このクラスに転校生が来ます、どうぞ」

 転校生、か。

 俺には縁のない話だ。

 女子なら男子がわーきゃーするが、その女子はどうせこの学校の中でイケメンな男子と付き合うんだろうし、男子なら女子がわーきゃーするだけだ。

 どちらにしたって、俺に縁はない話だ。

「……はぁ」

 俺はため息をつく。

 そこに現れたのは。

 男子100人がいたら100人全員振り向くどころか心を射抜かれるような、美少女がそこにはいた。

 顔は金髪碧眼で婉容、細い手足と腰でありながら制服を盛り上げる胸、まるでどこかの創作物から飛び出してきたかのような、美少女。

 当然盛り上がる男子たち。俺は除く。

「セリーナ・ネルソンです。よろしくお願いします」

 男子たちが一斉にセリーナのもとに集まる。

「どこから来たんですか!」

「好きな男性のタイプは!」

「〇〇!」

「△△!」

 最初の2つぐらいしか聞き取れなく、後ろの方は全く何を言っているかわからなかったのでこんな感じの表現になってしまったことを許してほしい。メタ発言じゃないぞ。

 そうしてわーきゃーしているうちに、俺はとんでもない光景を目にすることになる。

「きゃあっ!」

「うわああああああああ!!」

 セリーナと男子たちの悲鳴。

 その悲鳴を合図に男子たちが転校生から離れると、セリーナの首がなくなっており、身体が首の断面辺りを触って自分が首を失ったことを確認していた。

 あれって。

「大切なことを伝え忘れていました……彼女はデュラハンです。席は……」

 男子も女子も、首を失ったセリーナを見て、小刻みに震えているのが見える。

 そりゃそうだ。人ならざる者の隣になるなど、真っ平御免だろう。

 そしてそれにも動じず淡々と話す先生。

 だが、俺は違った。

 俺はセリーナに、何かを感じていた。

 俺は思わず。

「あの! 僕の隣の席!」

 無意識に飛び出した言葉。

 幸い俺の隣の席が空いている。

「そうですね……――さんの隣にどうぞ」

 いつの間にか首が元に戻っていたセリーナが、俺の隣の席にやってきた。

 これが、俺とセリーナの、出会いである。

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