8-2 いつもどおりな土曜の朝食
「ごちそうさまでした」
「お粗末さま」
朝食を終えた俺は、いつものように急いで身支度をはじめたりはしない。
なぜなら、今日は土曜日だからだ(たぶん三度目)。
「悦郎、今日の予定は? 一日家にいるのかい?」
モグモグと朝からチキンを食べているかーちゃんが今日の予定を尋ねてくる。
「えーっと……午後から出かける予定」
「おっ、デートか? 相手は咲ちゃん? それとも麗美? はたまた私の知らない女の子?」
キッチンでプロテインを飲んでいた美沙さんがからかってくる。
「あのねえ……」
割りと日常的なそのからかいに、俺は呆れながら答えた。
「両方です。それから、デートじゃなくて元同級生がライブ見に来てってチケットくれたから、それでみんなで行くんです」
「ふーん」
「っていうか、なんで今日は朝からいるんです? 昨夜泊まっていきましたか」
「いや、それがだな悦郎」
キッチンにいる美沙さんではなく、俺と同じように朝食のテーブルについていたかーちゃんが答えてくれた。
ちなみにそのテーブルには、咲の入れてくれた朝のお茶が並んでいる。
「寮のボイラーが壊れちゃったみたいでな、お湯が出ないんだ」
「そうそう。で、ちょっとシャワーを借りに来たってわけ」
「ああ。朝のトレーニングのあとってことですか」
「そういうこと」
ゴキュゴキュと結構な量のプロテインを飲み干しながら、なぜか美沙さんがサムズアップを決めてくる。
「咲ちゃん、あとで業者さんに連絡しておいてくれる? たぶん咲ちゃんが電話すれば、土日でも来てくれるから」
「ふふっ、わかりました」
「あのなあかーちゃん。咲をそういうのに使うなよ」
「いいじゃないか。どうせ将来は義理の娘になるんだから」
「は?」
一瞬何を言われているのかわからなかったが、要するにそれは咲が俺の嫁さんになるということだと理解し、俺は顔を真赤にしながら抗弁した。
「ば、馬鹿なこと言うなよっ。咲だって困ってるだろ?」
「ん~、別に困ったりはしてないかな」
「ほらー」
「ほらじゃなくて、咲もかーちゃんの冗談に乗るなよ」
「ふふっ。ごめんごめん」
ワチャワチャと騒がしい土曜の朝は、こんな風にして過ぎていった。
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