ほたるの光の下で
岡 新界
プロローグ
6月28日
その日は星空が綺麗な夜だった。
俺は引っ越してばかりの土地を散歩することにした。
外に出ると風が涼しく夏であることを忘れてしまいそうになった。
さすが自然に囲まれた町だ。
しばらく自然を楽しみながら歩いていると綺麗な小川を見つけた。
小川付近は風が特に涼しい。
「田舎もいいもんだな…」
俺はそうポツリと呟く。
俺は再び目の前いっぱいに広がる星空を見上げながらゆっくりと歩いた。
すると視界の隅に土手に座っている女の人を見えた。
その女の人の周りには蛍が飛び回っている。まるで女の人を囲むかのように。
その光景は神秘的で心が浄化されるようだ。
俺はその光景に目を奪われていたが、すぐに歩き出した。
「君、見かけない顔だね」
そう後ろから声をかけられた。
俺が振り返ると同時に女の人の周りを飛んでいた蛍たちが夜空へ飛び立っていった。
「私は光原ホタル、ホタルでいいよ。君は?」
「内木トウマ…」
俺はボソリと答える。
「内木トウマ君…か…」
そうホタルがしみじみと呟いた。
「いい名前だね」
ホタルはにっこりと笑いながら言った。
綺麗な黒髪が月光をぼんやりと反射させ、大人びた笑顔をしているホタルの姿から目が離せなくなった。
「あ!私帰らなくちゃ、またね」
ホタルは手を振り、俺とは反対の方向へ歩いていった。
「これが一目惚れか…」
俺が呟いた独り言は星空と蛍の光の中に消えていった。
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