コスモレンジャー

霜月 風雅

序章 コスモレンジャーの日常

「むわぁ、何これ。スゲーひま。」

歩くだけで床が抜け、動くだけでギシギシと小屋全体がゆれ、雨が降れば砂交じりの雫が落ちてくるような寂びれた小屋の中に場違いな明るい声が響いた。

「つか、掃除とかって・・だって、ここ掃除しても無駄じゃん?クモの巣あんだよ?あ、トオル!それ毒グモじゃん?」

「うぇーー?!うわっ!!」

ガシャン、ドカン。ものすごい悲鳴がした後、大きな音をたてて一瞬、小屋が揺れる。それから、また楽しそうな笑い声が響く。

「わははっ。うそうそ、大丈夫か?徹」

「いたた、もう、アキラ!あぁー・・せっかく片付けたのにぃ」

一体何に使うのか、いつの誰のものなのかと思うような木箱やらに埋もれた小柄な少年は、ほんの少し体を動かすと泣きそうな顔をした。

「あははっ、スゲーぐちゃぐちゃ。あははっ、今、徹ってばすっごい飛んでたぞ。スゲー・・イテ!?」

目の前で紫の髪をほこりまみれにしながら、床を転げまわる誠の頭に大きな拳骨が落ちた。ごちん、とすごい音がした。

「いってー!!何すんだよ、カケル!!いたいじゃんか!」

「遊んでないで真面目にやらんか!!」

「み、ミヤビ!!」「げぇ、ほら、徹がすごい大ジャンプするから、雅に見つかっちゃったじゃんかー」

床を転げまわったため、体中にわたぼこりをつけながら、誠は不満げに唇を尖らせた。徹は、翔の大きな手に支えられ、ようやく木箱の地獄から逃れた。

「お主というやつは、本当に!!これ、誠!!」「うひゃーっ!!」

瞬く間に唇に笑みを乗せて、誠は走り出す。それを追いかける、雅との追いかけっこを見ながら、翔は徹の体を丁寧に払う。そのたびに2人の周りを埃が舞う。

「大丈夫か、徹。どっか怪我とかしなかったか?」

「うん、平気。でも、僕のせいで・・ごめんね。」

あまり広くない部屋の中は、徹の落とした物で足の踏み場を確保しにくい状態になっていしまっていた。

「誤るなって、別に徹のせいじゃないよ。」

「そうじゃ、それもこれもあのバカタレのせいじゃ。」

いつの間にやら、追いかけっこをやめていた雅が、背の高い翔の隣りに並ぶと、まるで大人と子どものように見える。誠を睨もうと、顔が左右に動くたびに雅の頭から伸びる長い髪が尻尾のように揺れる。

「だってさぁ、ひまなんだもーん。ここ、掃除なんてしたって絶対綺麗になんてならないよぉ。つーかさ、クリーニングよりもリフォームが必要じゃんか。」

誠の抗議の言葉に翔も持っていた長い箒に顎を乗せ、同意した。

「あー、それは俺も思ってた。廊下なんて、マリオの気分で歩くよね。いつ穴が増えて難易度が最大になるか、ドキドキだもんな。」

「俺も!俺も!!バキっとか鳴ると心臓止まるもんな。」

「いやいや、止まってたら、今ここにいないだろ。でも、わかる。俺も頭ん中であの音、なるわ。」

「「ちゃらっちゃ、ちゃらららん~♪」」

誠と翔は、声を合わせて楽しそうな効果音を口にした後、顔を見合わせてゲラゲラと笑う。二人に背中を向けてはいるが、雅の唇はわなわなと震えている。徹はそれを素早く察知して慌てて、床の片づけを始めた。そうしてなるべく遠くへ逃げたかった。

「・・いい加減に、せんかーっ!!」

何分もしないうちに、やはり雅の怒りが爆発した。

「リフォームなんぞしたら、わしらの地下基地の存在が、他人にバレてしまうではないか。それに、ここの掃除だって本来ならこんなに時間もかからぬし、汚れてもいないはずだというのに、おぬしらが遊びふざけるから、こうなったのであろうがあぁぁっ!!」

これだけの長文を息継ぎなし。さすがは、リーダーなだけはあり雅の肺活量は超人的だ。年下の女の子に怒られた男2人は、口元にさっきまでの笑顔の跡を残したまま雅に向き直ると、最敬礼で静止した。徹は、手元に気をつけながらそんなやり取りを横目で盗み見ていた。しゃがんだ低い位置からだと雅の長いポニーテールはまるで巨大な角のように見える。

(怒った雅に、角・・似合いすぎる。怖すぎるぅう。)

誠と翔は、きっともうだめだろう。そう思いながら徹は手元の木箱から出たガラクタの中にキラキラと光る何かを見つけた。そっと、他のものを掻き分けて手を伸ばす。

「・・ひつじ、だな。」

「あ、信さん!!これ、なんですかね。」

いつの間にやら、自分の前に現れた大男に徹は笑いかけると、ガラスで作られているのであろう羊の置物を手に乗せる。手のひらに収まってしまうくらいの小ささの割には、細部まで細やかに彫ってあるようだ。

「もらったらどうだ。」

「え。で、でも・・」

こっそりと後ろを見るが、雅たちはまだ、進展はなしだ。

「大丈夫だろう。ここにあるってことは、そんなに重要な物じゃない。」

「そう、ですね。」

思っても、やはり良心が咎めるが、それ以上に欲しい気持ちが心の中を転がり回る。そもそも、これが羊なのがいけないんだ。これが、蛇とか亀とかだったら、

「うわわぁあああっ、みやびぃ、ごめんってば!!」「おい、待て、それわわぁぁぁああっ」

「これで、少しは反省せんか!!」

叫び声を上げる2人の周りを凄まじい勢いで何かが駆け回る。遣い魔を呼び出すなんて雅は本気だ。角の生えた雅はそれこそ鬼のような形相だ。それをとめることは僕にはできない。例え、どんどん部屋の中が凄まじい様子になっていてるとしても、誰よりも掃除を邪魔しているのが、雅だったとしても。

「信さん、止めた方がいいですかね。」

「・・・いや、いいだろう。というか、無理だろう。」

「そうですね。」

落ちていたガラクタも雅たちのほうでなければ、だいぶ片付いた。そんなとき、5人全員のポケットから短い音と共にどこか不思議な声音の音声が聞こえてくる。

『みんな、緊急事態だ。すぐに降りてきてくれ。』

その声を聞いた途端にピタリと雅と翔の動きが止まる。誠だけが相変わらずバタバタと部屋中を笑いながら走り回っている。誠はこういう時の切り替えがいつも遅い。

「ほれ、暇ではなくなったぞ。」

「本当だな!よし、戻るぞ!!」

信と徹も大慌てで雅と翔の後に続く。寺の真ん中に位置する部屋に入ると、翔が畳を強く叩いた。パンと乾いた音がして、翔が叩いた畳が跳ね上がる。その下には扉がある。鉄のような金属で作られた扉はノブもなく引くところもない。ただ、隅に何かの模様が描かれている。雅はそこにポケットから出した印籠のような物をかざす。


「緊急・・どうやったら、そんなに汚れるんだい。そんなに上は汚れていたかな・・。」

仕掛け扉から降りてきた地下にあるコスモルームのサロンに入るとすぐに天井から、顔が3つある像が降りていた。体中に泥や埃をつけた誠たちを見た途端に、驚いたように声を出した。さっき印籠から聞こえてきた声とは違う幼い少年のような大人びた少女のような声だった。

「いや、必ずしもそうじゃなかったんだけど、色々あってね。」「ねぇ、それよりもやっぱりいっそリフォームしようよ!!」「何をいうておる!後で掃除し直しじゃ!してアシュラ、何用じゃ?」

翔と誠は同時に口を開きもごもごと言い訳を言う。しかしすぐに雅は2人の言葉を無視するとアシュラと呼んだ像に話の続きを促した。アシュラも表情を引き締めると顔を回転させ、厳しい表情を浮かべ、緊急事態を告げたときのような低い声を出した。

「うん。杉の木広場にまた妙なのが現れたんだ。」

「妖魔獣って、ことだよな。」「こんの忙しいときにっ」

アシュラのすぐ横の壁が一瞬青く鈍い光を放ち、ぼんやりと外の景色を映し出す。この壁一面のモニターはメインモニターと呼ばれアシュラの意識に応じて様々な映像が映し出される。

「これだよ。」

「あー・・出たね、これ。」

「久しぶりに強烈だ。」

映し出された怪物を見つめ、誠を覗いた4人は言葉を捜すようにしばらく視線をさ迷わせた。体中に様々な物、色を纏った姿は本当に異形でしかなく体の中央にある古びた鳩時計がなぜか可愛い。

「これは、間違いなく・・彼の、だよな。」「じゃろうのう。」

「相変わらず、天魔の作り出す妖魔獣は本当に毎回ステキなセンスしてるよなぁ。俺には理解できないわ。」

しみじみそう言う誠の紫の髪を撫でながら、翔は誠の派手なのか奇抜なのか、わからない服装を見た。

「うん、そうだね。俺にしてみれば、誠のそのファッションセンスも同じくらい理解に苦しむもんな。」

「え、何それ。俺の服のセンス、あいつの同レベ?」

「いや、身内な分、よりタチが悪い。」

「え、ちょっちょい、信までそんな・・」

背の高い2人に挟まれるとやはり誠は小さく見える。それでも、目立つ誠とモニターに映る天魔の妖魔獣を見比べながら雅はため息を吐いた。

「ほれ、ぐずぐずしておる暇はない、行くぞ。」

「おう!!」「ほーいさっ!」

一人だけ返事がのんきなのも、いつものことだ。

 「いいか、ここまで俺たちはいいとこなしだからな。何としてもあのコスモレンジャーを倒すのだぞ。」

体中に人間の顔やその部位だと思われるものがついているような外見をした煩悩魔が妖魔獣のまわりを回りながら呟く。その声はまるで複数の人間の声が混ざり合っているかのようだ。

「そんなこと言われても、俺は天魔様の妖魔だぎゃ。俺が手柄を立てても、煩悩魔様には何の得もないと思うだぎゃ。」

妖魔獣はムチのような手を体ごと左右に振った。長いムチがびゅんびゅんと風を鳴らす。

「おいおい、さてはお前天魔から言われたことを忘れているな。お前はデザインが少し予想と違ったから、いらないって」

「はぁ?」

『あー・・ダメだ。何か違うんだよ。こうじゃないんだなぁ。・・・あ、煩悩魔、この妖魔使わない?僕のイメージと少し違ったから、あんまり使う気しないだ。え、あぁ、能力はね結構自信あるんだよ。名前はタイムラグーンって言うんだ。この子はね、一度倒されてこそなんだ。』

思い出せば、脳内になんとなく蘇る生まれたばかりのあの時の記憶。いくらなんでも産れたてに対して冷たすぎるけれど、それが天魔様ですね。生まれる前から知っていました。と頷いてタイムラグーンは煩悩魔に向き直る。

「今日から、俺は煩悩魔様の魔獣になるだぎゃ。」

「おお!おお!なんとも頼りになる言葉だな。ありがたいぞ、ここのところ調子に乗っている陰魔やコスモレンジャーを窮地に追いやった死魔なんぞに負けてられんからな。」

「はいだぎゃ。さぁ、来い!コスモレンジャー!!」

「おお、では任せたぞ。タイムラグーン。良い報告を期待している。」

「え、」

タイムラグーンが何かを言う暇もなく煩悩魔は騒がしい雑音と共に空気に溶けて消えた。

「い、行っちゃったぎゃ。煩悩魔様は天魔様と違って一緒に戦ってはくださらないみたいだぎゃ。」

一人残され、ほんの少し天魔への未練が芽生えたタイムラグーンが、さてどうしようかとあたりを見回したその時!!

「そこまでだ!!」

「むむ、その声はコスモレンジャー!!」

「逃げ道はどこにもないぞ。」「観念するのだな。」「俺たちが相手だ。」「動くなよ!!」

五色のスーツに身を包んだ五人の戦士が丘の上から、叫んだ。

「現れたな、コスモレンジャー!!このオラ、タイムラグーンがお前たちを成敗してやるだぎゃ。」

コスモレンジャーたちは、腰につけた小型の武器、ジャバライトウを取り出すとそれに一気にに一mほど伸ばした。それは、釈杖にも似ておりこのジャバライトウに自分の術気(エナジー)を込めるとそれぞれの個人武器へと変形するのである。

「ジャバライトウ・・って、あれ・・・」

ブンブンとジャバライトウを振り回し、ブラックはきょろきょろと額に手を当てて見回す。他の四人もつられてタイムラグーンの周りを見た。

「どうしたのだ、ブラック。」「何か、気になるのか?」

ホワイトとレッドの問いかけに、ブラックはまぁ、と気のない返事をしてまじまじとタイムラグーンを高台から見つめる。

「な、なんだぎゃ。」

「確かに見るからに、天魔のだけど・・・ねぇ、君。天魔は?」

ブラックの言葉にレッドはあぁ、と納得したような声を出した。それから、注意深くあたりを見回して、頷いた。

「そういえば、天魔は戦いの前に必ず俺たちに自分の妖魔獣の特徴とかを説明するはずなんだけど・・」

「今日は、いないみたいですね。」

「・・あぁ、変だな。」

イエローとブルーの心ない言葉にタイムラグーンは、心に五百のダメージを受けたが、そんな弱さは表に出さずにけれど心で涙を流しながら、ムチのような手を振り回した。

「うるさいだぎゃー!!」

五色の戦士は素早くその攻撃を避けると、コスモガンを構える。狙いを定めているホワイトとブルーのためにレッドとブラックはジャバライトウを伸ばし、タイムラグーンに向かう。しかし、イエローだけは、一瞬戸惑いを見せ足を止めた。

「あ、バカ、イエロー」「え」

立ち止まったイエローがブルーの狙いを妨げた。その隙をタイムラグーンは見逃さなかった。ムチのような手が、後ろに気を取られたブラックの体を弾き飛ばす。

「うわっ、」「ブラック!!」

全ての秩序がその一瞬で崩れた。レッドだけではタイムラグーンのムチを全て受け止めることは当然不可能だった。それを助けようにも、目の前で立ち止まってしまったイエローが邪魔でコスモガンは打てない。しかし今から動いたとしてもレッドの元へ行く前にムチがレッドの体を捉えているだろう。

「っく、」「レッド!!」

イエローが慌てたようにレッドに駆け寄る。しかし、それよりも先に一瞬だけ早くタイムラグーンのムチがレッドの体を弾いた。そしてそのままイエローへとその長いムチが振り下ろされる。

「あ!?」「イエロー!!」

「落とし穴!!!」

地面から聞こえてきた声と同時に、イエローの足元にすっぽりと穴が開いた。そしてムチと頭の間に数ミリの空間を空けたままイエローはその穴の中に落下した。

「何だぎゃ。」「あれは、」

標的をなくし、地面にだらりと身を投げた手を退け、タイムラグーンは穴を覗き込んだ。その顔を目掛け落ちたはずのイエローが今度は勢い良く飛び出してきた。ゴンッという凄まじい音と共に二人の頭がぶつかった。

「いっ!?」「ぎゃっ!?」

ふらりとそれぞれ後ろに倒れた二人。イエローのすぐ下にある穴から出てきたのは、ブラックだった。倒れているイエローの体を引きづり片手に黒い筆、ブラックの個人武器である黒筆を持ち、ブルーとホワイトの元へ。

「ブラック、大丈夫か?」

「うん、俺はへーきね。問題はこっち。」

「おお、イエロー!しっかりせぇ。」

「う・・うぅ」

「とーるの石頭もこういう時に役立つね。」

ぽんとイエローを離すと、ブラックはホワイトの肩を叩いた。

「おのれぇぇぇ、何するだぎゃ!!」

イエローが体を動かすのと同時に、タイムラグーンが立ち上がった。ムチを振り回し攻撃態勢になる。だが、すぐに伸びてきた何かがその体に巻きついた。

「つかまえたぜっ!!」

「な、なんだぎゃ。体が、」

タイムラグーンの体に巻きついた糸の先には、巨大な剣玉をもったレッドが立っていた。

「そのまま、動くなよっ!!」

「し、しまった。コスモレッドか、」

タイムラグーンの体に巻きついた糸に引っ張られるようにレッドの手から巨大なけん玉が飛んだ。まるで吸い込まれるようにタイムラグーンの体をレッドの個人武器であるビックレッドけん玉が貫いた。

「ぐあぁああーっ」

「ナイステクニック・レッド。」

ぱちぱちと楽しそうに手を叩くブラックの後ろでホワイトとブルーに支えられイエローが起きあがった。

「大丈夫か、イエロー」

「はい、すいません。」

「あ、ヤバイ。」

「何じゃ、」「うわぁぁあっ!!!」

ブラックの焦ったような声に前を向けば目の前に広がる赤と黒。そして三人の体に走る衝撃と少し遅れてくる痛み。何が起こったかは、考えなくてもわかる。

「あー・・ごめん、」「いてて、レッド飛んできたぁ」

「お主ら、油断しすぎじゃ!!」

「大丈夫か、イエロー。」

「は、はい。」

ブルーとホワイト、そしてイエローの体の上に大の字になって倒れているブラックとそこにブラックと顔を合わせるように大の字に載っているレッドだ。ぐちゃぐちゃと文句を言いながら、上から一人づつ退けていく。

「うはは、メットがなかったら、俺さっきレッドとチューすっとこだったー。危なかったわ、流石だわ、コスモスーツ。色んな危険から守ってくれんね。」

「全くだ。ガンダムみたいになったな。」

「いや、ちょっと違ったっしょ。」

「のんきな、ことを言うとる場合か!?」

「え、だってこれは俺のせいじゃないじゃん。むしろ、俺ってばすんげーファインプレーだってでしょ。あんな状況でさ。」

笑っているのだろう、ブラックのメットはカクカクと楽しそうに左右に揺れる。それとは対称的にイエローのメットは俯いたままぴくりともしない。

「イエロー、そう落ち込むひまはなさそうだぞ。」

「ぼやぼやするなぁ、コスモレンジャーめぇぇええ」

「うわわ、あいつまで俺とちゅーする気か!?」

五人に向かい走ってくるタイムラグーンを迎え打とうと五人はそれぞれにジャバライトウを構える。

「すごいな、ブラック。さすがは、魅惑の唇だ。」

「おう、まかせろ!!・・え、いや、何が?」

「集中せぇ、くるぞ!!!」

五人は構えたジャバライトウに各々自分の術気を込めた。術気は操るコスモの戦士によって異なる色と属性をもっており、カオスの中から選び出した自分の能力に応じて武器にすることができるのである。

「コズミック・ウェポン!ビックレッドけんだま。」「コズミック・ウェポン!しらかさ!」「コズミック・ウェポン!くろふで!」「コズミック・ウェポン!きづち!」「bコズミック・ウェポン!―こま!」

レッドの武器はさっきも出していた大きな赤いけんだま、ホワイトはまっしろな和傘、イエローは少し大きめの黄色いハンマーでブルーは手のひらに乗った青いこま。そして、ブラックはさきほどの黒い筆だ。

五人は、召還した個人武器にさらに術気をためタイムラグーンとのタイミングと距離を測る。あと数mまで迫った

「よし、カオスバズーカ!!」

レッドの声に全ての個人武器が、空中で次々に合体し一つの大筒になった。

「邪霊払い、臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前・妖魔、退散!!」

五色の光の玉が、大砲から発射され真っ直ぐにタイムラグーンへと向かいしっかりとその正面を捕らえた。

「ぐぅぅがあああっ!!!」

断末魔の叫びを上げてタイムラグーンの体が爆発した。

「・・ふぅ、祓い、完了・・」

溜め息を吐いたイエローにブラックが、メットをカタカタ揺らして笑う。

「まだだぜ、イエロー」

何かを言いかけたブラックの声と重なるようにどこか頭上から、不気味に声が響く。

「ふふふ、これで勝ったと思うなぎゃ。戦いはここからだぎゃあああ。」

「何!?」

高笑いが聞こえ、頭上にタイムラグーンの体が浮かび上がる。にやり、タイムラグーンが妖しく笑う。何かある。レッドの本能がそう告げた。

「何言ってるんだ、そんな脅しに引っかかるもんか!!」「そうじゃ!!」

そう叫んでイエローとホワイトが勇んでかけて行った。レッドの全身に嫌な予感が走る。

「待て!ホワイト、イエロー!!」

「!?」「!」「いまだ、タイムホール!!」

ぐわりぐにゃり、空が歪む。

「何じゃ!?」「うわぁ!!」

レッドの声に一瞬、止まったホワイトが危険を感じすぐさま退避する。しかし、空に空いた穴に気を取られていたイエローはレッドの静止に反応を遅れ、敵の触手が伸びてきていたのを避けられなかった。

「イエロー!」

「うわぁあああっ」「ふはは、こいつも道連れだぎゃああ。」

ぎゅーびゅーすごい音とともにタイムラグーンとイエローの体が空に空いた穴の中に引き込まれて行く。

「イエロー!!」

「待て、レッド。これ以上近づくと吸い込まれるぞ!!」

「けど、イエローが。」

「レッド!!あれ、見てよ!!」

だんだんとイエローとタイムラグーンの体が穴の中に消えて、見えなくなっていく。

「うあああ、みんなぁああ」

「イエロー!!」

そして、完全に空の歪みに吸い込まれて何も、なくなった。

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