5-6 いつもどおりにいかなくなるかもしれない放課後
「咲またあしたねー」
「またねー陽ちゃん」
一日の授業が終わり、クラスメイトたちが帰っていく。
俺はまたしてもアイツが来るのではないかと、周囲を警戒していた。
だが……。
「香染さんならたぶん来ないと思うよ」
その心配はないと、咲がリラックスした様子で伝えてくる。
麗美も少し気になっていたのか、その理由を咲に尋ねた。
「どういうことです? 咲さんが何か言ってくださったのですか?」
「ううん。そういうことじゃなくってね」
咲の説明に、俺はどう反応していいのかわからなかった。
「活動内容の……監査、ですか?」
「うん。うちの学校って部活に入るのが強制だっていうのは説明したよね?」
「はい。ですから……というのも変ですが、それで私も悦郎さんたちのオカルト研究会に入らせていただきました」
「ってことはつもり……うちみたいな偽装部活みたいなのの摘発が目的ってことか」
「偽装部活ってまた物騒な言葉思いついたわね。でもまあ……うん。そういうことだと思う」
今日の午前中、咲がみどり先生に呼ばれていたのはそのことだったらしい。
もしかすると、朝の職員室で学年主任とみどり先生が話していたのもそのことだったのかもしれない。
まあ、詳しいことはわからんけれども。
「で、ちゃんと部としての活動をしているかどうかを、生徒会のやつらが調べに来ると」
「そういうこと」
「うーん。一回洋子先輩も交えて話し合ったほうがいいかもな。で、その監査ってのはいつ来るんだ?」
「それは秘密みたい」
「え?」
「教えちゃうとその日だけ活動すればいいことになっちゃうから」
「そうか」
生徒会なんて普段なにやってんのかわかんなかったけれども、意外とちゃんと仕事してるんだな。
「あ、生徒会といえば……」
「ん?」
ふと何かを思い出したかのような表情を浮かべる麗美。
そしてスマホを取り出し、いつ撮ったのか香染たちとのスリーショットを見せてくる。
「香染さんのお友達のこの方、生徒会のお仕事をされてるとか」
「ああ、七瀬さんね。生徒会の仕事っていうか、彼女が生徒会長よ」
「そういえばそんなようなことを砂川も言ってたな」
俺はふと1人足りないことに気づき、咲に聞いてみる。
「ってそういえば、こういうとき一番役に立ちそうな緑青はどこに行ったんだ?」
「ちーちゃんならもう情報収集に行ったよ。なんか、同盟を組むとかなんとか言ってた」
「同盟?」
「なんかよくわからんけど……あいつ楽しそうだな」
「ふふふっ。こういうとき燃えるからね、ちーちゃん」
平穏無事にまったりと過ごせていた俺たちの部活ライフに、突然の台風警報。
まさか今更、ちゃんと活動してる部に入り直すなんてしたくないし、どうにかごまかしてこれからもまったり過ごさせて欲しいものだが……。
「っていうか、それならあの生徒会長自身が所属してるアイドル研究会はどうなんだ?」
「部ね。言い間違えると香染さん飛んでくるよ」
「やべ」
「で、アイドル研究部? 知らないけど、だから新メンバー入れようとしてるんじゃない?」
「あ、なるほど」
もしかするとそれが、香染のあの必死さに繋がってるのかもしれないな。
……いや、それはないか。
あれは天然だ。
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