檻の家

みや

序章 逮捕されるという事

第1話 逮捕

 「主文、被告人を、懲役三年の刑に処す。なお未決通算百七十日を右刑に算入する」


 わかってはいたことだったが、やっぱりショックだった。今回二回目の逮捕だったが、前の判決から八年以上たっており、また逮捕されたとはいえ、執行猶予になることも考えられた。

  だがあまり期待を持ちすぎると、「もしも」の時があまりにショックすぎる。そう思って期待せずにいたが、祐介はショックを隠しきれなかった。


 始まりは8ヶ月前。あれは八時頃だったろうか。家で寝ていた俺は、ピンポーン、というチャイムで起こされた。

 玄関を開けるとそこには見知らぬ男たちが数人。


 「熊谷祐介さんですね?ガサ状です。ちょっと家の中調べさせてもらうよ。立ち会ってください」


 そういって次々と刑事たちは中に入っていった。

 祐介の部屋に入っりごそごそと何かを探し始める刑事。一人の男がしゃべり始めた。


 「なんのことだかわかるね?」

 「いや知りません」

  「あ、そう」


そのまま刑事は黙った。

祐介からは油汗がじわじわ流れ始める。

そしてまた別の男が、


 「よしあった」


  と言って、一着のアウターを取り出した。

  これが目当てだったらしい。その後も刑事たちは物色を続け、約三十分したのち、


 「任意だけど、警察に来てもらってもいいかな?」


と言った。

 この【任意】、つまり貴方の意思で来るか来ないか決めても良い、ということなのだが、今回のガサ入れに関わらず、この【任意同行】を拒否った場合、あとで必ず【逮捕状】をとられるので、結局は行かなくてはならない。

 任意同行なんてあってないようなものなのだ。祐介は仕方なく刑事の乗ってきた車に乗せられ、C警察署に連れていかれた。



 警察署の裏口に車は止められ、裏口から所内に入った。廊下は薄暗く、寒い。入り口を入ってすぐ右の階段を登り、目の前のドアから中に入れられる。

  その先には多くの刑事達のデスクがあり、その横を通過していく。

 そして通された部屋はいわゆる【取調室】だ。

 広さは約五畳くらいだろうか。隅に机があり、それを挟むように二脚の椅子。テレビでお馴染みの据え置きのライトはなく、部屋全体は明るい。

 そして祐介はドアから見て机の奥側に座らせられた。


 「ほんとになんのことかわからんか?今のうちやぞ」


刑事が口を開いた。


 「いえ、わかります」


 祐介はじたばたしても無駄だろうと思い、素直に観念した。

 それからは早かった。一通り事件の話をした後、すぐに【引き当て】なるものに連れていかれた。

 【引き当て】とは、当人が犯した事件現場に行き、『ここでやりました』と事件の場所を指差しているところを写真に撮って証拠として残すことである。これは、近くに人がいようがいまいが行われる。見られるととても気まずい。

 写真をとった後、車に乗せられた祐介は隣に乗り込んできた刑事に言われた。


 「午前○時○分、貴方を緊急逮捕します」


 そして祐介の手には【手錠】がかけられた。

 こうして祐介は逮捕されたのだった。

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